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⑤戸惑うイベリス・2

○●○2○●○

 

 スイーツ店を出た後ブティックに馬車を停めたアークは「欲しいものを買ってやる。何でも言え」と私を店内へエスコートした。護衛騎士である兄イリアムももちろん後からついてくる。


 本当に最近のアークはまるで別人のようだ。どうしたんだろう?もしかしたら、私がお母さんからの手紙とマフラーを取り戻したから、それに対してのお礼なのかも知れない。

 どちらにしてもアークが心を開いてくれたのは嬉しいし、厚意であることに変わりないので、否定せずに受け取ることにした。


「じゃぁ、アークの好みのコーデを試着してみよっかな」

 そうアークに微笑みかけると、頬を赤く染めたアークは私から顔をそらして「わかった」と小声で答えた。何だかんだでまだ12歳の男の子だから女の子の服選ぶのは恥ずかしかったのかも。照れちゃって可愛いなぁ。


 アークは紺やベージュの上品で落ち着きのあるドレスばかりを選んでいた。どうやら大人っぽいのが好きらしい。センスいいかも。


 そしてイリアムも何やら沢山買い込んでいた。それを見てようやくイリアムの性癖を思い出した私は焦りながらも控え目な声で彼に話しかけた。

「兄さま……何を買っているの……?」


 イリアムはご機嫌に「ん?」と返事をした後「僕もイベリスにドレスを買ったんだ」と悪びれる様子もなく答えた。


 アークがこちらを見ている。ヤバい。イリアムは今護衛騎士の勤務中だし、それを差し引いても、今私へのプレゼントを買うという行為は、アークに対抗していると捉えられても仕方がないことなのだ。


 イリアムは私たち妹に何かをしたくて仕方が無い性癖を持っている。アークが私を待遇している姿を1日見続けて我慢の限界がきたのだろう。


 私は小声で注意をした。

「ありがとう。でも、今は兄さま勤務中だし、プレゼントもこの前もらったばかりだし、今日は大丈夫よ」


 イリアムは悪びれる様子もなく笑顔で答える。

「心配するな。護衛は怠らずに購入した。イベリスに似合いそうなものばかりだから、遠慮はいらない。馬車に積んでおくからな」

 そう言いながら両手一杯に抱えた私へのプレゼントを馬車に積み込んだ。


 恐る恐るアークに視線をやると、久しぶりに見る不機嫌な表情をしていた。

「イリアム。イベリスの物は俺が買うからお前は黙って見てろ」

 明らかに怒りを抑えながら喋っているのが分かる。


 対してイリアムは相変わらずご機嫌に答えた。

「大丈夫です、殿下。イベリスは僕の妹ですから、これくらい買ってやるのは当然です」


 ああ、ダメだ。イリアムって時々空気読めないのよね……。


 アークはイリアムに対抗するかのように更に私のドレスや装飾品を選んだ。すると、イリアムも呑気に、やっぱりあれもこれもと私へのプレゼントを買い足していく。


「イリアム。買わなくてもいいと言ってるだろ」

「大丈夫ですよ、殿下♪」


 2人は火花を散らしているように見えた。


「イベリス、この首飾りはどうだ?お前に似合うと思うが」

「イベリス、こんなの好きだよね?兄さまが買ってあげるよ」


 私はオロオロとした。どうすればいいの?これ。


「イベリス、お前には花の髪飾りが似合う。これを付けてみろ」

「イベリス、チューリップ帽好きだよね。兄さまが買ってあげる」


 結局2人が買い込んだプレゼントは馬車に入りきらない量となり、アークはイリアムの買ったプレゼントを馬車から出すように命令をした。


「自分で買った分は自分で持って来い」

 怒りの炎をメラメラと燃やした目でイリアムを睨んだアークは、私をエスコートしながら馬車に乗り込み、出発の指示を出した。イリアムとプレゼントの山は街の片隅に置いてきぼりである。どんどん小さくなっていくイリアムを私は可哀想に思いながらも、仕方が無いような気もしつつ、複雑な気持ちで馬車に揺られて帰路についた。


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