イアの想い
「......帰るか」
「...ズルいよね、イア」
これ以上、この空気に居たら俺はおかしくなってしまうだろう。
こうして、鉄楼団主催、クリスマスパーティは終焉を迎えた。
まあ、俺の戦いはまだまだ続くのだが...。
「...忘れてた。返すものがある」
「返すもの?」
ようやく平常運転モードに戻ったベルに、俺は進化したあれを渡した。
「わあ...!」
「よかった。クリスマス・プレゼントのようなものだ。これからはパートナーとして頼むぞ」
「勿論ッ!ありがとっ、イア!愛してる!」
「...そうか」
俺は嬉しかった。
俺が用意したものに、これだけ喜んでくれるとは思っていなかったのである。
俺が用意した物とは、ベルが遺した...と思っていた片手剣、《ウィンド=エタニティ》の進化系である《エターナル=ゲイル》だ。
作ってくれたのは、《ターミナル=ファング》を今使っている《ターミナル=バルク》を作成してくれた男、ダグラスだ。
左側の柄は無く、その分右側の柄は盛り上がっている。
鞘は疾風の名の通りに風の形を模した紋様を添え、先端には赤い宝石が光っている。
「えへへ、私ね、こんないいもの貰ったの初めて!イア、私ね、ちょっとしたい事が…。」
何だろう。ベルの言うことだ、何か悪いことに違いない。
「...イア。
ずっと一緒に居たいなあ」
「当たり前だろ、お前が俺の監視をし続ける限り、俺とお前は同じところにいるぞ」
そういうと、ベルは軽く泣いていた。
「べ、ベル!?なんで泣いてるんだ!?」
おろおろする俺。それが余程おかしかったのか、笑うベル。
そのことで、俺はベルがよく分からなくなった。
「ふふ、いいよ。イアが鈍感なのは今に始まった事じゃないし」
「鈍感とは何だ、鈍感とは」
「否定はできないんじゃない?「うぐ」ほらね。でもさ、私...」
「いつか、イアを私の事しか考えられなくしてやるんだからね」
「...!」
ベルの突然の言葉に、俺は何も言えなくなる。
ベルは、今まで以上に輝いて見えた。
「...馬鹿なことを言うな。今はお前に答えを言う事は無い」
「フフフ、今は、ね。言質とったからね。そうだなあ、ⅠⅭ層がクリアできたら教えてもらうからね」
今すぐにでもその答えを言いたい、と言う気持ちを呑み込んで俺が苦し紛れに言った言葉のおかげで、俺はさらに自分の首を絞めることとなった。
だが、まあ。
後回しでも悪くはないだろう。
ベルと共にいられるのならば、俺はきっと何でもできるのだろう。