リックとのこと・2
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リックには人を見抜く能力に欠けているところがありました。
皇帝の代理を努めるリックですが、基本的に人は皆善人だと思い込んでいるリックの目には、自分を欺そうとしている者などいないように映っています。
それをいいことに、政治の中心に携わる貴族たちの中に不正を働く者が出始めます。それをいち早く見抜いたアークはリックに報告をしますが、本人に注意をして不正で得た金を返納させるだけでした。更に使ってしまった場合は返せるだけでいいと、対処が生ぬるく、不正を働く者たちは後を絶ちません。
見かねたアークはリックに不正を働いた者には厳重な処罰をするべきだと助言をします。具体的にどう処罰をしたほうがいいのかと問うリックに対し、処罰の権限を一任させてもらいたいと言います。
アークは不正を犯した者達をもれなく降爵させ、領地を縮小させ、政治の中心から遠いポジションに置きます。文句を言う者には更なる降爵、目に余る者は奪爵、斬首をし、見せしめとしました。
リックはそれをやり過ぎだと思いましたが、アークに何故そこまでしたのかと理由を聞きます。アークは答えました。
「自己の利益を第一に考え、他者を思いやる心の無い者には何を言っても無駄だからです」
リックはそんなことはないと言いたげな目でアークを見つめます。アークはそれを振り切るように強い口調で続けます。
「1人悪事を働く者がいるだけで、多くの善良な者たちが苦しむことになる。それを止めることの出来る立場に居ながら、止めないのは悪でしか無い。私たちの役目は、真面目に実直に税を納める者たちを守ることであり、悪人を甘やかすことでは無いのです」
「だとしても少しやり過ぎのような気がするが」
リックのその言葉に、アークの目が獣のように鋭く光り、さっきよりも更に強い口調になります。
「悪人は隙あれば悪事を働くことが骨の髄まで染みこんでいるから悪人なのですよ。そこまでしなければ再犯を繰り返すからそうせざるを得ない。私たち帝国の中心にいる立場の者が悪を甘やかせば悪は助長し、帝国を腐敗さることに繋がるだけだ」




