由紀 or 姉狂いの妹
「ん―――!...可愛いなあ、イア君」
「ちょ、やめ...」
「ん―――!」
「...諦めなさい、イア。由紀がそうなった以上、今のあなたに逆らえないわ。がっちりホールドされてるならなおさらね」
俺は由紀、と優が語った少女にがっちりホールドされた。
そして、彼女のされるがまま―――いろいろなことをされていた。
くすぐったいやら恥ずかしいやらで、俺の顔は真っ赤になっていた。
遠くでは少しヤバい光を目に宿した弓と、それと仲良く話す―――と言うよりかは、そのヤバい光に気付かないまま話し続けている鈴、そしてそのヤバい光に気付いたために俺に話しかけようとするも、由紀と言う少女に威嚇され近寄れないダグラスがいた。
―――
「は、はな...せ!」
「わあ!?...せっかくかわいいお友達が出来たと思ったのに。私ショック」
「...!......(なんでこうもズルいんだ、こういうやつは)」
「知らないわ。由紀に聞いたら?多分また捕まえられるけど」
何とか由紀の腕を振り払うも、一人称を変えて俺に語る由紀。
それがなんだか寂しそう―――と言うより、悲しそうに言った。
その感情をダダ洩れにした言葉に、俺はついベルの昔のころを思い出した。
そして、俺はそんな感情の発露が苦手だ。
その為、どもったのだが―――それを優に聞かれたらしく、返されてしまう。
だが、それは俺にしか聞こえない様な小声だったため、優の優しさを垣間見れた。
―――
「...姉さん、僕どうしちゃったんだろう」
「?どうしたの、弓」
「なんだか...姉さんだけが欲しいよ」
「...?大丈夫?」
「わかんないよ。でも、姉さんが居ればなんだっていい。姉さんがいてくれるなら…。」
その頃、鈴は弓の語りだした内容に違和感を覚えていた。
ついさっきまで弓はこのような状態ではなかったのに、なぜこうなった?
その想いが鈴の中にあった。
弓は、元々姉である鈴が大好きだった。
だが、そこにイアが入ったことにより、彼女の心にあった鈴への好意は無くなったと思っていた。
しかし、イアはこの世界でほかの少女と共にいることがあり、そのことによって弓の心に(姉さんと一緒に居てもいいのではないか?甘えてもいいのではないか?―――僕だけの姉さんだ)と思い始め、今このようになっているのだが、この段階では弓の心が狂いかけていることに俺も鈴も気づいていなかった。
それどころか、鈴はそんな狂いかけの弓に、更にその狂気を加速させるような行動をとっていた。
弓はそんな鈴の行動を自分の都合のいいように―――つまり、自分の所に来てくれると思い、狂喜した。
そんな弓の心の脆さに気付けていたのは、彼女たちをよく見てきたダグラスだけだった。




