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⑥イベリスの失踪計画・2

○●○2○●○


 木造2階建てのそのパン屋さんは、道も建物もレンガで出来た平民街では古い印象で少し浮いていた。


 ドアを開けると、カランコロンとベルの音と共に美味しそうなパンの香りが私たちを出迎えた。店内は客でごった返している。


「いらっしゃい!」

 20歳のライムさんが沢山のお客さんの接客をしながら私たちに笑顔を向けた。彼女は私と目が合うなり「ああ、待ってたよ!」と嬉しそうに声を出し、栗色のポニーテールを揺らしながらカウンターの出入り口を指さした。

「じゃぁ、早速そっちからカウンターの中入って来て!」

 

「え?」

 まだ働くって言ってないのに……カウンターに入ってどうするんだろ?戸惑いながらも言われた通りカウンターに入ろうとしたとき、奥の部屋から赤ちゃんの泣き声が響いた。


「あ――、もう起きちゃったか。ちょっと見てくるからあとお願いね」

「あ、はい……ッて、え?!」


 あとお願いって、いきなり仕事するってこと?!説明も無しに?!何をどうすれば……。戸惑っていると、お客さんが話しかけてきた。


「ねぇ、キミ、そこのバゲット、5つもらえる?」

「はいっ!?」


 振り向くと、ストロベリーブロンドに翡翠色の瞳をした綺麗な男性が立っていた。私と同じか少し年上くらいだろうか。お客さんが指さすカウンターの後ろにはバゲットが裸で並んでいる。


「少々お待ちください!」


 急いでバゲットの前に立つなり考えた。素手でつかんじゃ駄目だろうし……。視線を下ろすと、おそらくバゲット用と思われる大きな紙袋が棚に寝かせて置いてあった。多分これに入れるのね。


 紙袋を1枚取り出すと、棚に寝ているバゲットを紙袋ですくうように入れてカウンターに置いた。


「いくら?」

「あ、えっと、750チャランです!」


 男性は1000チャランを出した。私は慌ててカウンター内に置いてある木箱に視線を向けた。中にはお金が雑に入れられている。そこから250チャランを取り出した。


 ていうか、この帝国は計算が苦手な女性が多いというのに、いきなりレジを任せて行くなんて。


 そんなことを思いながら、おつりを握った手を差し出した。すると男性が私の手を包むように握り、綺麗な顔で私を見つめながら微笑んだ。え?セクハラ?そう思った瞬間誰かの手が男性の手を弾き飛ばした。振り向くと怒った顔のアークがいた。


「俺の妻だ。気安く触るな」

「これは失礼」


 口では謝りながらも微笑を浮かべたまま平然としている男性は私を見ながら「近いうちにまた会いましょう」と言い残し、店を出て行った。


 アークはワナワナと怒りながら「知り合いか?!」などと聞いてきたけど、すぐにお客さんが来たので「違う」とだけ答えて仕事をした。なんだろ?あの人。この店の常連さんかな?


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