表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/99

⑧イベリスとランタナ王女・7

○●○7○●○

 

 そのとき、ランタナが口に手を添えながら甘ったるい声を出した。

「アーク皇子殿下はイベリス妃殿下を心から愛してらっしゃるのですねぇ!?それは別れるのはお辛いですわよねぇ!」


 眉間にシワを寄せ、まるで演劇の役者のように大げさに喋る彼女は、一転して声のトーンを下げて真顔で続けた。


「けれども、わたくしたちも、戯れで政略結婚を申し出たのではございませんの。ですから何もせずに国に帰ることは出来ませんわ。どうでしょう?1度お互いを知るために4人で一緒に暮らしてみませんか?それでもアーク皇子殿下がわたくしよりもイベリス妃殿下を選ぶとおっしゃるのでしたら、大人しく引き下がりましょう」


 背筋が凍り付いた。そんなことをしたら、アークがランタナに惹かれてしまい、1度目の人生のようにランタナを選ぶ可能性が出て来てしまう。


 アークはさっきよりも更に強い口調で答えた。

「お断りします。私がイベリス以外を選ぶことはありません。互いに時間と労力の無駄になるだけです」


 アーク……

 私の心の中は温かいもので満たされ、視界が涙で揺らいだ。


 しかしすぐに皇帝の怒声が飛んだ。

「アーク……!私の一存で今すぐにでも無理やりお前とイベリスを引き離し、政略結婚を進めることは出来るんだぞ!?お前のワガママが全て通ると思うな……!!」


 アークの眉がピクリと動いた。かなり怒りをため込んでいるのが伝わってくる。


 鼻にかけた甘ったるい声に戻ったランタナは、微笑みながらゆっくりとした口調で話した。

「1週間で構いませんの。それで皇子殿下のお気持ちが変わらぬようでしたら、潔く諦めましょう」


 アークはしばし沈黙した後、小さく吐息をつくと、あきらめたように言った。

「ならばこちらからも条件を出させて頂きたい。1週間後、私の気持ちが変わらなかったとしても、同盟は結んでもらいます」

 

「分かりました♪」

 満面の笑みで首を横に傾けて答えるランタナの、鼻にかけた声が室内に響いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ