リックとのこと・1
○●○1○●○
アークはランタナをオニキス宮殿の客室に監禁します。皇帝に会わせないためです。
皇帝を医者に診せ、薬物使用による衰弱と幻覚があるいう証言を得ると、マーガレットの元へと向かいます。
皇帝とランタナのことは薬物によるものだとマーガレットに説明をしたアークは、頬に涙の跡をつけ、精神的にボロボロのマーガレットを抱きしめ、皇帝は裏切っていないし、アーク自身もけしてマーガレットを裏切ることはないと言います。マーガレットは涙を流しながらアークの言葉を信じるのでした。
次いでアークが向かったのは、リックが住んでいるサファイア宮殿でした。皇帝がしばらくは療養で休むことになり、その間は皇太子であるリックに皇帝の代理を任せると発言した為、全ての権限を握ったリックに頼み事があったからです。
リックとまともに会話をするのは5歳のとき以来、13年ぶりのことでした。
本当は顔をつきあわすのも嫌ですが、そんなことを言っている場合ではありません。
アークが自分を訪ねてきたことを知ったリックは、驚きながらもそのことを嬉しく思いました。メイドたちには応接間に通して丁重にもてなすように言います。
応接間のソファーに座るアークは、紅茶も飲まずにリックを待っていました。リックが応接間に入るなりソファーから立ち上がり、辞儀をします。
「お久しぶりです。皇太子殿下。陛下の代理である殿下にお願いがあって参りました」
ゆっくり喋りたいリックはソファーに座るように言いますが、アークは立ったまま、ランタナの投獄の許可を得るために来たと言います。対してリックは、ジルバ王国との問題でもあるので、一旦保留にすると返しました。
すぐに立ち去ろうとするアークを呼び止めたリックは、今まで伝えたかったことを伝えるために、アークに向かって声を張ります。
「ずっと謝ろうと思っていた。きっと僕はアークに無神経なことをして、傷つけてしまったから……」
アークは背中越しに聞こえるリックの声に耳を澄ませていました。リックは続けます。
「僕はアークと仲良くしたいと思っている。アークは僕の大切な弟だ……」
切ない声を出すリックに、アークの心が揺れます。【いや、欺されるな】そう強く思うと、握りこぶしをつくり、リックの言葉を振り切るようにサファイア宮殿を後にしたのでした。




