魔王のこと・2
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目の前で奴隷商に家族を惨殺されたマーガレットの心は病んでいました。生きていること自体が苦しみでしかありません。そんなマーガレットに魔王は自らの苦しみを重ねていました。
居間にマーガレットを放置し、そこに寝泊まりさせますが、2日経っても何も口にしようとしないマーガレットは脱水で横たわっています。
魔王はマーガレットに手をかざし、水を飲まなければ殺すと脅しをかけます。しかしマーガレットは無反応です。
次にコップをマーガレットの口に押し込み、無理やり飲ませようとしますが、口から水がこぼれて床が濡れるだけでした。
考えた末、魔王は口移しで水を飲ませます。それでようやく水を飲んだのでした。
魔族は親が子に食事を与えるとき、自らが噛み砕いた食べ物を口移しで子に与えます。魔王もマーガレットに毎日口移しで食事を与えました。
そうこうしているうちに魔王は何となくマーガレットの側にいることに心地よさを覚え、居間に居座るようになります。そして生きることが苦しみでしかなかったはずなのに、苦しくなくなっていることに気付くのでした。マーガレットもまた、魔王が側に居ることで生きる気力を取り戻していました。




