切り開かれた大滝
「でけえ...。」
俺は、大滝のふもとにいた。
池溜まりのようになった周りを見ると、常に下に流れて行っているように見える。
そして、その滝は―――何故か、岩の柱にとぐろを巻いている蛇のように見えた。
ふもとまで寄ると、なぜかその滝から慌ただしくモンスターが逃げるようにしていた。
そして、岩の柱からとぐろの部分が外れていった。
岩の柱は一部が崩れたものの、緑の光と共に治っているように見えた。
《我を目覚めさせし者よ、我に何の用だ?》
すると、その声と共に上の蛇が見えた。
その蛇が俺に向かっていつでも手を振り下ろせるように構えているのを見ると、どうやらすぐに俺を殺すことが出来ると踏んでいるらしい。
だが、俺はこんな奴に用はない。
だから、俺は交渉が出来るか試してみた。
「俺はそこの柱にいる氷華 斉太と言う男と話がしたい。
だから、そこをどいてくれないか?」
すると、蛇は突然笑い出した。
戸惑っていると、
《そうか、主が語っていた“可能性を秘めし転生者”とは貴様の事か。
その通りであれば、別世界の我の友、グレン=ヴァルカリアの名のもとに貴様に試練を課そう!
貴様が我の知る者であれば、我は屈服するであろうが...。
まあ、我は気にせぬ!さあ、貴様の武を我に見せてみよ!》
その声と共に、その蛇は龍へと―――かつて、どこかで見たような見た目の、黒龍へとなった。
コイツはもともとバハムートと呼ばれるようなやつなのだろうと思うと、なぜかしっくり来た。
「サア、我ト闘オウデハナイカ!貴様ガ我ガ友ト同ジ者デアレバ、我ハ貴様ニスグ斃サレルダロウガ、貴様ハ温ク安全ナ世界ニ浸リスギタ!我ガ直々ニ鍛エ直シテヤロウ!黒龍王ヴェフロール、イザ参ル!」
その声と共に、黒龍―――ヴェフロールと名乗ったその龍は、高速戦闘を開始する。
どこにそんな能力があったのか、人型に変形し、浅黒い肉体と何処からか出てきた刀を持ち、俺を翻弄しようとする。
だが、途中から慣れてしまい、少しづつ俺のペースに呑み込んでいく。
少しヴェフロールが可哀想に見えてきた頃、ヴェフロールは突然その動きを停止した。
「ハア...。結局、貴様ハ肉体ト記憶ガ無クナッテモ精神力ハ変ワラナイノダナ。貴様ハドコマデ行ッテモ力ヲモッテイル。我、不本意ダガコノ世界に我ヲ呼ビ出シタ主、グレンノ友氷華 斉太とノ邂逅ヲ許可スル。クレグレモ我を忘レルナヨ!」
そういうと、龍に戻った途端謎の門を―――禍々しい装飾をした門を呼び出すと、そこに入っていく。
そこには、ただ一人、ポツンと残された俺のみがいた。
―――そして、滝が切り開かれ、その上に浮遊石が残った事は、俺にとってどうでもいい事だった。




