グロウとユイ
妖精族領に入った時、軽く着地をしようとした。
そして、軽く吐いてしまった。
満腹感のある状態での飛行はやめよう。それが、俺の教訓となった。
※前回の最後の“※”と同じ内容
―――
「...久しぶりだな、グロウ。
で、その横の女は...。」
そういうと、グロウの横にいた女は怒り出した。
「酷くない!?妹にそんなこと言うようなお兄ちゃんだった!?」
「柚!?」
こうなることを見越していたかのように溜息を付くグロウ。
彼の耳は、以前と違いとがっていた。
「ハア...。やっぱりこうなるんだよな。
ユイと俺は昔からの付き合いなんだよ。
分かったか、シスコンのイア」
「不名誉な異名をつけるな、妹奪い」
全く持って酷い言いようだ。
...ん?柚と、前からの...付き合い?
「前からの付き合いってどういうことだ?」
それにグロウは答えようとしたものの、柚は止めた。
その顔が、多少赤くなっているのは、多少恥ずかしいのだろう。
その反応で、俺は或る日の話を思い出していた。
俺と藍理栖がDoomsday Knightsに巻き込まれることが決定した時の会話。
そこで、柚は好きな人がいる、と言う反応をしていた。
...まさかコイツ...。
「...もしかして、だが。
柚といつから知り合っていた?」
そういうと、グロウは次こそ柚に止められずに言った。
「幼稚園のころからだ。
あの時は、柚も俺に好き勝手してたなあ...。」
「ちょっと、グロウ!?」
...どうやら、小さなころかららしい。
もしかすると、こんなに仲がいいのも、もしかすれば柚が好意を抱いているのも、幼いころからの付き合いのおかげなのだろうか。
俺には似ていないそんなところを見せている柚とグロウ。
そういえば、と思い聞いてみる。
「グロウ、そういえばグレアはどうしてるんだ?お前がひとりにするとも思えないが...。」
そういうと、グロウは忘れていたというように頭を振ると、続ける。
「すっかり忘れていた。
俺が来たのは、それもあるんだった。グレアはアロウスと一緒に、風氏族領の領主館にいるんだけどな、アロウスと共謀してお前を連れてこい、さもなければ俺を追い出させるって言うんだよ。信じられるか?」
軽くしょげたようなグロウ。
グレアと友達が出来た、と言うのはいいが、聞き捨てならないものがある。
「アロウスって誰だ?」
「...そういえば言ってなかったな。
ま、あってみればいいんじゃないか?」
答えになっていないものの、答えになっていないと言えばとぼけるだろう。
多少グロウも変わったんだなあ、と思っていると、突然柚がこんなことを言い出した。
「そういえばさ、私の友達にあの世界にお父さんが連れてかれた、って言う人がいるんだけど」
「なんていう名前の子だ?」
「氷華 優...だったかな?」
「氷華!?」
突然のその言葉に、柚は驚いたようだった。
「ど、どうしたの?私、なんか悪いこと言っちゃった?」
そういう柚。驚かせてしまい、気を悪くさせてしまったようだ。
「いや、そういうわけじゃないんだ。ただ、俺の中ではその名を持っている奴にいい思い出が無くて...。」
そういうと、柚は軽く納得したような表情をした。
「ああ、なるほどね。優ちゃんのお父さんがあそこに行ってたって言うし、そのお父さんだったのかもね」
「あんな奴に子供が居たら、最悪だよ...」
あんな性格の悪いのが親だったら、どんな子になってしまう事か。
その子が実は意外なところにいるとは気づかず、俺は軽く狼狽えるのだった。
 




