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⑦アークのトラウマ・6

○●○6○●○


 しばらくそうした後、落ち着き始めた俺と母さんは、部屋の真ん中にある大きなソファーに腰掛けていた。


「アークの結婚式のときね、皇帝陛下に無理を言って部屋から出してもらってね、馬車の中からあなたたちの晴れ姿を見てたのよ。アーク、見ないうちに随分大きくなっててビックリしたわ。でも嬉しかった。お嫁さん、綺麗な方ね」


 笑顔で紅茶を入れながらそう言う母さんの目はまだ涙で潤んでいた。


「……母さんは、こんなところに閉じ込められて嫌じゃないの……?」


 その質問に諦めたような笑顔になった。

「……母さんは追われてる身だから、仕方ないのよ……」


「追われてるって……誰に?」


「母さんのお父さま……あなたのお爺さまによ……」


「……何故追われてるの……?」


 しばし思い詰めた顔をした後、静かに話始めた。


「父とは2人暮らしだったのだけどね、私が亡き母に似てるから母の代わりのように思っていたみたいで、誰とも恋愛しないようにいつも監視されていたの……一緒にいると息苦しかった。それを知って連れ出してくれたのが皇帝陛下……あなたのお父上よ」


「皇帝が……?」

 さらって来たと言っても、母さんを救うためだったのか。それを知った俺は心のどこかで胸をなで下ろしていた。


 母さんは続けた。

「でも父は執着がすごい人で、今でも私を探しているのよ」


「何故分かるの?」


「……たまにこの部屋から出ると、私を探す父の魔力を感じるからよ……」


「魔力……?」

 そんなものこの世に存在するのか……?


「そう、魔力……。手紙にもまだ書いてなかったことだけど、そのうち言うつもりだったの……どうして黒髪が珍しいのか、どうして黒髪が不吉だと言われるのか、知ってるかしら?」


 不吉とされているのは単純に黒いという見た目で言われている訳ではないのか?

「……分からない……」


「そうよね。皆不吉だと口で言いながらもその理由は分かってないものね……。本当の理由は魔族と人間の間に生まれた子が黒髪になるからなのよ。けれども、魔族なんて架空の生き物だっていうことになっているでしょ?だから誰も理由が分からないの。分からなくても何となくで差別をする。人間って変な生き物よね」


 魔族が存在するなど、にわかには信じがたいが、母さんがウソをつくとは思えない。

「……じゃぁ、母さんと俺は……」


「……ええ。私の父は魔王で、母は人間だった。そしてアーク、あなたは魔王の孫になるのよ」


「魔王……?」

 魔族が存在するなら魔王も存在するのか……。


「ええ。アークは普通の子よりも飛び抜けて身体能力に優れていたり、記憶力が良かったりするって陛下から聞いているわ。それは魔王の血が流れている証なのよ。今まで魔力を使ったことは無いかしら?」


「いや……」


「そう。あなたもきっかけさえあれば魔力が覚醒するはずよ」


 魔力……?俺に……?色々話が唐突すぎて頭が追いつかなかった。

 しばし沈黙の後母さんは続けて話した。


「……この部屋、綺麗でしょ?ここはオーロラ石という石でつくられていて、外部からの魔力を遮断して、魔力の攻撃にも耐えることができるのよ。世界でとても希少な石なのに、陛下は世界中から集めてこの部屋をつくってくださったの」


 微笑を浮かべる母さんは何だか一層綺麗に見えた。


「皇帝のこと……愛しているの……?」


「……ええ」瞳を輝かせた母さんは目を細めて頷き「だからここに居るのよ」と静かに言った。

 

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