優と柚依の入学式 or 錆び付いた銃口
最初は3人称です。
「...云々云々」
「...眠い」
4月13日、今日はⅩ市にある、ある高校の入学式だった。
彼女からすれば、それは退屈以外に表す言葉がない。
しいて言えば、どのような人が同級生になるのか、それは私の妨げにならないだろうか。
そのようなことを考えていた。
「やっほー、優!また同じになったね!」
「...なんでここに...。」
「うーん、近いから?」
「私と同じなんだね」
「まあ、私は色々とあるしね。
最近はアロウス君が来ないからそれの代わりも務めなきゃならないし」
「そう。私も最近困ったことあるんだよね」
柚依は彼女がどのようなことを言うのか測りかねていた。
なぜなら、柚依には彼女のバックにある環境など知らず、少し冷たい彼女の姿しか知らなかったからだ。
だから、彼女の言う意味が呑み込めなかった。
「...くそ父さんのせいで私の家が無くなっちゃって」
「......言っている意味が分からないんだけど」
それもそのはず、彼女の父親は柚依にとってはまだあの曰く付きの世界に囚われている者であり、そんな人が彼女の家をなくすはずがないと思っていた。
「実はね…。」
―――
「はあ...。」
「どうしたんだ?」
俺は、何故優が溜息を付いているのか分からなかった。
それもそうだろう、今の所斉太が出てきたという話は聞かないし、特に溜息を付く理由などないように思えたから。
だが、結局アイツの所為だった。
「ちょっと、家が無くなりそうで...。」
―――
「......それで、どっかに住み込むことになると」
「まあ、ね」
家が建て壊される。
どれだけ酷い事をするのだろう。
...そういえば、アイツは一応大量に人を殺していた。
今更、酷い酷くないがあるわけないのか。
「...一応、俺達の家に来ないか?」
そういうと、苦笑したようだった。
「柚依にも同じこと言われた。同じところで過ごすとそうなるのかもね」
何故か少し引っかかった。
同じところで、とはなんだ。
俺が別の家から来たみたいに聞こえる。
―――それが本当だと知るのは、物語が綴り終えられるその目の前だったが。
―――
「...なんだよ、これ」
「地下ダンジョン。ここだと大体大丈夫だから。ほかの人なんて多分いないし。
あ、しいて言えば男みたいな女の人くらい...。」
「ああ...。」
その男みたいな女に心当たりがある。
と言うか、すごく身近にいるし、何ならソイツの姉と伯父も知っているのだが...。
「あれ、vさん。それに、そちらの方は...?」
「ああ、イアって名前の人。こんなんだけど、男よ」
「...まさか......団長?」
目線が冷たい。
その視線―――もっと言えば、疑いの目線は俺に耐えられるものではなく、思わず目をそらしてしまう。
「...なにも見なかったことにします。
では、また会いましょう」
アイツが去って、俺は溜息を付く。
下手に誤魔化そうとすればその後が悲惨だ。
「...あの人の事、何か知ってるの?」
そう聞かれるのも仕方ないだろうが、俺はやはり、俺が知りすぎ、逆に知られ過ぎた奴だったことにも溜息を付いていた。
何故なら―――
「ああ、元仲間だ」
そう、今まで俺がいた世界にどちらとも現れた、佐々木 弓―――鈴の妹だから。
―――
彼は、砂塵の中笑っていた。
彼の周りには、敵プレイヤーが落としたミニガンやアサルトライフルが点在していた。
だが、彼はそれをある人に渡していた。
「ありがとう、おじさん。
これで優の懐があったまるよ」
「そうか。
...この世界は、現金化可能なのだったな」
「まあ、クレジットマネー経由だけどね」
その人とは、スノウアレイ―――優、こと<〔V〕>の収入源のようなものだった。
二人はこの世界でクレジット回収を行い、この世界の中で回線代を払っている。
一定以上の金額を稼ぐことのできるプレイヤー(月額2980¥=2980000クレジット/一人)のため、出費はほとんどない。
それどころか、お小遣い程度だが金すら手に入っている。
だが、そのクレジット入手の大本は、この男―――<Prominence>だった。
―――彼女は知らない。
この男は、優の今の状況を作った元凶だと言うことを。
そして、この男の正体を優が知っていることも。
優がこの男をプレイヤーもろとも忌み嫌っていることを。
「まあ、いいではないか。
...確か、家が無くなりそうなのだったか」
男がそういうと、スノウアレイと書かれた少女は頷く。
「うん。優のお父さんがうっちゃったみたいで」
彼は心の中で笑った。
「きっと大丈夫だろう。優と言う少女が頼りにしたものの中には、その家をも回収してくれる者がいるさ」
(きっと、ダグラス・ホーク・アルドと言う名を持つ、私の計画に巻き込まれた愚かな大人がな)
そんな心で嘲笑している男の様子など気付かず、スノウアレイは消える。
そして、砂漠にはまた自虐気味に笑う男しか残らなかった―――。




