孤狼
ベルが消えてから、約半年が経った。
俺は、亡霊のように最前線にいたが、フードをしていたことと、攻略会議の内容をダグラスからまた聞きしていた事が幸いし、俺の存在は段々と忘れられていった。
たまに、ベルを見た気がしたが、それはきっと、俺の幻覚だろう。
―――俺達が突撃しなければ、彼女は死ぬことなどなかったのに。
そして、今日も俺は最前線で鎖頭巾と布製のモンスタードロップ品の壊れないフードを被り、俺はまたここにいた。
Ⅴ層、最上階。
俺は、惜しげもなく最前線のⅬⅢ層で出るようになった場所固定型転移結晶を使ってきていた。
そして、毎週花束を届けることにしていた。
「ベル、俺は69lv,になったよ。
...お前が居れば、俺はどうなってたんだろうな。
もう、分からないけどな。
......そのうち、また来る。じゃあな」
花束は5日で耐久値が消滅する。
それでも、俺は惜しげもなく花を買っては届けていた。
―――
「すみません、『孤狼』さんですよね?」
「......ああ。どうしたんだ?」
「あの...フレンドに―――」
「断る」
「なって...。え?な、何でですか?」
「...お前には関係ない話だ。
分かったら、さっさと消えろ」
俺は、毎日来ているこの女に辟易していた。
俺は、仲が良くなった奴が消えるのではないか、と思い続けていた。
―――ベルのように。
「分かりました」
ようやくいなくなってくれる、とため息を吐いた、次の瞬間。
「じゃあ、私があなたに付きまといます」
「......はあ。仕方ねえな」
「ありがとうございます!
宜しくお願いします!」
結局、コイツも死ぬんだな、と思いつつ、俺は。
「へえ、イアさんって昔は攻略組だったんですね!」
「...今も現役だぞ」
「えー、そんな様子無いじゃないですか!」
「基本は行かずに守護塔攻略の時だけ行くんだよ」
「へえ。私も頑張ればいけますか?」
「ダメだっ‼」
俺の突然の大声にビビってしまった様子の少女―――グテル。
「...なんでですか?」
「......俺はな、昔突っ走って仲間を殺してしまったんだ。
だから、お前が何といっても俺はお前が最前線に行くことを認めない」
「えーー...」
「だが」
俺は表情を柔らかくして伝える。
「...俺の友の所で修行して、それでもまだ行きたいのなら、俺はその時に連れて行ってやろう」
それだけで、彼女はピシッとなった。
それを苦笑交じりに見やると、俺はⅬⅠ層のある店に、グテルと共に足を運ぶのだった。




