鈴とのひと時
「威亜、どう?」
「うーん、少しシステムがきつい気がするが...ま、前よりはましだな」
「やった!じゃあ、弓に改善項目在り、と」
「おい、何言ってんだ」
今日、俺は鈴の作ったシステムで俺が作った定型システムを利用できるか、それが快適か、を確認していた。
前回のシステムではログインしようとするだけでシステムが破綻しかけ、急いでログインを強制遮断する事態に陥った。
それだけに、今回の進歩はすごいものだった。
...この定型システムを快適に動かすレベルが《Doomsday Knights》のシステム(Desiny Planでは多少きつい)なのだから、鈴達がどれだけ頑張ったのかは図り得ない。
だが、今言ったことは何だ?弓に、改善項目在り?その言葉じゃあ、ほかの人のシステムもあるようではないか。
その予想を裏切らないのが鈴だ。
「じゃ、次に私の作ったシステムを宜しく!」
―――
「...まともなのはお前のと弓のだけだったな」
「まあ、仕方ないかな。私たちはちょっと裏技を使ってて...。」
「おい、裏技ってなんだよ」
「い、いやあ、じゃあね。...って、なんでフード掴むの、痛い痛い!?」
「すまん、つい癖で」
「すまん、じゃないよ!全く...。」
俺は怒られていた。
流石にフードを引っ張るのはやりすぎだと思ったが、やはりそうだった。
「...で?裏技ってなんだよ」
話の流れを変えるためにそういうと、鈴はガクッとした。
「...聞きたい?」
「聞きたくなかったらこんなこと言わねえよ」
そんなに言いたくない事なのだろうか?それだったら失敗だが。
「...まあ、ちょっとあのシステムを拝借して、それを私たちなりに改良したんだけど...。」
俺は絶句した。
Destiny Planを利用したことは、なんとなく理解していた。
だが、その能力を氷華 斉太が数年かけてDoomsday Knightsのレベルまで上げたのを、コイツは2か月で、弓はそれよりは多少悪いが、そこまですぐに作れるのは、コイツらは天才なのではないのだろうか。
「まあ、私のはもう利益出てるけどね。伯父さんに金払うのも馬鹿臭いけど、ま、機械系の敵だって出せるし銃メインの世界ってのもいいよね」
「おい、銃メインって......あれか?」
「あれって?私が作ったのはGun Rebellionって名前だけど...。」
「お前かよ」「はーい、私が作りました―!」
どうやら、俺は自分の恋人が秘密裏に行っていることも分からないらしい。
まあ、俺も一つだけ隠していることがあるが...。
「威亜、何か隠してない?」
「...!?」
なんでわかるんだよ!と言う言葉は心に仕舞い、俺は嘘を吐くことにした。
「...いや、何も隠したりはしてないぞ」
「嘘だね」
「いや、ほんとだよ」
「ふーん、じゃあいいや。まあ、隠されてるってなんか悲しいけど」
やはり、鈴は少しズルい。
そんな事を言われたら、俺が拒否できるわけない。
「...仕方ないな。俺の隠してる事なんて一つしかねえぞ?」
「何?最近、首を隠すようになったけど」
「...さすがは鈴。俺の秘密に程近いところまで気づいてるじゃないか」
そこで、俺は首元に着けていたある物を外す。
それは、小さなブローチだった。
その中に、鈴との思い出を移しているが、重要なのはそれが俺のイメージにどれだけの影響を与えていたかだ。
「...で?なんか文句あんのかよ」
「え!?なに、その声...。」
「俺に言われてもどうしようもねえよ。龍にやられたんだから」
鈴が驚いたのも訳ない。
それほどに、俺の声音は高くなっていたから。
「...なるほどね。つまり、意図してないと」
「最初にそう言っただろ、俺にはどうしようもない」
「...なんだか、威亜が子供に見える」
「俺がお前の子供な訳無いだろ。だったらお前は俺の妹だ」
「卑怯な!まあ、それでもいいけどさ...。」
「そもそも俺はお前の子じゃないからな」
最近、俺達の関係は少しあの世界にいた時と外れ、親友以上の何か、になっているような気がする。
何故だろうか。