いがみ合っていた皇子がデレ始めた件について・2
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イベリス、アーク、シャルミン、ランタナの4人で暮らすことになって2日目の昼、アークは皇帝から謁見の間へ来るようにと呼び出しをくらいます。
アークはシャルミンを警戒して、廊下で待機しているイリアムを室内に呼び入れ、イベリスを守るようにと命じ、皇帝の元へと急ぎます。
アーク同様にイリアムも、大事な妹を狙うシャルミンを警戒し、敵意丸出しでシャルミンを睨みます。それに対してシャルミンはイリアムに笑顔を向けます。
「イリアム・マルタントル卿ですね。お噂はかねがね伺っています。国境付近で任務に就いていた頃から、その凜々しいお姿と素晴らしい剣術は、隣国である我が王国でも有名です」
友好的に褒められて、イリアムの警戒が緩みます。
「え?俺ってそんなに有名なのですか?」
「ええ。我が王国の女性たちの人気も高い。よかったらお話をお聞かせて頂けませんか?どうか、イベリスの隣にお掛けください」
女性の人気が高いという言葉にイリアムはすっかり気分を良くします。頭を掻きながら、「任務中ですし」と頬を染めてニタニタとするイリアムにシャルミンは「今はイベリスの兄上様としてここに居てください」とソファーに座るように促します。
ランタナが紅茶を入れてイベリスの隣席のテーブルに置きます。それを見たイリアムは、じゃぁ少しだけと照れながらイベリスの隣に腰を下ろし、ランタナが入れた睡眠薬入りの紅茶を飲みます。すると急にウトウトとし始め、眠ってしまいました。
イベリスは驚き、あきれます。
「もう、兄さま起きて!殿下たちに失礼でしょ!」
イリアムを揺すり起こそうとするイベリスにシャルミンが微笑みながら言います。
「構わないよ。お疲れなのでしょう。それより、これに見覚えはないかい?」
シャルミンがイベリスに差し出したのは、地球に居た時に種村さんにもらった青いガラス玉で出来たおもちゃのペンダントでした。
「これ!どうして……!?」
種村さんから願いが叶うと言われて渡されたペンダント。しかし本当はシャルミンの元へと導くためのメビウスの涙という魔石です。メビウスの涙に触れたイベリスは、瞬く間にルティアだったときの記憶を取り戻すのでした。




