Bell
第Ⅳ層、守護塔。
俺は、或るプレイヤーと出くわしていた。
遡る事1月~~~
第Ⅰ層を攻略した後、俺はほかの奴と誰とも会わずに、どんどん塔を攻略していた。
その結果、レベルが31までいったのだが、どう考えてもこの段階でこのレベルはおかしいとは思った。
まあ、そう思うたびにコラテラルコラテラルと頭の中で唱えていたために、俺は悪くないと自己完結していた。
攻略組達は、そのほとんどが初見組であり、俺の様にβの時プレイしていた者は少ない。
そして、此処に同じ様な奴がいないということは、俺と同じ様な奴はもういないということだ。
そんなこんなで俺がひとり突き進んでいるⅣ層、19階。
此処が、今の段階である。
「......なんだよ、お前」
「いや、こんなところにいるってことは、君は攻略組じゃない...もしかして、私と同じ?」
「言っている意味が分からない」
「ああ、そっか。
......じゃあ、やっぱり君は私と同じ―――βの時にいた人だね?」
その言葉で彼女が言わんとしていることが理解できた。
「......ギルドに入れって言うんなら、俺は断るぞ」
そういうと、彼女は心外だと言う顔をした。
「やだなあ、私なんかがギルドを作れるわけないじゃん!
でも、割と近いかな。逆だよ。
―――私が、貴女のギルドに入ろうって言ってるの!」
そのイントネーションに、俺は苦笑した。
「俺は男だ。
...なんか、前もこういう事あったような...。」
「えっ!?じゃあ、もしかして…。」
「なんだ?」
「あ、あの...。
......攻略組殺しのイアさん!?」
「......不名誉だが、そうだ」
「なら、なおさら宜しくお願いします!」
こうやって、俺とベルは出会った。
それが、俺の心に刻まれるものとは知らずに。
―――
「...それで、私が団員候補になったってこと?」
「まあ、そういう事だ」
「君が居なくなったから私は一人になったんだけど...。」
「まあ、いいじゃないか」
「...良いよ、でも、私は“副”団長で!」
「なんでそんなとこ強調するんだよ」「まあ、いいでしょ」
そこで、俺はベルが何もしゃべっていないことに気が付いた。
「ベル、どうした?」
「......この子、とてもかわいい」
「そうか。ベルのお眼鏡にかなったんだ、誇ってもいいぞ」
「そんなので誇りたくない。誇るんだったらもっと現実的なものを誇った方がいいと思う」
「何?私が可愛いって言ったのがそんなに嫌だったの?」
「いや、そういうわけじゃないけど...。」
「じゃあ、何?」
「...貴女の方が可愛いと思いますよ」
そうアリスが言うと、ベルは嬉しかったのか、アリスを抱きしめた。
アリスはそれにおどおどしている。
これがチャンスだと思い、俺はそこを抜けだした。
「...ゴメン。俺は別にギルドを作ったから」
「そうか。悪かったな、グロウ」
「いや、良いんだ。君のおかげで、最新の層の敵が分かるからね。...ただ、今度ばかしは突っ走っちゃだめだからな?」
「...ああ。善処する」
「善処と言っている時点で、やってくれるのだろう?」
「...俺のフレンドは、俺の心を見透かしてくるのが怖いな」
「イアが読みやすいだけだ」
「そうか...。」
久しぶりにグロウと話をした。Ⅱ層でフレンドになっていたため、こうやって簡単に会えるのだ。
それにしても、本当に俺のフレンドが悉く俺の心を見透かしてくるのは怖い。
「...ゼロだ」
「ふーん。こっちは80人ぐらい集まったけど」
「私も。68人は入団してくれたよ」
「お前らすげえな」
「「それ程でもあるよ」」
「いや、認めるのかよ」
俺の人望が無いのか、それとも二人がカリスマ性を持っているのか、俺が人を集めるには無能に思えてきた。
「...久しぶり。
どっかの十字を掲げているギルドの団長さんのせいで今までは攻略会議が出来なかったけど、これからはまた攻略会議が開始するからね。
改めて、今回もレイドリーダーは俺...と言いたいところだが、ギルド制になったから、今回は3レイドになる。
ソロ組、俺達『歌狼』、後はイアの『鉄十字騎士団』だ。
レイドリーダーは任せる。
じゃあ、後は頑張るぞ!」
久しぶりの会議に、心が引き締まっていく面々。
それが、あまり続かないものだとは知らなかったが。
―――
「......お疲れ。
じゃあ、解散!」
そうして皆が解散する中、俺とアリスは有る事を考えていた。
俺達が消える作戦だ。




