クリスマスの出来事
「ううう...。寒いねえ、イア」
「当たり前だろ、ベル。
...寒いようならこっち来るか?」
「いいの?じゃあ、お言葉に甘えて...。」
「...おい、抱き締めるな、痛い痛いイダダダダダ!?」
「えへへ~」「えへへじゃないッ!」
12月24日。
俺達は、ⅬⅡ層に来ていた。
今日、此処ではヴァイテル主催で〔休戦日〕とされ、七面鳥などのクリスマスパーティに相応しいパーティになっていた。
その資金は殆どが鉄楼団から―――具体的に言えば、俺が全体の6割を負担していた。
その資金源は今までのモンスタードロップだ。
が、レアドロップなどいくらでもある。
...なお、一番高く売れたのは第Ⅲ層で手に入れたボスドロップ品、《煌々たる櫓》で、15Ⅿケイだった。
「...では、これより名誉司会、イア様にお話を伺いたく存じます。
イア様、御登壇お願いします」
何!?と思う間もなく、Blowー∀が謎の言葉を唱えた。と同時に、俺はマイク席にいた。
「...ああ、そうか。
くそ。
...ああ、失礼した。これより、クリスマスパーティだ!俺の懐が痛くなったが、その分楽しんでくれ!」
そういうと、皆は笑いながら次の言葉を待った。
「...ありがとうございます。では、これより食事の時間です。
皆さまは、ご自由にお食事をお楽しみくださいませ」
それが開始の合図となった。
誰よりも早く、俺はグラタンに手を出そうとし―――そして、俺よりも早くベルが七面鳥を貪っているのを見てしまった。
そこからの事は、午後8時まで記憶にない。
―――
「ふい―――...。
おなかいっぱいだねえ...。」
「ああ、そうだな」
「なんでイアがケロッとしてるのか不思議だけどね」
「いや、お前は俺よりも喰ってたのになんでケロッとしてるんだよ」
閉幕間近。
俺達のほかには、後片付けの保守的鉄楼団メンバーぐらいしか残っていなかった。
「じゃあ、私は帰るね。あ、ベル...」
そういうと、ベルに耳打ちする。
ベルは顔を赤くしていた。
可愛い。
「じゃあねー」
そうして、会場には片付けも終わり、俺とベルのみが残った。
ベルは何もしゃべらず、俺は何を切り出そうか悩んだ。
そして、午後9時を知らせる鐘が鳴ったとき、俺はあれを思い出していた。
「ベル」
「な、何!?」
突然慌てだすベル。
本当に「可愛いな」と思った。
「か、可愛いなんて...。嬉しいなあ」
どうやら口に出てしまっていたらしい。
過去の俺よ、何故そんな事を口走ったのだ。
そういったとしても、(知らねえよ!)と言う答えしか返ってこないだろう。




