二人で挑む、第Ⅴ層 押しつぶされた、鈴
「......なんか、団長が居ないんだけど。
副団長も消えてるんだけど!?
二人とも、どこに消えたのー--!?」
第Ⅴ層の一角に響いた慟哭。
そんなものなど、俺達には知らぬ存ぜぬだ。
―――
約1週間前。
俺達は、鉄十字団からしっかりと抜けていた。
そのまま、誰にも気づかれぬように隠蔽しつつ行動をしていた。
そして、俺達はⅤ層守護塔に来ていた。
「はあ...。
ここまで来ちまったけど、戻るか?」
「な訳無いでしょ、入ろうよ!」
「...だな。入るか」
「よーし!行っちゃおーう!」
「おー」
控えめに返答してから、俺はアリスと共に守護モンスターを倒すことにした。
「ハア、ハア...。こいつ、以上に強くないか⁉」
「うーん、これ以上はきついかもね。でも、やれるだけやってみる?上手くいけば途中で援軍が来るでしょ」
そう言って、アリスはフレンドメッセージを送ったようだ。
「これで良し。
さあ、頑張ろっ!」
―――
15分後。
俺達はボロボロな状態で、敵―――双頭斧使い山羊、《Damon sleeper The Devil Crasher》はまだまだ元気だった。
そして、防ぐ気力もなく、斧を振った山羊を止める事もなく、俺達は抵抗をやめた。
「...!大丈夫、二人とも!?」
「「...ベル?」」
「すぐにまた援軍が来るから!それまで耐えるよ!」
ベルが来た。しかし、それだけでは戦況は変わらなかった。
「ベル、危ないぞ!」
そういっても体は動けず、ただ彼女が斧にすりつぶされるのを見ていただけだった。
―――
「...イア、大丈夫か?」
「...グロウか。大丈夫だ」
「...そうか。じゃあ、上まで送ってやるよ」
「助かる」
俺達は、何とか二人で山羊悪魔を殺した。
だが、俺達にすれば、それは俺達が急いだが故の敗戦だった。
「...アリス」
「何、イア」
「副団長に戻ってくれ」
「分かった、私は戻るよ」
「ああ、頼む」
それだけ言って、俺はアリスとのフレンドを切った。
俺がフレンドとして登録しているのは、グロウとダグラスだけになった。
―――
「ベル、じゃあな」
俺はそう言ってベルに別れを告げた。
『歌狼』の俺としてだけでなく、友としていたために、俺は悲しかった。
何かないか、とステータスを見ていると、俺のステータス、<Ruck Knight>の所が光り、俺の手元にあるアイテムが出た。
俺は、そのアイテムの能力を見、喜んだ。
「これなら…!ベル、少し待ってろよ!」
俺は、それをBellに使用した。