終わりのない地獄+昏い場所にて
「おはよう、アリス。
今日も運動しろよ?」
「五月蠅い、シスコン」
いつもと変わらない会話...とはいかないが、そこまで悪いような空気ではない。...あくまでも、思っていたよりは。
桜地 斉太と言う名の狂った天才によって創られたDoomsday Knightsと言う名の地獄。
そこには、死した者の怒りと悲しみ、恨みに憎しみと言った負の感情に、逆に死の恐怖によって縮小された感情は友情や恋心、それに愛情となってあの世界のごく一部で満ちていた。
俺のあの世界で起こった事と言えば、碌なことなどない。
しいて言えば、俺達があの世界をすぐにクリアできたことだ。
...ベル。
今、あの世界でそう名乗った少女は、どこにいるのだろう。
「お兄ちゃんもお姉ちゃんも変わったなー。もしかして、何とかナイツって奴のせい?そうしたら、私も少しづつ変わっちゃうのかもな。怖いけど...私は、あの世界が大好きだから!」
私ー--氷桜 柚依は、今日もまた新型のスノウクラッシャー、<スノウ・ガーディアン>を装着していた。
今日も、大滝に上る為に一致団結するために必要な妖精族統一帝を決める戦いに奮戦することになる。
お姉ちゃんもお兄ちゃんもあの世界で変わったみたいだけど、そんな二人でも私は大好きだ。
いつかーーー三人で、あの大滝に登ってみたい。
...こんな夢を思えるのも、きっと二人は仮装世界の空を見てくれるからー--と信じているから。
私は、今日も大滝に潜る。胸に、ほんの少しだけの期待を持ちながら。
お兄ちゃんの凄さを数日後に知ることになるなんて、私は知らなかった。
―――
「...私の技術の模倣品の世界か。私が中央に向かおうではないか...。」
彼は笑みを浮かべた。自らに恐怖の王とならせる、新たな世界があると。
そして、その世界は、自らが作り出したあの世界の模倣品だという。
彼は悦んだ。自らが示した可能性が順調に育まれていると。
「君はどう出る?Ia君。君は、私を知らない。だが、私は君をずっと昔から知っていた。
氷桜と言う家に渡した子なのだから...。」
彼は、考えた。世界を変える<システム>が必要だと。
彼は思った。それを氷桜 威亜...自らがよく知る少年に渡そうと。
そしてその少年はー--自らの妹が義妹だということを知らず、何年間もあの世界で心に刻まれた恋心に悩み続ける、何処までも愚直に進もうとしない、悲しみを嫌った少年は、あるバーに向かっていた。