藍理栖ノ物語 or 鈴とその周り
特別ver.に投稿した分の、最後のストーリアです。
「...さて、行きますかー。
っと、これでおっけ?」
「Ariseさん、そろそろ出てくださーい!」
「あ、ハーイ、今行きまーす!」
弓がダグラスに鈴の事を聞いていたころ―――藍理栖はステージ裏の楽屋にいた。
これが、俺達には隠されていた事なのだが―――それを知るのは、義母さんだけだった。
―――
2037年、12月21日、つまり俺の13歳の誕生日の日、藍理栖はオーディションを受けていた。
まあ、今彼女が楽屋にいる様に、その時していたのは歌手デビューのための最終審査だったのだが。
小さいころから歌が好きだった藍理栖が嘗て夢として語った、歌手。
それがかなうかもしれないと思い、彼女はここにいた。
―――結果は言わずもがな、合格。
藍理栖はそれに喜び、アルバムを発売し―――そして、1年10ヶ月に及ぶ、長い長い休暇期間を経て再び舞い戻った。
そして、彼女は今その地に立っていた。
沢山の敗者の上に―――。
―――
「ありがとうございました!」
「いえいえ、こちらこそ。
...《Wedge》初の、新しいものを作る為に必要な事でしたのでね」
そして、初老のその老人は新たな代表者を藍理栖に見せる。
そこにいたのは―――。
―――
「...あ―――、むしゃくしゃする―――!」
「大丈夫?お姉ちゃん、なんだかおかしいけど」
「大丈夫も何も、何も考えつかないんだよ―!何とかして―――、柚依―――!」
「ええ...。」
「...妹に引かれるって、とっても悲しいね」
―――その後、藍理栖は氷桜家に立ち寄る者ならば誰でも知っている藍理栖の趣味、恋愛漫画を描いていた。
因みに、たまにそれをTwwittireに投稿することによって自分のモチベを上げているが、逆に下がるときもある。
だが、今日はそのモチベーションが上がり切っていなかった。
それもこれも、全ては彼女が見た人物の所為だったが。
―――
「...弓、なんかない?」
「いやあ、なんかない?って聞かれても...。
...あ、そうだ!小説を書いてみたら?」
「小...説...?」
次に藍理栖は、現在絶賛記憶復旧中の弓に何かを聞くことにした。
まあ、何も説明の無い状態で何か、と言われても分かる物ではないが、弓は昔から藍理栖の描く漫画を見ていただけあって、その傾向はよ――く知っていた。
だが、行き詰っている以上別の物を折衷案として出すことを思いついた弓は、小説を書くことを進めた。
...今の俺のように。
「えー、でも...。」
「ごちゃごちゃ言わないで!やってみれば案外楽しいかもよ?」
なおも不満を言う藍理栖に対し、弓は俺も見た事の無いようなゴリ押しで藍理栖を誘う。
...結局、漫画と小説の内容がリンクし、常にその漫画―――名を『恋と漫画と小説と。』と言う―――に関わらない日はなくなっていたが、そこに追加で彼女が体感しているある『世界』の事を思うと、溜息を吐きたくなる、というのが彼女の思いだったが。
―――
『...じゃあ、あなたも?』
「ええ、まあ...。
...とりあえず、テーマソングも作っていただきましたが...。」
『そっか...。
まあ、良いんじゃない?取り敢えず藍理栖ちゃんが頑張ってくれたんならさ。
...それに、し・て・も?』
「そ、そう言った目で見てくれるな。
私だってこうなるとは思っていなかったのだ」
『へえ、でもその割にはのほほんとクローンを、それも弓に押し付けていたみたいだけど?』
「ぐっ...!?
鈴君、何故それを!?」
『えへへ、なんで、でしょう...かあ?』
そこに、また鈴はいた。
常にそこには鈴と佑子さんがいて、たまに斉太がくるが、今回はそれに加えてある少女が加わっていた。
その少女によって齎されたものもあったが...そのことを、斉太は知らない。




