出会い
「まあ、落ち着け。若者が先急いでもどうにもならんぞ?」
「········あんた誰だ?」
理音はこの人が誰だか全くわからなかった。質の良さそうな服を着ているが軽鎧もまとっており、騎士とも金持ちとも考えられる服装だ。それに歳も歳で20代後半から30代前半と考えられる。それで考えると騎士だと考えられるが、さっきの戦いでこの男を見てないのだ。騎士が仕事をサボるとなると一大事になる。俺が来なかったら全滅も有り得てた。そんな中仕事をしないのはおかしい。よってきひでもない。
俺の考えが頭の中をぐるぐる回る中、男はまた話か始める
「我のことを知らんのか?ここら辺じゃ結構有名だと思ってたんだが」
「········有名だと?てことは騎士ではなく貴族か豪商かだな」
「我は騎士でも豪商でもなく貴族だぞ」
「へ〜そうなのか。じゃ!」
そう言って別れようとするが
「だから待てと言っておろう」
俺の手を掴んでくる。
「······何?いい加減鬱陶しいんだけど」
「世は広いと言っても平民が貴族にそんな言葉遣いできるのはお主だけだな」
「無駄話するんだったらそこの嬢さんと護衛達にしてくれない?」
「いや、しっかりとした話もある。お主は我ら貴族の命を救ってくれた。だからそれは家に呼んでもてなさないといけないと法で決まっておるのだ」
「俺はそのことについて目を瞑るから貴族サマもこのことをなかったことにすればいい。貴族サマだってお金をそんなに使いたくないだろ?」
「お金のことは気にしなくていい。それに貴族社会だと隠しても隠せないんよ。何より法を制定した我が率先して法を犯す訳にはいかんよ」
「は?」
俺は言葉を疑った。法を制定できるのは日本だと法務省や総理大臣ぐらいではないか?だとしたらこの貴族は総理···はこの世界にいないと思う。SMGだったら国王や公王、皇帝ぐらいだった。転生神リリアによるとここはミルド王国なのでトップは国王になる。
「もしかして、万が1。いや億が1の確率の話なんだが、もしかして国王サマなのか?」
「やっぱり知っておるではないか。我の名前はルイス・フォン・ミルド。99代目の国王だ」
「俺の名前は理音。冒険者だ」
「ふむ、リオンか。なかなか奇怪な名前だな」
「バカにしてんのか?」
「いや、そんなことは無い。名前は親がつけた大切な名前だからな。それを馬鹿にするのはお主、リオンだけではなくリオンの親も冒涜しているからな。同じ親だからこそ、そんなことは許せんよ」
「あっそ。それで俺は何すればいいんだ?」
「リオンには我らよ家まで着いてきて欲しい」
「俺は護衛しなくていいのか?」
「出来れば、いや、しなくていい。リオンは違うと思うが依頼の後に報酬を釣り上げる奴がいるからな」
「なら今決めよう。報酬は1ヶ月分の宿代の肩代わりな」
「んん?」
「でも、部屋に風呂と、台所にベッドは必須な」
「んんん?本当にその程度でいいのか?」
「俺はこの国の地理にも、ましてや街にも詳しくないからな。ただ守るだけで教えてくれるんだろ?しかも宿代はそっち持ちだし」
「んんん」
ルイスは迷っていた。Sランク冒険者の護衛がこの程度で得られるなら安いが、後で対価を要求してきたら。と考えると怖くて頼れない。
しかしその考えが理解出来たのか
「他の雑魚《Sランク》は知らんが少なくとも俺はそんな事しない。そこまで信頼できないなら誓約書でも書くか?もし誓約を破ったら死ぬ効果のやつもあるが」
「い、いやそこまでしなくていい。分かった。リオンのことを信じるとしよう」
「OK。なら貴族サマ?国王サマ?も約束破んなよ」
「ルイスで構わんよ。呼びにくかったら国王でも陛下でもなんでもいいよ。」
「ならルイスでいいな。ほら早く行くぞ」
「いや待ってくれ。死んだ者の埋葬と怪我した者の治療が終わっておらん」
「そんなことなら俺がやっておく」
「ん?」
理音は考える。全てを回復、いや復活させる魔法を
考えがまとまり名前も決まった
「【カム・ディス・ワールド】」
俺が唱えると、今までの倍以上の魔力が取られ、倒れた騎士や、既に事切れた騎士、ルイスの娘さん達もを光が包み込んだ。
「なっ!!」
ルイスが驚いている。が、今はそれどころではない俺はこの光景に見入っていた。人の傷が逆再生しているような、そんな美しい光景に見入っていた
「···········」
「リオン!何が起こっているのだ!説明せい」
「······ん?ああこれは俺の魔法。秘密厳守な。ちなみに回復された人はこのことを忘れているし、この場には俺らしかいない。もしこのことがバレたら情報源はルイスとなるからな。気を付けろよ」
「う、うむ。わ、分かった」
「なら早く行こう」