心境の変化
「ぎゅーってして!」
「ああ、良いぞ」
「えー、...良いの!?」
「良いって言ってるだろ?ほら、来いよ」
おれは、多少ベルに対しての心が軟化していると感じた。
ずっと一緒に居るからだろうか、コイツがなんだか好きになってきていた。
仲間、ではなくなっている気がする。
俺の中ではこいつは...なんなのだろう。
よく分からない。
「...そうか。ベル副団長って、お前の事が好きなんじゃないのか?」
「......はあ?」
「心が分かってないですね!そんなに言ってくれてるのに分からないなんて、もしかして鈍感ですか?」
「ベルにもそう言われたよ」
俺は、1か月前から始まったこの生活の事を二人に語っていた。
だが、両方ともベルが俺に恋心?を持っている者だと思っているようだ。
「...じゃあ、俺が直接聞いてみる。そうすれば、俺がどう思われてるなんてすぐに分かるだろ?」
そういうと、また二人は溜息を付いた。
「そんなんデリカシーって言うのが足りねえんじゃないのか?」
「さすが、師匠は難しい言葉も知ってますね!」
「まあ、実質嫁の受け売りだがな」
「仮想のか?」
「ちげえよ!」
「とりあえずその話は置いといて、俺の来た理由は分かるよな?」
そういうと、二人の顔は真剣なものになった。
「「勿論、了解している」」
何故かグテルまで声が固くなっていることを見ると、しっかりと教え込まれているらしい。
そんなダグラスはと言うと...。
「...それをプレゼントとして渡すんだろ?」
と、半ばあっていない、だが外れすぎてもいない事を言った。
「...まあ、当たらずとも遠からず、だな。
クリスマス、近いだろ?」
「まあな。...それに合わせる様にしてるのか?」
「勿論だ」
記念日感覚は無くなりつつあるが、ハロウィーンの時のインパクトのおかげで、俺の中の記念日感覚は完璧に治った。
まあ、あんなショック療法はいらなかったが...。
「...じゃあ、当日に取りに来いよな、旦那!」
「いつか、私も前線に連れてくれるんですよね!」
「ああ。任せておけ」
どちらの言葉にもこたえられる言葉を選び言うと、俺は立ち去る。
雪が降るこの地に、俺は凍えながら川すらも凍ってしまった我が家に帰るのだった。
―――
「イアっ‼
今日は寒いねえ、何する?」
「勿論レベル上げだ」
「えー、詰まんないのー」
「つまらない、じゃない。
俺達はあくまでもまだ『鉄楼団』にいんだぞ。
新任された団長も厳しいからな、やらねえと苦言を呈されるぞ」
「...ヴァイテル君かー。流石に厳しいからなあ。
ま、私もあっちに妹を残してるからさ、ちょっと怖いかな」
「そうか...。お前も俺と同じなんだな」
「そうみたいだね」
寒くても元気なベルは、相変わらず俺の支えになっている。
少なくとも、俺は前よりもコイツに頼っている所がある。
喪った場合、俺の悲しみは前回の日ではないだろう。
そんな状況だからこそ、俺はなくさないために、こうやってレベリングをする、と言うのもあった。
「...すいません、ベルさん?」
「何、ヴァイテル君?」
「ちょっとお話が…。」
「そっか。ちょっと行ってくるね!」
「ああ。気をつけろよ」
「はーい!」
何故かヴァイテルに呼ばれたベル。
新団長として、ベルとメインで動いていた時よりも何倍も活力があるように見える。
副団長である<Blowー∀>も、全体を支える様に動いているため、底力もある。
...多少Blowー∀と言う者が怪しく思えるのは、気のせいだと思いたいが。
「...よかった」
開口一番そういうベル。俺は不審に思い、聞いてみることとした。
すると―――
「...ヴァイテル君、本当は女の子ってこと知ってた?」
「そうなのか!?」
その俺の反応に、ベルは軽く呆れている。
まあ、知っていたのだろう。
「...だよね。まあ、それで...。」
「ああ、それでなんだ!?」
「...弓みたいなんだよね」
「ゆ、弓?」
俺が何言ってんだコイツと言う顔をすると、ベルはしまったというような顔をした。
「ゴメンゴメン、私の妹だったってことだよ。
なんでか、分かったみたいで」
完璧に意外だった。
アイツは男だとばかり...。
「...マジかよ」
「序でに補足。副団長は...」
「......桜地 斉太の可能性あり、だってさ」




