in 馬車
「俺の名前は理音だ」
「リオン殿か。難しい響きだな。」
「呼びにくいならリオでもなんでもご自由に。でも俺が分からないような呼び掛けはやめてくれ」
「了解した。ならリオン殿と呼ばせて頂こう」
「なら俺はリオンでいいか」
俺はさっき助けた近衛兵長と魔法師団長との挨拶をしている。
あの後起きた兵士達の記憶を消したせいで俺が敵扱いされたので、ルイスが説明しようとしていたがその前に俺が魔法で記憶を思い出させた。
名前としては
【リブート・リメンバー】
みたいなのではないか?
「私の名前はメディアス。近衛兵の中の魔法師団長を務めている」
「俺の名前はレイガ。近衛兵の近衛兵長をやってる」
「俺の名前は理音。一応Sランク冒険者だ」
「一応?どういう意味だ?なりたてってことか?」
「いや、別意味は無い。ただ、傲慢なのは良くないと思ってな」
「あ〜、確かにな。それでもリオンは俺達が束になっても勝てなかった奴らを1人で倒したんだ。誇ってもいいんじゃないか?」
「私もそう思う。リオン殿は私達を救ってくれた自分で言うのもなんだが、私達はこの王国の精鋭中の精鋭。そんな私達が倒せなかった敵を君が倒したんだ。それは誇っていい事だよ」
「へ〜」
「それに、お前は陛下を守った。正直それだけでも十分凄いけどな。」
「そんなもんかぁ」
「ま、自覚がない分なら大丈夫だろ」
そう言って俺らは馬車に乗る
「······リオンはSランク冒険者なんて凄い」
「いや、そんなことは無い。レナだって才能はある。努力が足りないだけだ」
「······ん。それでも19歳でSランクは凄い。冒険者登録できるのは最低で15歳。Cランクに上がるだけでも普通は5年はかかる。それを4年でSランクは異常」
「それは、ほめられてるの、かな?」
「そうよ。褒めてるのよ。別に私はすごいなんて思わないけどね!」
「それぐらい知ってるよ。」
「っ!あなたそういうところがダメなのよ」
俺は今馬車の中でルイスの双子の妹のレナと姉のマナと話している。ルイスの馬車は見かけによらず広く、ルイスいわく古代の魔宝具らしい。
魔宝具は古代の遺跡やダンジョンから取れるらしい。古代文明は今よりも高い技術力を持っていたが過ぎた力は争いをうみ、結果的にどちらも滅びたらしい。そして別の大陸から来た人達がまた新しく国を作って文明を作ったそうだ
そして、魔道具は今の技術で作れる。いわば魔宝具の劣化版だ。魔道具ではランプやコンロが主だ。
一方魔法具だとテントや馬車、そして武器などがある。
魔道具の武器はなく、魔法を込めて作られた魔法剣なら存在する。
ちなみに俺の武器全魔刀は神級だが神の武器ではなく、それぐらい強いという意味だ。それに入手場所は最前線のダンジョン。【終わりの塔】で200階目をクリアした時にボスドロップとして手に入れた現段階最強武器だ。種類で言うと刀という扱いだが別の使い方もある。まぁそんな使い方をするな のは俺だけだろうが。
「聞いてるの!」
「ん?ああ、ごめん考え事してた。で、なんだっけ?」
「まったく。それでお父様があなたを城に招待したいって言ってるの」
「??そのことなら俺は良いって言わなかったか?」
「そうだけど、他にも理由があって」
「なんだ?面倒ごとは勘弁だぞ」
「明日隣の友好国から皇女様が留学に来るの」
「そうか。接待大変そうだな。頑張れ!」
「その時あなたに皇女様の護衛を····」
「さてと!外で運動でもしてくるかな!」
俺は不穏な空気を天性の勘で感じ取り、話を無理やりにでもそらそうとするが
「あなたに皇女様の護衛をたのみたいの!!」
俺の作戦を力業で突破してきた
「なんで俺なんだよ。皇女様なら親衛隊ぐらいいるだろ」
「それでもこちらとしては誠意を見せないといけないのよ」
「なら、メディアスか、レイガを連れてけば」
「圧倒的な実力不足」
「いっそ近衛全員で行くのは」
「出費がかかりすぎる」
「······」
ことごとく正論で返される19歳。そして全てを正論で返す16歳。
「····なんで冒険者なんだよ。誠意を見せるなら国の騎士だろ」
「うちじゃ圧倒的な実力不足なのよ。帝国は実力至上主義。当然選ばれるのも実力がある人。それに比べてうちは実力が足りないもの。近衛兵は別として、兵士や騎士は差がありすぎる。もし戦争とかになったら敗戦どころか植民地にされるわ」
「自分の国にそこまで言うか?」
「事実だものしょうがないわ。それで話を戻すと帝国にあなたをアピールしたいの」
「なんで?」
「利用する形にはなるけど、あなたがいることで相手に攻めにくくさせるのよ」
「それだけならいいけど·····」
「······ダメ」
「「え??」」
俺たちはまさかの言葉に耳を疑った
「······リオンは私の。レイにも、ナナにも、勿論マナにも、誰にもあげない」
「あのぉ。俺は俺のものなんだけど」
「そうよ!それになんで私まで!私は関係ないわよ!」
「······今はそうでも、いつかは変わるかもしれない」
「レナ。俺は俺のもので誰のものでもない。勿論レナでも、マナでもないぞ」
「······今はそれでいい。でもいつかは···」
どうやらレナは、独占欲が強いようだ
「それでマナ。さっきの件だが俺はいいよ」
「ほ、本当?」
「ああ、しかし条件な」
「条件···」
「そんなに重いことじゃない。
皇女お迎え中の出費の負担
成功報酬の相場より増加
最後に国王の後ろ盾」
「????」
「言葉道理の意味だ。最初のは宿代やポーションの代金とかだな。2個目は金銭。3つ目は国王お抱えの冒険者ってことだ」
「!!!!!」
「そりゃ驚くよな。本来そっちから条件を提示するのにな。ま、今回は目的が合致したとでも思ってくれ」
「本当にいいの?」
「ああ、勿論だ。ほらルイスに報告してこい」
「うん!!お父様ァ!!」
そう言って部屋を出ていくマナの姿が異様に綺麗でしばらく見つめたままだった。
その視線に気づいたレナが俺の腿をつねってきたが、概ね平和な時間が流れた