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Cardinal Online  作者: ia
日常編
72/105

消え逝く者 or 舞い戻りしもの

短めであり、重めです。

...本来の歴史に戻ったとも取れますが。

「いやあ、寒いね、威亜」

「俺はお前のせいで暑苦しいけどな」

「そんな!?...まあ、いいけどさ」


11月23日。

久しぶりに寒くなったこの時期に、鈴と俺は外に出かけていた。

俺はこれを見越して厚着をしていたが、鈴は...今までと変わらないものを着ていたため、とても寒そうだった。


そのせいで鈴は俺に引っ付いてるわけだが...。



―――



「威亜、大丈夫?」

「何がだ?」

「いや、なんだか疲れてるように見えたからさ」

「気のせいだろ」


その会話が、しばらく続いた。

そんな会話をしながら交差点を渡る。


それが命取りになる事とは知らなかった。

何処からか車の音が聞こえ、俺達の身体を跳ね飛ばしたらしい。


らしいというのは、俺が聞いたことではなく後で氷華 斉太に教えてもらったことだからだ。

だが、確実にそれで知っていることがある。


...鈴は、その時に命を落とした、という事実が俺の頭にこびりついた。



―――



「...大丈夫か、威亜」

「......」

「...ヴァルに言われて、異世界に行けるようにした。

時間経過は極限に小さい。君をそこで治療することにする。それに、あの少女の命の代わりを...。」

「...やめろ」


薄い静寂の張った昏い場所にて、俺はいた。

全身打撲、擦過傷、肋骨骨折などの肉体的負傷に加えて俺には心の傷がついた。


...いつか、優に警告された気がする。

だが、その記憶は最も上に存在する鈴の言葉に消された。


『私の事は、思い出さないで。

きっと、そうしたら幸せになれるから。だから...。』


『決して、私の事を忘れないでいて』



―――



「...異世界にはいく。

ヴァルに、『心を壊した皇帝が戻る』と伝えてくれ」


それきり、俺の言葉は途切れる。


このまま俺も鈴に触れたくて、消えていくぬくもりを逃がしたくなくて。

その残ったぬくもりが自分の物と気づいて、それでも生き続けた。


その想いを後に味遭わせんとした俺は、きっとこの時に一度死んだのだろう。

そして、新たな俺が俺の中に生まれた。


いや、正しく言えば俺の中にいた俺―――異世界というものの記憶を取り戻した俺が出てきた。

だからと言って、藍理栖―――アリスにこのことを言う気はないし、俺の心はまだ鈴を愛していたから。



―――鈴《ベル=べリオ》も、そしてその妹の弓《イア=ヴァルカリア》も俺達と同じ様に異世界と俺達が呼んでいる世界が出身(イアだけはもともと旧現実から異世界に迷い込んで、更にこの現実に来ていた)だということに気付いてしまって、俺は気付かれないように泣いた。

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