1か月後
あの狂言から約1ヶ月が経った。
ダグラスは、もう俺の横にはいない。
恐らく、どこかの鍛冶屋として生きているのではないのだろうか。
俺は、今日も《ターミナル=ファング》片手に迷宮のようになっている守護塔24階をめぐっていた。
何の力なのかは知らないが、《ターミナル=ファング》は一回鞘に戻すと耐久力が回復し続ける。
そのおかげで、常に武器を使い続けることが出来るので、俺としてはとてもうれしい。
また、俺としては滅多に相手の攻撃が当たらないほか、当たってもほとんど削れずに、また片手剣のスキルレベル120/1200で手に入った<オートヒール>がある為すぐに治る。
そんなこんなで、もう集団の攻略組が居ない24階で今日も蜥蜴人間を倒していると、アラームが鳴った。
確か、予定は―――
そう思い、その正体を探ると―――
「ま......マジかよ...!?」
そこには、第Ⅰ層攻略会議が1時間後に行われる、と言う無慈悲な通告だった。
『遅れるなよ、未来の俺ーー。―――まあ、遅れるだろうが』と言う過去の俺の正鵠を射た声に、
「さすが俺、よくわかってるな」と返しつつ、全力で降りていく。
その鬼気迫る様子に―――魔物が寄ってきた。
俺は面倒臭くなって、守護塔を貫いて空中に躍り出る。
死ぬかとも思ったが、突進系B.E.の<スピードラスター>と間合いを詰めて斬り進む<居合・断月>を併用することでダメージを最低限に抑えることに成功し、またその二つのB.E.を利用して何とか時間内に俺は守護塔にほど近い街に到着できたのだった。
程近い街、こと<グランリッヒ>に到着できたのは、B.E.を使えたからだ、桜地 斉太に感謝だと思いつつも、集合場所の軽くへこんだ会議所に集まった約40人を見つけ、その一角に俺は座り込んだ。
「...皆、御足労感謝する。
私はGleaと言う者だ。宜しく頼む。
一名遅れたものがいたようだが―――」
そして、グレアと名乗った鎧を着こんだ青髪の女性は俺を見つめると、微笑んだ。
「―――中々に面白いようだ。
では兄上、続きを頼む...ぞ......」
そう言って倒れるグレア。
だが、地面に着く寸前、横から現れた同じく青髪の男にわき腹を蹴られ、「グッ!?」
と言う声を出しつつ、転がり―――そして、何事もなかったかのように立つと、同じように男の脇腹を殴りつけると、彼の右後ろに立った。
「はあ、この貧血妹の暴力野郎は「兄上も充分に起こす方法が手荒だろう!その―――」...ちょっと黙ってろ。
......俺の名前はGlow、現実でもこの世界でも光り輝くShineでもよかったけど、言葉的には悪いし、何せ、親友のような、恋人のような人にそれとなく聞いたら、「私はやだなあ」と言われたからな。
......よろしく!」
その女子をよこせだの、ブーブーだのとわいわい騒いでいたが、それはこの世界を楽しんでいるからだ。
非常にうれしい。
「―――それで、だ。
早速、聯隊を作るために、8人の大隊を作ってくれないか?
そうすれば、1レイドで済む。頼むぞー」
今回ばかりはブーイングは出ず、寧ろノリでチームを組んでいっているように思えた。
人数を数え、思い出すといたのは39、ふたりが隠れていたとなると、俺と組むのは―――
「...ねえ」
「うおっ!?」
勢いで下に転がっていく俺。それを片手で引き留めるフード姿の少女。
音はほとんどしなかったので気付く者はいなかったが、俺はそこからひょいっと持ち上げられた勢いで高く飛び、真下にはフード女がいて―――右に回避するも、フード女と同じく動いてしまい、彼女にはその後叩かれてしまった。
お前の所為だろ...とも思いつつ、俺は話を聞くことにした。