本葬―――優編 or 本戦其の一
短めです。
俺が身を伏せていたころ。
優はすでに、あるビルの上にいた。
―――
「はあ...。あんなに背中丸出しだったらすぐにやられるでしょうに。
...でも、案外何とかなりそうなのがアイツなのよね」
優は彼の背中をスコープ越しに見て思う。
見た目は少女(と言っても、身長は高めだが)で、髪を切られて闘鬼のようになった時もあるし、髪が戻ったと知るや喜びを見せていたのも可愛らしいところだ。
だが―――彼は男なのだ。
それが、たとえどのように見えたとしても。
その時、優は気付いていなかった。
近くによる気配に―――。
気が付いた時には、その男が侵入してきたところだった。
「覚悟、狙撃手!」
「私は大体剣士だけどね」
そういい、優はハンドガンと片手剣を以てして戦う。
その様は、イアが見ていれば「嘘だろ、お前」と言って驚くぐらいの物だった。
―――
「逃げたか。...逃げても無駄だと言うのに」
その言葉が彼の父親、氷華 斉太に似てきていることを彼女は知らない。
「見つけた。敵前逃亡は処刑、私の方針に狂い無し!と」
そういいながら、彼女は先程襲い掛かってきた男―――ゼロを撃ち抜く。
《レベルが361に上がりました》と言う控えめな音も彼女の中では集中を途切れさせるものでしかない。
そして、彼女はこの段階で一人のプレイヤーを倒したことによってしばらくは自分の許にプレイヤーが来ないと踏んだ。
そのために、彼女はステータスを見たのだが―――。
「...なにこれ」
そこに広がっていたのは、プレイヤー13名が急に〔Gale Blowの攻撃により死亡〕となったプレイヤーウィンドウだった。
―――
「...まさか、アイツじゃないだろうなあ...。」
俺もその画面を見ていた。
先程のように草むらに各連がらみたその者には、突然その状態が映し出されたのだ。
俺には、その男がアイツだ、とは思いたくなかったが、そうだろうとも思ってしまった。
その確信が正しかったことに、今は屈辱を感じたい。




