疾風の凶行
「ハア...。最近のプレイヤーなど、こんなものか。
...銃と言う凶器の代名詞を以て自らを強者だと誤認してしまった愚かな者たちが私のGM権限には勝てないと言う事なのだな。
それにしても、これだけの者が落ちるとは...。
これだけ愚かなる者がいるのであれば、威亜が広げたこの連綿と紡がれる世界も少しづつ焼き落されていくのか...。」
その男は、やはり俺達がよく知っている男。
氷華 斉太。
俺にどこまでも影響を及ぼしてきている男。
その影響の許がこの世界には存在しない者なのだが、そんなこと俺が知る由はない。
...少なくとも、今は。
―――
「相変わらずね…。
でも、くそなところもそっくり」
優はある場所で毒づいていた。
もう狙撃体制に戻っており、俺の場所すら把握されていたのだが、そのようなことは俺には気付かない―――いや、気付けなかった。
―――
俺はステータス画面にもう一つだけメニューがあるのを発見した。
《特殊能力使用》。
...馬鹿馬鹿しい。
俺にそんなものあれば、もうすべてのプレイヤーを消滅している。
そう思い、閉じかけたのだが―――。
―――
「...《使用可能:全アビリティ》?」
―――俺は、その画面に使用可能を示す緑色の文字列が埋め尽くしているのを視認してしまった。
・虚軍
Doomsday Knightsの時に使用した奴。
範囲約50Ⅿを消滅させるらしい。
・思念波
謎の能力。恐らく、見、聞き、よく知った奴(氷華 斉太や鈴、弓など)に音声、映像版のフレンドメッセージを飛ばせるという事なのだろう。対象選択可能。
・龍神化
恐らく大滝にいた仮称:バハムートと戦った時に入手した物。
虚龍神?とやらになれるらしい。
虚軍も自由に使えるそうだが...。
この三つだ。
一つ目と三つめは正直使いにくそうだが、二つ目は簡単だ。
そう思い、試しに使用可能プレイヤーを見てみた。
そこには、優、弓、鈴、そして恐らく氷華 斉太を表す名前があった。
そのため、一番最後の名前―――《Gale Blow》に話しかけることにした。
―――
「...なんだ?」
彼は謎の音に耳を傾けることにした。
どうやら、この音の原因はメニューウィンドウにあるらしい。
彼がそう判断して開くと、そこには彼が最も友としてふさわしく思い、敵として好く恐れ、そして―――その少女にも見える少年が気付かぬ事実を知りながら好ましく思っている者が映っているのだった。
―――
「通じたか?」
『なんだ、イア君。この世界では現実世界にも勝る少女のような顔つきではないか。
―――いや、実際優に会って少女と勘違いされたのではないかな?』
「お前優と一緒に居ないんじゃねえのか?」
『いないが、そのくらい知っているのさ。
―――この私がそのような事を知らないとでも?』
「いや、やっぱりあんたの事が多少怖えよ」
『そう言ってくれるな、イア』
「いや、そういわせてもらうぞ、氷華 斉太」
なんで俺の今の顔でこう分かるのかは分からないのだが、通信用ウィンドウ越しに見えるこの男―――氷華 斉太はこのような男だった。
どんな世界でも変わらないんだな、と苦笑しつつ俺は言う。
「あんた、何してんだよ?」
と、そんな単純な一言を。
―――
「何をしているか?簡単だ。この世界で銃と言う物を以て自らは強いのだとありもしない強さで自らの虚勢を張る者たちをあの時のように退場してもらったのだよ。文字通りに、な」
『何てことしてんだよ、アンタは...。』
言葉からも少女としか形容できないその顔からも読み取れる苦笑の感情。
その下には、言葉通りの意味と(そんな奴らの芽を潰すのか、アンタは)と言う感情があった。
そんな心など、彼には読み取る気も従う気もなかった。
“そんな奴ら”を助長させるくらいならば、寧ろ潰してしまおう、と言うのが氷華 斉太の考えなのだから。
...その点、威亜は違うと言えるだろう。
彼は、そんな目を構成させて成長させようとするのだから。
―――
「まあ、あんときは物理的にその目を潰してたからな。あんときよりはまし...」
『いや、このハード機械、スノウ・クラッシャーとやらではあの頃のように物理的退場をさせるほどの出力を出すにはそれこそ仲介機が必要になる。
―――例えば、拡張現実を可能とし、其の世界の痛みが実際の痛みに比例するようなものが作られなければ、な』
コイツの行いに感心していたのは間違いだった。
相変わらず、コイツはくそだ。
だが―――変わっていないところに心が和む。なぜか?―――こいつが俺に似ているからだろうか。
―――
「―――じゃあ、通信を切る。後ろから優に撃たれるなよ」
『ありそうなことを言ってくれるな、私にとって油断などない。あったとしても最後の段階で斬りつけられるほどさ』
「怖え」
『優はそのような感じだよ。君も、撃たれぬようにな。そうそう、家は壊されず、ダグラス・ホークと言う名の者が買い取る。どうせ君の友なのだろう?その者に行ってはどうだ」
「!?」
少しづつ声が聞こえやすくなったと思えば、奴は俺の真後ろに立っていた。
「そんなに驚く事は無いだろう。私に特殊能力―――GM権限が残っていても不思議では有るまい?」
俺は、コイツを多少怖いと思ってしまった。




