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⑦アークのトラウマ・2

○●○2○●○


 俺は未だに夢をみる。

 冷たくて果てしない闇の中を、何かに追われてひたすら走っている夢を。不意にトゲまみれのツルが足に絡みつき、俺は転びそうになる身体を食いとどまらせた。ツルはどんどん伸びて俺の身体をがんじがらめにする。トゲで血まみれの俺の前に黒い手が差し伸べられた。


 誰だ?


 見上げると、ブロンドに青い目をしたリックが微笑みながら立っている。


 気付くと暗闇は無くなり、剣術の稽古場に居た。そうだ。覚えている。俺とリックは幼い頃よく一緒に剣術の稽古をしていた。


 4歳の俺と6歳のリックの体格差は大きかった。けれどもリックの動きは俺の目には遅く映り、リックに勝つのはたやすいことだった。


「そこまで!」


 転んだリックに木刀を向ける俺に教師が慌てて止めに入る。


「皇太子殿下。お怪我はございませんか?」


 その場にいる全ての使用人がリックに駆け寄り、大げさに心配した。剣技の練習とはこういうものだろ?まるで俺が悪者のような気分になる。


 ある日俺は、悪者になることにうんざりして、わざと転び、リックに負けたフリをした。すると、その場に居た使用人たちと教師までもがリックに大きな拍手を送った。


「素晴らしいです!皇太子殿下!」

「やはり剣技の才能がございます!」


 リックは「たまたまだから」などと言っていたが、それすら『謙遜』ということになり、リックを持ち上げる材料となった。

 当時俺に付いていた従者ですらリックに拍手を送り、地面に伏せる俺にかまう者は居なかった。


 なんだよ、これ?


 惨めな気持ちになりながら自分で立ち上がった俺は、拍手が鳴り響く稽古場に背を向け、歩き始めていた。クソ。ふざけんな。どの道俺は悪者ってことか。気付けば涙がこぼれ落ちていた。


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