イヴェンシアと言う男
「【な...んだと......!?
くそ、昔の俺め!なんで記憶消したんだよこの野郎!】」
一人でそう悔しがる灰人間。
おれは、本当にこいつの事が分からなくなっていた。
―――
「...で、あんた誰だよ」
そういうと、その男の発狂は止まり、咳ばらいをすると、話をし始めた。
―――
【ああ...。じゃあ話始めるか。
俺はイヴェンシアと言ってな。
どこぞのお姫サマのせいで皇帝にはなるし、俺が勉強するところを守ろうとしたら世界中の中心になったりしたんだよ。
それでな、世界を切り離して俺もその世界にひとりづつ作って、こっちの俺は老いないから旧王都になったヴァルカニアでのんびり過ごしてたんだよ。
そしたら、隕石が落ちてな。
結界で直撃は無かったが、その風圧で街が消滅して。
その瞬間に、俺は何故か何もないところに飛ばされて、気付いたらその隕石に似た亀野郎がいて、殺したんだが、その後に女が出てきたな。
...優って言うのか、ソイツは。
まあ、どうでもいい。俺は此処でのんびりと過ごすだけだ。序に対艦レベルの狙撃銃も手に入ったしな】
―――
「......で?俺のだからさっき落ちたのよこせよ」
「【勿論だ。だが、全く持って強欲だな】」
「お前に言われるまでもねえよ」
「【ふっ、そうだな】」
何故か、自分のようなものと話している感覚に囚われた。
実際そうなのかもしれないが、この男は俺とは少なくとも違う。
だが、柚を知っているということは、少なくともこいつは日本人だ。
...所謂、転生をしたのだろうか?
そのような小説のジャンルがあるのは知っているが、実際にそれがあるとは思っていなかった。
―――
「【お望みのものだ。...何故か二個あるが、両方やるよ】」
「ああ、有り難う」
「【さっき言っていたスナイパーライフルの同型と、剣?なんだこれは】」
そう言って手渡してきたものは、三つあった。
「おい、一個多いが」
そういうと、彼は恐ろしい事を言った。
「【そりゃそうだろ、此処で死んでいた奴のハンドガンだからな】」
―――
その銃は、原型がある。
鈴には銃の知識がなく、架空の物の方が多いのだが、これは元がしっかりある、実弾/エネルギー弾変換可能の銃となっている。
グレアルド VG-47。
魔術使用不可となった一時期において使われた、ヴァルカリア工廠で作られた、聖暦5747年正式採用されたハンドガンだ。
星暦とかいう異世界の世界戦の銃がもとであり、現実世界で言えば旧ソ連のトカレフがモデルになっている。
現実世界のような実弾は7.62×25㎜トカレフ弾、異世界のエネルギー弾は8.4mm×24mmグレアルド弾を使用している。
トカレフ弾は購入できるのだが、グレアルド弾は《エネルギー弾―8.4×24mmカートリッジ》と入力して買う必要がある。
グレアルド弾は音声ショッピングな為、いくらでも弾は打てるのだが、トカレフ弾は弾を入れる必要がある。
そのため、恐らくエネルギー弾の使用が多くなるだろう。
―――
「【さてと、俺はしばらくここにいるが、次お前らが案山子に乗り込むときは俺も行くからな、覚悟しろ】」
「おい、何勝手なことを」
「【じゃあな】」
「おい!?」
そう言って、武器を置いたままイヴェンシアと名乗った男は消えた。
...全くもって困った奴だ。
 




