<Alows>
そんな雑談はさておき、俺達は風氏族領に向かう。
時折横を飛竜や飛龍の群れが飛び、戦闘になることもあるが、俺がいつの間にか入手していた双剣のスキルポイントとなってもらった。
そして、約3時間。俺の双剣のスキルレベルがMAXまで溜まった頃、俺達は風氏族領に入っていた。
殆どワイバーンが出現しなくなったのは、今、統一...妖精帝?を決める選挙を行っているかららしい。
それでも多少出る奴らのおかげで、俺は双剣のスキルレベルが最大まで上がった。
―――
「お帰り、兄上、ユイ。
...久しぶりだな、イア」
こう、俺達に挨拶をしてきたのは言うまでもなくグレアだ。
あのころと比べると多少明るくなったように見えた。
生き生きとしているのはいいことだ。
「久しぶりだな、グレア。前より明るくなったみたいだが、なにかあったか?」
そういうと、グレアは何かを探すようにした。
その目には生気がないように見え、俺は軽くグレアが分からなくなった。
「グレア、アロウスはあと5分は戻らないぞ」
そのグロウの言葉で肩を落とすと、ユイに抱きつき、突然甘えだした。
グレアに何があったのか。そう思っていた時、グロウが説明してくれた。
「悪いな、グレアは...。ちょっと、近くに頼れる奴がいないとおかしくなってしまうようになったんだよ。あそこから戻ってきたときにそうなっちまってな、俺も困ってるんだよ。
ま、アロウスかユイが居ればそっちに甘えるから良いんだが...。切れると、ぼやーんとするようになってなあ...。」
困ったように言うグロウ。
現実世界だとどうなるのかは分からないが、少なくともこちらにいた方がいいのだろう。
そう思ってしまうほどに、先程の状態は意外なものだった。
―――
そして、それから約15分後。
懐かしい光―――転移してきたことを表す、新緑のエフェクトが俺の真横に現れた。
「戻りましたよ、グレア...団長!?なぜここに...。
...ああ、グロウが呼び出したのか。お久しぶりです、団長」
その見た目に、俺は頭に?を飛ばした。
俺より少し低めの身長に、緑の髪を腰当たりまで伸ばした少女がそこにいた。
こんな奴いたか?と思う間もなく―――
「...ああ。こっちの世界の見た目って、あそことは違ってランダムなんですよね。
そのせいで、女型アバターの見た目で、現実と全く違う見た目になってしまって。
その点、団長やグロウ、グレアは何でそのままなんですか!僕だって姉さんが寝込んでいる中で頑張ってスノウ・クラッシャー買ったのに!姉さんだってあれから戻ってこないし!僕はどうすればいいんですか!」
その声を聴いて、ソイツが誰かをすぐに理解した。
或る時に、俺が鉄楼団をある者に渡したことがあった。
その者の名は、<Vitel>。俺が心を奪われた、ベルと言う名の少女の、妹だ。
だが、ずっと知っていたとはいえ、この様な一面を見るのは初めてだった。
コイツのどこに、そんな感情が存在したのだろう?
だが、それよりも重要なことがあった。
「...ベルが寝込んでるってどういうことだ?」
そういうと、ヴァイテル―――いや、アロウスは真顔に戻って言い始めた。
「そうなんですよ!姉さん、なんでか戻ってこなくて。
それで、お医者さんに聞いたら、『彼女はまだ君がいた世界に取り残されている。
どうにかして、戻ってくるようにしなければならない』って。
多分、この世界の大滝にいるあの人を倒せばわかると思うんですが...。」
...また、あのおっさんが悪いらしい。
アイツの事だから、何かしら俺の事を調べて俺の所にくるものだと思っていたのに、何も反応がない。
それがおかしいと思ったのだが、やはり戻っていないらしい。
「...分かった。俺も何とかするよ」
「ありがとうございます!終わったら、皆でクリアの打ち上げしましょうね!」
そう言って、俺はそこから離れると、西に行って大滝に向かうのだった。




