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Cardinal Online  作者: ia
ちょっとした短編のまとまり
77/105

戻り、訪れる日々

「...嗚呼、戻って来たか」

まるで親父のような言葉だが、思考が似てきてしまっているのなら途轍もなく困ってしまう。


そこに、声がかけられた。

「...お帰り、威亜」

その声は、俺が聞き慣れた声。


―――髙橋 由紀の、その声だった。



―――



「へへへ...。

ボクもね、もっと威亜と一緒にいたいからさ。

だから...ボクを棄てないでよ?」

由紀の中での俺の評価が分からなくなり、少しだけそんな明るい由紀を憎んでしまったのは、別の話にはしない。



―――



「...おお、戻ったか。

どうだったか、私の仮の姿は」

その後ろに、いつものその声が―――俺の声にも段々聞き間違っていきそうな、その声が俺の耳に届いた。


だが、俺は疑問を覚えてしまう。

なんだか、今まで聞いてきた声とは思えないのだ。


と、そんな俺の思いを見透かしてか目の前の親父は言う。

「...嗚呼、もしかすると君は気付いてしまったか?

まあ仕方あるまい、私の実肉体は死したのだから」

「...は!?」

全く見透かしていない答えだったが、その答えは俺を驚愕させ、由紀に抓られる事になるぐらいには五月蠅い絶叫だった。



―――



「...そんなに驚くことがあるか?

まあ、私の肉体が死してからあの世界に行ったからな、多少違和感はあるかもしれないが、その点はどうにもならないものであるから勘弁してほしい」


...その答えに、俺はある望みを持ってしまう。

「...じゃあ、死んだ奴も復活させられるのか?」

その俺の思いに、目の前の男―――肉体的には正しく言えば親父ではないのだから、便宜上これからは斉太と呼ぼう―――はいつもの不敵な笑みで答える。


「ああ。ただし、記憶と精神が元のものであるのなら、な」



―――



「...君は、彼女に課せられたことすらも破るのか?」

その答えに、俺は苦笑で返す。


実際、俺はそうしようか、と思ってその言葉を言ったわけだが、思い返してみればそのような事アイツが望むはずがない。

そう思って、自分で納得しようかとしていた手前、斉太は呟いた。


「(...やはり、威亜も私と同じ考えに至ってしまうのだな...。)」

「ん?なんか言ったか?」

「いや、ただの独り言だ。気にしないでくれ給え」


こうなると、それに対する答えは期待できない。

コイツとの関係(体感40年)の長さから、もうそれは理解していた。


...だが、コイツの事だ、きっと死ぬ前に何かしらの方法でその精神を模写コピーしているのだろう。

そう思うと、俺の胸の底の方のわだかまりは解けた。



―――



だ、が―――。

俺には、新たな課題があった。


それは―――。


「...ねえ、威亜?」

「...今は何もしないぞ」

「ええ―――」

―――そう、由紀の考えが分かってしまうのだ。


長く暮らしているとその思考が分かるようになるとは言うが、確かにそうなのかもしれない。

実際、この様に分かっているのだし。



―――



「...さあて、この『作戦』ももう間もなく最終段階に入るな。

...木口君すらも私の作戦に食い込まれてしまったからな、もう戻ることはできないが...まあ、最初の作戦時点でもう戻れないところまで来ているのだからなあ...。」


その言葉の裏に自虐的な響きを込め、彼は嗤った。

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