真章PART16『戻り、帰り、その先に』
今回はいったん最終話になります。
別の方の小説にするので、お楽しみに。
今までいた場所の崩壊と言う一大スペクタクルは、どのようにして言葉に表せるのか。
そう考えながらも、確実にスケアクロウは落下していく。
―――と、今までなくなっていたはずのⅭ層以下が復活した。
何があるのか、といぶかしむ時間もなく、その二つはドッキングし、地上に向かって落ちていく。
今まで赤き地平と呼ばれていた場所は、蒼かった。
と、心の中でどこぞの宇宙飛行士が言ったとされている言葉を呟きつつ、俺達はこの世界から退去させられた。
―――
「ふああ...。...ん?」
俺は目覚めるなり、俺に抱きついている少女の顔を見る。
「にゅああ...。」
まだ寝ぼけているらしい由紀の頬を抓る。この程度の御返しで済んでよかったと思え。
...と、ようやく目覚めたその少女は、まだ眠そうにしていたためにどうしようもない。
無理に離そうとしてもくっついてくるのがコイツだ。
その為、そのままの状態を甘んじることにした。
―――
「...ああ、威亜。おはよ」
「おはよ、じゃねえよ」
一応俺をあの世界に閉じ込めた張本人な筈なのに、何故か恨めなかった。
それもこれもコイツの行動原理と真意が知れているからだろうか?
「...疲れたな」
「疲れたどころじゃなかったけどね。まあ、威亜と一緒に入れたからよかったよ」
いつも通りの会話をこなしつつ、俺達は部屋から出る。
―――いつもと部屋の内装が違く思えたのが不思議だったが。
「「...どこ(だ)、ここ」」
そして、またもや内装の異なった家の扉を開けると―――見た事もないような台地が広がっていた。
―――
【...ようこそ、我が庭へ。諸君ら、私の誘いに乗りて集った20万人は、この世界において一定の基準を満たしたもののみ抜け出せるのだ。よく活動するように】
いつもの声が響くとともに、この世界のどこからか光が迫ってくる。
取り敢えず、横の由紀を抱きしめておく。
こうすることによって、きっと何とかなるだろうからと、そんな事を考えながら、俺達は光に包まれる。
―――
...どこだ、此処は。
暗闇に包まれながら、俺はそう思う。
『ǸǸǸǸ?ǸǸǸǸ?』という声が遠くから聞こえたが、それを音声として認識できる能力は無かった。
『―――レイヴン』
ただ、その一言のみが聞き取れたものだった。




