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第一章5話『 手紙の真意 』


「その 桜庭先輩の妹が加わったら、この状況を打破できると?」



 空の疑問は当然だった。一件の内容からして 大事になればバッドエンド。最少人数での解決が望ましいのだが、ここでまた一人加えるというのは空からすれば博打もいいとこ。何せ空は美琴の事を何も知らないのだから 。


「 それは 分からない 」


「分からないって … … 白先輩はどう思いますか?」


 問われる前から 俺は美琴が加わった方が良いと思っていた 。アイツは空とは異なる部類の天才。だがしかし それを気持ちよく了承はできない。後々に起こりえるデメリットを考えれば、それは未知数だからだ。


「その提案、一度俺に委ねてくれないか?」


「と言うと?」


「え、どうして?」


 二人は同時に 白へ疑問をぶつけた 。理由は当然、この二人の共通意識として『白は美琴の事を知らない』からだ。そんな人物に何の脈絡も無く決断させろと言われても 不安要素が増えるだけ。


「そ、それは … … 」


 『この中で唯一俺だけが、お前ら三人の事を大方理解しているからだ。俺達の能力と情報量を結集して挑めば これくらいの問題は難無く解決できるだろう。』なんて そんな事は言える訳もなく、今の俺には この二人を納得させるだけの根拠がない 。


「俺は別に 先輩に委ねても構いませんが 」


「え、いいのか?」


 俯いていた白の顔は、予想外の発言によって空の方を見つめる 。


「俺はいつも、最終的には先輩に決定権を委ねてるんでね 」


「それは … … お前の考えとしては どうなんだ?」


「不安はやはり残りますね 。桜庭先輩の妹を俺は何も知りません 。白先輩はご存知なんですか?」


「一応 、少しは … … 」


 目線を逸らしながら答える白の様子は、ぎこちなく口ごもっていた 。それを見て確信した空は『フッ』と 何かを察したように鼻で笑った 。


「何か考えがあるんですね?」


「え? あー まぁな 」


「なら俺は先輩に託しますね 。どの道俺が持つ情報量だけでは決め兼ねますし、元々誰かに委ねるしか無かったので 」


 そして空は『桜庭先輩は どうですか?』と問い掛ける。思わぬところで指名されて多少は驚いた美羽だが、先程から考えていたようで 答えは決まったらしい。


「私は 白の意見を聞いてから、考えたいな 」


「うん 確かに 。それも一理ありますね 」


 美羽の答えには白も納得した 。美琴の能力と情報、これから先に起こるであろう出来事や事件に対するメリットとデメリットを踏まえた上で 。



「俺は 美琴の力を借りたい 」



「ん?名前?」


「え、どうして名前?」



  ――ここでポカをやらかす白は流石だった。



 その決断をして数秒後に、一限目の授業を終えるチャイムが校内に響き渡る 。白にとってはナイスタイミングだったようで『ごめん間違えて呼んじまった そろそろ教室戻ろうぜー』と、かなりの棒読みで化学準備室を出ていったのだった 。


「それじゃあ 続きは放課後。文芸部室でしましょうか 。美琴には私から声を掛けておくから 」


「分かりました 。一応文芸部の場所は把握してますが 分からなくなったら白先輩に聞いておきます 」


「えぇ よろしくね 、赤井君 」


「こちらこそ よろしくお願いします先輩 」


 二人きりになって 変な空気になる事もなく、流れるように終える会話を最後に 二人は自分の教室へ向かって行った 。



「見てみて あの人だよ 。桜庭さんとお付き合いしてるっていう … 」


「不良なんでしょ? 桜庭さん大丈夫かな 」


 自分の教室に向かって廊下を歩いているだけで このザマだ。当然無視して堂々とは歩くが 居心地が今まで以上に最悪だ 。後ろを歩く美羽も 周りの声を無視して堂々と歩いてはいるが、胸糞悪いって顔面に思いっきり書いてるぜ 。とりあえず その逆八の字になってる眉毛はやめないか?


「よぉ 桜庭ぁ!お前 あの不良と付き合ってるんだって!?」


 見た事もない金髪の同期が美羽の肩を軽く叩いてきた 。しかし 歩く事をやめない俺達は 悪魔でもその男の事を無視する寸法だ 。


「あの落ちこぼれの何がいいんだよぉ?おい 」


「気持ち悪いから 早く消えて 」


 明らかに向けられている嫌悪感を諸共しないソイツは、美羽との距離を更に詰める 。鼻息が当りそうな程にまで近付いてくる顔には さすがの美羽も拒絶反応が出てしまう 。


「近付かないでよ! 不良と言うなら貴方も同じでしょ?」


「あぁ!?俺をあんな人殺しのクズと同じにすんじゃねーよ!! 」


「ッ?!! 人殺しって、貴方一体何を言って … … 」


 その言葉を聞いた白は すぐ様後ろを振り返り、その男の元へと猛ダッシュで駆け寄る 。この勢いのまま 本気で殴れば相手の意識と顔面はタダじゃ済まないだろう 。相手に多少の非があるとは言え、それをすれば俺の停学処分は間違いなく行われる 。



  ――だが もはや そんなものは関係ない 。



『あんたがいるから 私はここまで生きてこれたんだよ? だから そんな顔しないで? 』



 俺は誰も殺してなんかいない 。誰も不幸になんてしてない 。あの死は アイツ自身が望んだ事 。



『お前こそ もうやめろよ 』



『ん? 何が?』



 中学の時に起こした俺の過ちは、高校生になった今も首を締め付ける。永遠に解ける事の無いその呪縛、そして真相はーー当然 俺しか知らない 。



『生きていく意味も 死ぬ意味も 、もうそんなの探すなよ 』



『ッ!! 』



 寝ても覚めても変わらないその現実を 俺はいつしか記憶の奥底に眠らせていた 。忘れようとした訳じゃない 。ただ安らかに 眠らせてあげたかったんだ。それなのにコイツは、アイツの死をそんな風にーー!!



「許さないッ!!! 」




    ――ダンッ!!!




 一瞬で0になる距離を最後は本気で踏み込んで、白の腕は肩の後ろにまで振りかぶられる 。風を切って振り下ろされる豪快な拳は その男の鼻に目掛けて 飛んでいく 。間違いなく そこは顔面の急所骨きゅうしょこつだった 。



    ――ドンッ!!!



 その鈍い音を合図に、男は白の真横の更に奥まで飛んでいく 。


「ん?」


 真ん前へとぶん殴った筈の相手が、自分の真横へ飛んできた状況に疑問を抱かずにはいられない白は 思わず首を傾げてしまう 。



「白は そんな事しないッ!」



 そう叫んだ美羽は 両手を前に突き出していた 。どうやらその男は 美羽によって突き飛ばされたみたいだ。


「美羽 … … 」



「無意味に人を傷付ける貴方と、一緒にしないでッ!!!」



 廊下に響き渡るその声は まさに魂の叫び 。何人もの生徒が見ていたこの状況で、美羽が叫んだその思いを疑う者など 誰一人としているはずも無かった 。


「何だと このあまァ!!!コッチが下手したてに出りゃ 良い気になりやがってぇ!! 」


 倒れていた体勢から 本気の助走で美羽の懐に飛び掛かろうとするその男は、もはや猛獣のそのも。美羽を捉えようと 血眼になりながら両腕を伸ばしていく 。



    ――パシッ 。



「美羽に触んな 」


 男の片腕を掴みながら 白は自分の全身をグリン!と回転させる。男は堪らず痛みを軽減させる為に白の回転に合わせた動きをするが それに追いつける訳もなく、片腕を抑えて倒れ込んでしまう 。



「一つだけ教えといてやるよ 。俺と美羽は付き合ってねぇ 」



 彼の言葉だけは 誰の心にも届かなかった 。



 そうして俺達は教室へと戻るが その空気は殺伐としている。気まずい空気のまま進められる授業に 嫌な視線を向けられる二人。あれだけの注目を掲示板と廊下の計二回も浴びているんだ。こうなる事は当たり前だった。


「ガキだな 。俺は … … 」


 心は19歳だってのに、ちっとも大人な対応が出来てない 。廊下の時 美羽が居なければ俺は間違いなく問題を一つ増やしていた。停学処分、相手の怪我の具合によっては 文芸部を退部させられていたかもしれない 。


「もう少し 冷静にならないと 」


 そんな事を考えている俺の机に、一枚の丸められた紙が飛んでくる 。どこから飛んで来たのか気になり 辺りを見渡すと、美羽がコチラを向いていた 。ジェスチャーで『紙を開いて』と伝えてきた 。


『元気出して 。私は貴方を信じてるから 』


 その内容に、安心した感情とは裏腹に『なんだそれ』と思わず鼻で笑ってしまう 。俺は返事を書こうとボールペンを走らせ、再び紙を丸めて美羽に投げる 。しかしその紙は美羽の後頭部に当たってしまう。驚いた美羽は 『痛ッ』と呟きながら 床に落ちた紙を渋々拾う 。


(ちょっと〜!?)


 コッチを向いて 不服そうに伝えられるその小声と、紙が頭に当たる様を見て 俺はクスクスと笑っていた 。



『 眠たい 』



 その内容を見た瞬間、ブン!!!と風を切って投げ返される紙ボールを白は難無く交わすと、窓の向こう側へと落ちていった 。『残念だったな』の意志を込めて、美羽に向けて更にクスクスと笑う 。


「全く … … コッチは真剣なのに 」


 それに対して 『眠たい』ってどーいう事よあのバカ!珍しく落ち込んでたから心配して気を使ってあげたのに『眠たい』って! 考えれば考える程イライラしてくるわね もう!!


 そんな私の元に またもや一枚の紙が飛んでくる 。嫌な予感がしながらも 白の方を見ると 腕を枕にして眠っていた 。その様子から またロクなメッセージじゃないんだろうなと、半分諦めながら紙を広げる 。



『 好きだよ 』



「は?!!」



 ガタン!ガタッガッ!!と、どうやったら座りながら椅子や机をそこまで揺らせるのか、というくらい音を弾ませる美羽 。叫び声とも相まって 一気に注目の的となってしまった。


「ど、どーしました?桜庭さん 」


 さすがの先生も驚いてしまった様で、あの成績優秀 才色兼備の美羽が突然叫んだその事実は、簡単に整理できるものではなかった。


「す、すいません。あの 虫がいてビックリしちゃって … … 」


「あら 。もう 大丈夫ですか?」


「い、いなくなったので大丈夫です 。すいません 先生 」


 完全に赤くなった顔を隠せるわけもなく、羞恥丸出しの美羽は 腕を枕に顔を埋める 。


 何考えてんのよ アイツ!しかも何なのよこれ、告白?!急にこんなの渡されても心の準備出来てないし、それにこんな手紙だなんて 。もし ちゃんと告白をするなら、キチンと相手の顔を見てがいい 。


「でも ここで保留とか返事しないとかは可哀想なのかな … … 」


 そう思いながら 美羽はシャーペンで返事を書いていく 。いつもは素直になれなくて遠ざけてしまう時もあるけれど、手紙でなら書けそうな気がして 。ありったけの想いを振り絞って 文字を書く 。


「 … … ん?」


 何かが頭にコツンと当たって目を覚ます白は、机の上に紙があるのを確認する 。一応美羽の方を向くと、それはもう林檎りんごのように赤く出来上がった頬と 落ち着きのない手と足。そんな様子から内容が気になった白は 紙を広げる 。



『 私も 好きだよ 』



「はぁ?!!!」



 美羽と全く同じ反応を見せる白は 皆の注目の的となる。しかし誰からも声を掛けられる事がなく 授業は再開 。数秒経った後でも 内容の意味がイマイチ掴めない白は もう一度美羽の方を向く 。


(なんだよ これ!)


(何って あんたがくれたんでしょ!!)


 その小声を最後に 白は手と首を横へと何度も振る 。そのジェスチャーの意図に気付いた美羽は『はぁ?!!』と小声で驚いた 。


「 え、これってもしかして … … 」


 『好きだよ』と書かれた文字に対して『私も 好きだよ』のこのやり取りの意味を、どうしても考えてしまう白の顔は少しずつ赤くなっていく 。そして恐る恐る美羽の方を振り向くとーー




    ――チーーン 。




 机にそのまま頭を置いて 生気を失っていた 。まるで生きる屍、だが顔と耳は真っ赤という もはや説明の付かない状態になっていた。そんな美羽を見てから 『悪い事したな』と反省する反面、となればこの『好きだよ』の文は 誰が書いたんだ?


「 … … もしかして 掲示板の件と関係ありか?」


 繋げるには証拠も確証もないが、このタイミングの良さ 。これはもしかしすると、標的は俺ではなく 美羽か … … ?



 新たな疑問を抱きつつも白は、居心地の悪い四時間の短縮授業を何とか乗り切って放課後を迎える 。


 幾度となく向けられる冷たい眼差しを無視して、俺と美羽は二階にある文芸部へと足を運んだ 。ドアを開けて先に入ったのは美羽で 俺も後から中に入る 。


 真ん中にある長机と それを囲むように置かれてる六つの椅子 。壁際にある複数の本棚には 沢山の資料と小説 。その近くに小さな丸机があり、書類の山ができていた。水道や小さめの冷蔵庫、ポットなどが置かれている家庭的な雰囲気のある部室だ 。


「あ、お姉ちゃん遅いよ〜 」


「ごめんごめん。ちょっと色々あって 遅くなっちゃった 」


 そこには既に椅子に座る空と 窓際で立っていた美琴の姿があり、二人きりで不安だったのか 美琴はすぐに美羽の元へと駆け寄った。


 これで 全員揃ったんだ、俺達文芸部員が 。男二人に女二人と、偶然にしてはバランスのとれた男女比率。まぁ 人数が四人しかいないので別に珍しくはないが 。


「何か男の人二人共怖いけど 大丈夫なの … ?」


 美羽の袖を掴んで ボソボソと耳打ちしている美琴は不安を隠せずにいた。それに対して二人の男性陣は苦笑いをしている。何せその耳打ちは男二人に聞こえているからだ。


「大丈夫だよ 。白も赤井くんも 私の力になってくれる人だよ 」


「ッ!! あの髪の白い人が、お姉ちゃんがいつも言ってる 天条さん?」


「こらッ! 余計な事言わないの!」


 ヒソヒソと話しているつもりの女性陣二人だが、男性陣にはもはや丸聞こえである。



「良かったですね天条さん 。いつも言われているみたいですよ〜 」


 真横で小さく伝えてくる空の言葉は 当然ただの冷やかしだと理解している白 。


「うるせぇわ 」


「一体何を言われてるんでしょうね〜 ぷ〜クスクス」


「後で顎貸せ 。素手で二重アゴにしてやるよ 」


「素手ッ?!!!」


 そんな俺達のふざけた会話も終わり、美羽は部室にあるホワイトボードを出してくる。特に何かを書くと決めている訳でも無さそうだが、まぁ 雰囲気から入るつもりだろう 。


「まずは 自己紹介でもしよっか 」


 白以外の三人は 初対面なので当然の流れだった。ならばと面倒な事を早めに終わらせておきたい白は いち早く自己紹介を済ませる 。次に美羽、空の順番で周り、最後に美琴の番がきた。


「私ですね 。一年四組の桜庭さくらば 美琴みことと言います 。入学したばかりで慣れない事も多いですが、どうぞよろしくお願いします 」



 桜庭さくらば 美琴みこと。高校一年生の十五歳。身長156センチ 。


 クリーム色のふわふわなショートカットの髪型は、元ある優しい雰囲気をより際立たせている。全体的に小柄で清楚感溢れる彼女の頭脳は、入学したばかりだというのに 学園トップと謳われる程の秀才。中学の頃に残してきた幾つもの記録と受験の満点合格から、この学園で彼女を知らない者はいない。



 拍手を送られて 美琴は再び席に座る 。それと同時に美羽が立ち上がり、俺達の正面にあるホワイトボードの前に立つ 。


「私の妹よ 。大切にしなさい 」


「へーーい 」


「了解です 」


 適当な返事と真面目な返事を聞いて、美羽は説明を始める。朝の掲示板の件と空が導き出した推理。そして これからとる行動に 行き詰まっている事を 。


「なるほど 」


 顎に手を置いて考えている美琴は 恐らく整理しているのだろう 。しかし 美琴が口を開くまでに時間は掛からず、俺達に新たな道が切り開かれる 。


「掲示板を映しているカメラにガムテープが無い事は 確認済みですか?」


「いや 俺は確認してないな 」


「俺もしてないですね 」


 ガムテープが貼られている確認?それをする必要性をあまり感じないが 。


「どういう事か教えてくれる?美琴 」


「いえ 特に意味は 。ですが学園で普通に過ごしていて、監視カメラなんていちいち見ますか?」


「ッ!! 確かに 見ないか … … ?」


「ですよね。掲示板にアレだけの人が居たのにも関わらず もしカメラにガムテープが貼られていたとしたら?」


 確かに 未来の三年間でも学園で監視カメラを見る事なんてまずない。理由は分からないが、仮に視界に写ったとしても それを気にした事は無い 。


「でも 赤井くんの推理ではガムテープを貼るのは可能性的に難しいって 」


「深夜はカメラと警備員 。朝から夜は教員と生徒がいる中で 貼るのは難しいのでは?ましてや監視カメラにガムテープを貼るなんて脚立とか必要だし 」


「どうして その期間だけで考えるんですか?その両方が当てはまらない時があるじゃないですか 」


「え、いつだ?」


 当然の様に言う美琴だが 俺達はその期間なんてまるで検討が付かない 。


「あ ッ … … そうか 」


 そこで空は 呆気に取られたように口を開いた。それは そこにあるハズの物を、当然の如く外してしまっていたからだ。


「あ、赤井さんは気付いた?」


「うん 気づいたよ 。凄いね 桜庭さん 」


「私は赤井さんの推理を元に付け加えただけだよ。ほとんど何もない状態でここまで推理した赤井さんの方が凄いよ 」


 二人の褒め合いはそこで終わり、続きを話そうと美琴が再び口を開く。




「春休みの最終日 。つまり始業式の前日から ガムテープは貼らていた 」




「ッ!!!」


「その日なら 春休み最終日という事で教員も部活動をしている者もほとんどいないです 」


「でも 逆に目立たない?そんな事 」


「何言ってるんですか 。放送部ならもし見つかったとしても 『カメラの向きが〜』とか『レンズが曇ってる』とか 適当な事言えますよ 」


 つまり 掲示板にあの紙を貼るために、春休みの最終日から 犯人は既に実行していた。白と美羽を陥れる為に 。


「でも もしそうなら どうして犯人は今日 実行したんだ?普通それなら今日じゃなくて 始業式の日にすると思うんだが 」


「それは … … ごめんなさい。私もそれが分かってなくて 」


 またもや行き詰まる推理 。これは頭よりも行動に移した方が良いのかもしれない 。


「何かしらの都合で … … 昨日は実行出来なかったとか? 」


「何かしらの都合? そんな曖昧な事言われても 」


 だが 美琴が言っている訳だし 一応思い出してみるか 。昨日は確か 学園へ向かって、教室で一悶着あった後 美羽と保健室に行ってそれから――



「 … … なぁ 美羽 」



「ん?どうしたの 白 」



「お前 昨日不良に絡まれたの、何時頃だ?」



「確か二限目が終わってすぐだったから、10時50分から11時10分の間くらいかな?」


「そうか 」


 何故だか嫌な予感が脳裏に過ぎる白 。しかしその可能性はゼロに等しい 。


「白 … … あんたもしかして それと関係あると思ってるの?」


「いや 時間的には絶対合わねぇから無いとは思うんだけど、何となく気になって 」


「不良って何 お姉ちゃん 。絡まれたの?」


「うん、昨日ちょっとね 」


「そういやその時 白先輩走ってましたね 。まさかそれが原因で?」


「あぁ そうだ 」


 なんだろう この感じ 。時間帯的には絶対に繋がっていないのに 妙に絡みついてくるこの嫌な予感は 。何か一つでも加われば 全てが繋がりそうな … … 。


「あんた … … 言ってる事分かってる?それ 」


「わ、分かってる 」


「それはつまり―― 」




 あの不良の仲間が この学園の放送部にいるって事になる 。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 全体的に 感情描写が多くて感情移入がしやすかったです!!人物像や背景は最低限ですが、全然わかる範囲で読んでいて面白いです!幽霊の美羽ちゃん可愛いですね。もっと絡みをふやしてほしいくらいです…
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