文学少女の夢を見た
「私、文学少女!本を読むのが趣味!特にファンタジーが大好き!」
と、23歳の私がこんな自己紹介をしてしまっては大変に痛い子かもしれないけれど、それでも私が15歳の時であればきっとギリギリセーフだったはず。
それに、嘘はついていない。本を読むのは好きだし、その中でもファンタジーが好きなのはまごう事なき事実。けれど、本を読むのを趣味にした理由があることは、語らぬ事実だ。
私は文学少女が好きだった。というより、ある時から同級生になった文学少女に憧れていた。彼女の本を読む姿は孤高で、自分の世界を守っていて。
一度も話したことはなかったけれど、すごくかっこいいな、と中学生の頃の私は思ったんだ。
当時の私は、まるで本を読む生活とは程遠く、なんとなく部活に惰性で行って、家に帰れば友達と意味もないメールをしていて。
そんな私が急に本を読めるはずもなくて。
それからというもの、簡単な本から慣らしていって、ようやく本を読むのが楽しくなってきた頃には、私は少女と呼ばれるにはもうそろそろ無理のある、20代に突入していた。
そんな折、同窓会の誘いがあった。あの文学少女に会えるかもしれない、と私は喜び勇んで向かったが、そこで会えたのは本当に普通の女の人で。
話を聞けば、教室に居場所がなかったから仕方なく本を読んでいたのだと言っていて。
ああ、孤高な彼女は単に孤独なだけだったのだと知って。
もう私は文学少女に夢を見られない。文学少女の夢は覚めたんだな、と。そう悟った。
それから数年して。私は本を読み続けていた。長らく読んでいれば愛着も湧くものだね。
あるいは、そう。
私の文学少女の夢は、覚めたのではなくて叶ったのかな。