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Cardinal Online  作者: ia
Gun Rebellion編
61/105

移動式トーチカ運転手兼重機関銃使いのダグラス

「オラオラア、道を開けろお!」

重機関銃ヘビィマシンガンの音と共にやってきたのはダグラスだ。


見た目は現実と全く変わらず、移動式の要塞(見た目に寄らずとても早く移動する。慣れていないと鳴り物酔いは確定)に乗りつつも重機関銃を撃っている姿はまさに狂戦士、と言ったところだ。


「弓、今日はお前が定期検査あるだろ?戻るぞ」


勿論のことながら弓は反対したが、最終的に鈴に促されるような形で鈴共々ログアウトした。



―――



「悪いな、旦那。

俺がアイツらの実質的な親だから、こうやって面倒を見なきゃなんねえんだ」

最近苦労が絶えないのか、若干元気のないその声に、俺は憤りを感じた。


「...なんでアイツらの親が…」

「もうアイツらの親はいない。全部、飛行機ハイジャックの所為だ。

...アイツらを責めないでやってくれ。あいつらも悪気があってああなったわけじゃねえんだ」


その言葉を残し、ダグラスもまた帰っていく。

恐らくは、精神崩壊状態にある現実の弓の経過観察を行うのだろう、と思えたのだが。


...こちらのような活発な動きを現実世界でも見せて欲しいものだが。



―――



「...似ている」

「何がだ?」


優が、弓が帰った後に発した言葉に俺は問う。


すると優は苦笑し、すぐに真顔になった。

この様な顔を見た事の無かった俺は、彼女に見せられた右手の醜い跡に、何かを感じた。

なんだ、と言えるようなものではないが、何故か知っているような感じがする。


「...あの子たちも大変なんだなあって思っただけ。

あ、これはただのやけどの跡よ」


多少苦しくも聞こえる優の言葉だが、今はそのくらいがちょうどいい。


...いや、よくないのかもしれないが。



―――



「......馬鹿な私」

優はログアウト後、自らを責めていた。


理由は一つだった。

自らが持っていた秘密を共有しようとしてしまったことだった。



...彼女は、小さな(と言っても、あまり小さくはなかったが)頃に母親を亡くしている。


その当時、彼女たちは幸せであり、氷華 斉太も今のような状態ではなく、普通の父親だった。

母親・佑子も健在であり、優は―――氷華一家は、幸せを満喫していた。


そんな夏の或る日、3人は別荘のような場所に身を置いていた。

東北にある盆地で、夏は暑く冬は寒いが、そんな不便なところと―――夏の夜に見ることのできる蛍の光、色鮮やかな光華を散らせる花火が好きだった。


ちょうど盆だったこともあり、母の方の家の墓参りに行って、帰り、息をついていた時だった。

突然、扉が割られ、そこからクマが入ってきた。


たまにクマが近くで見られることはあったのだが、まだ夏だ。

その為、彼女等はそれに対応できず―――。



その事によって、優は右腕の甲に傷を残し、彼女の母・佑子は命を落とし―――そして、父・斉太はそれから約半年、心を閉ざし続けた。



そんな或る日、久しぶりに彼は口を開いた。

『実は、私たちには息子がいた。ある家に預けたまま、君も知らずのうちに成長している』と。


優と斉太はそれからというもの変わった。

斉太は人が変わったように皮肉を言うようになり、優はそれに反発するかのように少しひねくれ、塩対応になった。



...そんなことなど、いま優といる者達は知らない。

恐らく、由紀でさえも。


そう思うたびに、彼女は心の奥底で感じていた。

近くに、自らを良く知る、いや知ってくれるものがいると。

彼女の少しだけおかしくなった心は、柚依に身を置いた。


そして、彼女は見つけてしまった。

自らのを―――。


だが、そのことを彼女自身は―――そして、当人ですらも気づいていない。

全ては、夏に始まった氷華一家に降りかかった災厄から―――そう、全ては一頭の熊から始まっていた。

そのクマが、狂龍に近しいものだったとは、この時は氷華 斉太と―――その当人である、グレンしか知らなかった。

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