皇帝のこと・5
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ニークは大人数で雑魚寝している応接間から出て、水をもらいにキッチンへと向かいます。その途中、廊下の窓から外を眺めるマーガレットを見つけました。一瞬夢でクラーケンが言っていたことを思い出しますが、もはやそんなことはどうでもいいほど、マーガレットと2人きりになれたことに下心を抱きます。
ゆっくりとマーガレットに歩み寄るニークは、ランタンの薄暗い灯りでマーガレットを照らし、ネグリジェの下に僅かに透けて見える身体のラインに視線をこらします。
ニークに気付いたマーガレットは彼に振り向きました。ニークは目隠しを取ったマーガレットの黒い瞳を確認するなり、想像した以上に美しく魅惑的であることに驚き、ますます抱きたいと思うようになります。
欲望を隠しながらマーガレットに話しかけます。
「眠れないのですか?」
マーガレットは少し驚いた表情でニークを見つめたのち「はい」と頷きました。
「父以外の方と喋るのは久しぶりです」
自らの長い黒髪を握りながら、頬を染め、嬉しそうに言います。
そのしぐさに愛らしさを感じながらもニークは首をかしげます。
「父以外……?夫とは喋らないのですか……?」
「……今日皆様に私を妻だと紹介した少年は、私の夫ではありません。父です」
話が呑み込めないニークは思わず聞き返します。
「……父……?貴方と変わらない年齢に見えましたが……?」
「魔族は成人以降歳をとらなくなります。ああ見えて一万年以上生きています」
「一万……?!」




