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友人のアイデア(マリルノ視点)

 授業の合間にある休憩時間。


「うーん……」

 私はアルダタさんのことを考えながら、悩んでいました。


「どうしたの、マリルノ」

 お手洗いに行っていたスコッテが戻ってきました。

「もしかして……」


 目をキラキラと輝かせています。また何か妙なことを考えているのでしょうか。

「ペドロル様の他に、気になる人ができてしまったとか!」


 やっぱり。

「違いますよ。少し勉強のことで迷っていたことがあっただけです」

「真面目だなー、マリルノは。いつも学年上位に選ばれているのに、これ以上、悩むことなんてないでしょ!」

「いや、うーん」


 秘密は守らないといけませんし……でもスコッテは私とは違った考えを持つ人なので、意見してもらえたらすごく有り難いのですが……


「そうですね。コホン。これはあるご友人から聞いた話なのですが」

「うん、何?」


 大丈夫。こうして話せば、分からないでしょう。スコッテを騙すのは心苦しいですが、背に腹は抱えられません。


「その方には弟君がおられまして、彼に自宅で、初歩的な勉強を教えているのです」

「うんうん」

「その弟君はとても優秀な頭脳を持っていて、教えたことを次から次に吸収していきます。それにとても熱心なので、そのお友達は教えるのが楽しいとおっしゃっていました」

「へー、そうなんだ。いいじゃん」


「しかし最近になって、弟君の様子がおかしいのだそうです。以前よりも勉強に集中なさっていないみたいで、どうしたの?とその方が伺っても上の空の返事ばかりで……

 ということを相談されたのですが、スコッテだったらその悩まれている方に、どんなお言葉をかけてあげますか?」


「うーん、私だったら、その弟くんが興味を持つようなことをやらせてあげるとかするのかな」

「ほうほう」


「例えば、その弟くんが学んだことを活かせる場を用意してあげて、『あなたが一生懸命勉強したから、こんなことができるようになったんだね』って教えてあげるの。そうしたら弟くんも、勉強に対してのやる気を取り戻すんじゃないかな」

「それは確かに、やってみる価値がありそうですね」


 やっぱりスコッテに相談してよかったです。私のやり方はノートに向かわせるばかりで、効率はいいのかもしれないけれど、そればかりでは退屈すぎたのかもしれません。


「ありがとう、スコッテ。その友人に今度お会いした時、そう伝えてみますわ」

「うん。あれ、でもマリルノに弟くんなんていたっけ?」

「え? 私に弟はいません。ですから、今のは私の友人のお話ですよ」


 スコッテはじっと私の顔を見た。

「な、なんですか?」

 それからぷいっ、と顔を背けた。


「まぁいいや。そういうことにしておいてあげる。でもマリルノ、もしまた同じような状況が起こるんだったらね」 

 スコッテは悪戯っぽい笑みを浮かべて、私のことを見ました。

「『友達の話なんだけど』なんて嘘くさい前置き、使わないほうがいいよ。そういうのって、大抵その人自身の話だから」


 チャイムの音がなって、スコッテは自分の席に戻っていきました。


 私は耳まで真っ赤になっていました。

 やっぱり、鋭い親友を欺こうなんて、できっこありません。ペドロル様のためとはいえ、よくないことをしてしまいましたわね。


 授業が始まっても、しばらくの間、私は恥ずかしさのあまり、なかなか集中することができませんでした。


「お待ちしておりました。どうぞお乗りになってください」

 いつもと変わらない調子で、パージさんは言いました。


「あの、パージさん。少し寄ってもらいたいところがあるのですが……」

「へぇ、どちらですか?」


 私は近くの大きな文具店の名前をあげました。

「かしこまりました。ではそちらに寄ってから、お屋敷に参ることに致しましょう」

「ありがとうございます! ご面倒なことをお願いして申し訳ないです……」

「いえいえとんでもないですよ。さあさあ、乗ってください」

「はい!」


 そういうわけで私は、文具店に寄り道をして、それからペドロル様のお屋敷に送っていただきました。


 私を出迎えてくれたアルダタさんは相変わらず丁寧に接してくれました。

 しかしやはりどこか、浮かない顔をされているのです。


 ペドロル様の部屋に入ると、私はそんなアルダタさんに、「今日はこんなものを持ってきました」と言って、文具店の包みを彼の前に差し出しました。


「これは……」

「開けてみてください」


 私が促すと、彼は長い指で丁寧にその包みを剥がしました。

 そして中から出てきたものを、しげしげと眺めました。

 私はその顔を見ただけで、早くもスコッテに相談して良かったと思いました。


 確かに、どれだけ熱心な学習者でも、ノートと睨めっこしているばかりでは飽きてしまいますよね。彼を教えるにあたって必要だったのは、ちょっとした変化だったのかもしれません。


「これは便箋です。今日は今まで勉強した文字を使って、手紙を書いてみましょう」


最後までお読みいただいて誠にありがとうございました。


アルファポリスにて最新61話まで配信している作品です。

小説家になろうにおいては、まだ投稿頻度を定めておりませんが、順次アップロードいたします。


どうぞよろしくお願いします。

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