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「 雪 月 歌 」

作者: 寒がり猫

この物語を読んで少しでも心に残ってくれたら嬉しいです。またコメントをもらえると励みになります。

 満月の見える冬の夜空に白い雪が、ひとりの女性の髪に触れては儚く消えていく…

女性は手を広げ儚く消える雪を見つめて、小さく溜め息をこぼした。

そして、雪空を見上げ静かに歌を唄う…

「ふわふわと儚く散りゆくモノたちよ…私の願いを聞いて欲しい」

「すぐに消えてしまうなら、私の夢も消して欲しい…」

「辛いばかりのこの夢を、静かに静かに消して欲しい…」

「いつか叶う夢ならば、今すぐ叶えて欲しいから…」

「決して叶わぬ夢ならば、静かに静かに消えてゆけ…」

「夢と一緒に消えてゆけ…」

           

「 雪 月 歌 」 


彼女は橋下にある少し古びた劇場の中で、今日も発声の練習をしている。

「私は、君にとってのなんなのだ。」

「この私が君に寄せているこの思いは、いつになったら届くのだ。」

「私は君が愛おしい…。」

「あの日、君に触れた時から私の心は君に奪われ続けている…。」

はぁ…ダメだな…どうしても気持ちがわからない。

彼女は劇団の主人公役に抜擢され、毎日役の練習をしていた。

彼女の演ずる役は男性役で、好きになった人へ向けて、叶わぬ恋を一生懸命に叫び続ける、儚く切ない役柄だった。彼女自身が今まで恋愛とは無縁だったためか、主人公の気持ちが分からず悩みに更けていた。

「彼の気持ちはわからないけどせめて、練習だけはしないと…」

そう思い毎日必死に練習をしていた。

 小さい頃から両親に劇団やオペラなど、子供にはわからないようなものを見せられて育った彼女は、他者よりも演技が上手で、小学校や中学校、高校、大学とずっと演劇をやってきた。高校までは主人公としてやり続けていたが、大学では男性が主人公の物語をしたため彼女は主人公ではなくヒロインとして採用された。

大学での演目は「ロミオとジュリエット」誰もが名前だけは知ってる名作で、観客動員数は大学史上最高人数になった。その影響は彼女の今までの演技力の凄さと、主人公役の男の子が大学で一番モテていた人だったからだ。女性陣は主人公の男の子を見に殺到し、男性陣はヒロインの彼女を見に殺到。会場が賑わい、暑苦しい状態になったところで、開幕のベルが鳴り演劇が始まる。開幕まで暑苦しかった会場はいつの間にか、ふたりが織り成すロマンチックな世界に引き寄せられ、いつしか観客は心酔していく。2時間ほどの演劇が終わり幕が降りると観客たちは会場全体に響き渡るほどの拍手と満足したような笑顔が溢れていた。そして一人また一人と静かに会場を後にしていく。

「最高の演劇だった」そう言いながら主人公役の男の子は彼女に手を差し伸べ握手を促す。彼女はその手を握り、「私も楽しくできました。きっとロミオの気持ちを理解してあなたが演じてくれたから、この演劇は成功したのだと思います。」

「私にはジュリエットの気持ちが最後までわからなかった…」

「本当にごめんね…あなたのロミオの言葉に私は答えられなかった」

演劇部のみんながそんなことないよと一斉に言う。

主人公の役の彼が、「君がヒロインだったからこそみんなを魅了した」それは変わらない事実だよ。本当にありがとう。

遠い過去の記憶…すごく嬉しかった記憶。私がもっと演劇をしたい、そう思えた瞬間の記憶。発声練習しながら不意に涙が溢れた…。

今の私は…何を頑張ってるんだろう。

「いつか劇団でトップ女優になるね」それが大学時代にみんなに言った彼女の夢だった。自分がみんなの前で言ったことを思い出し涙を拭きまた練習を始める。

「私は、君にとってのなんなのだ。」

「この私が君に寄せているこの思いは、いつになったら届くのだ」

「私は君が愛おしい…」

「あの日、君に触れた時から私の心は君に奪われ続けている…」

………

一ヶ月ほど過ぎた頃、彼女に大学時代の仲間から電話が来る。

「りいちゃん?元気してる?最近の演劇の調子はどう?」

「私ね今りいちゃんの劇場近くにいるんだ。」

「よかったらお昼一緒にしよう?」

「話したいこととかもいっぱいあるし。」

そう言って通話を切った彼女は、大学時代の演劇部のメンバーでいつも明るく接してくれる子だった。

辛い時や、悲しいとき、嬉しい時など、ずっと彼女のそばにいてくれて話を聞いててくれた、すごく優しい子。りいにとってはとても大切な友人で今も大切と思っている人だった。

「久しぶりー。少し痩せた?でも相変わらず綺麗だね」友人は昔と変わらず、明るい笑顔で接してくれた。

りいはそんな彼女をみて嬉しくなって今の悩みや演劇をどうするかなどたくさん話した。ランチを楽しみながら笑って話している時に、彼女はりいに好きな人できた?そう聞いた。「できないよ…今も。気になる人ができない。言い寄ってくる人はいっぱいいるけどね…」

彼女は笑いながら「昔と同じだね。」そう言った。りいちゃんの心を奪う人はきっとかなりロマンチックな人かな?だってりいちゃん顔や声がどんなに良くてもなびかないじゃん。大学の時の彼も本当はりいちゃんを好きだったんだよ?知ってた?彼女の話にびっくりしながら話を聞いていた。そして彼女は言った。その彼はね、大学卒業後は私と付き合ってくれて、今度結婚するんだよ。だからりいには報告したいなって思って今日連絡したの。りいとたくさん話せて良かったよ。あまり悩み過ぎず演劇頑張ってね。私も、彼も応援してるから。

彼女の言葉にりいは嬉しくなり胸にこみ上げるものがあった。私ね。演劇やめようかなって弱気になってたけど、今日お話できてすっきりしたよ。まだ役の気持ちはわからないけど頑張ってみようかなって思い返したよ。本当にありがとうね。

その後ふたりは別れ、りいは劇場の方へ向かう。劇場近くの川辺で子供達と一人の男性が笑っていた。その男性は目が見えないのか、白い杖を脇に置き子供達と仲良く話していた。数人の子供たちが「ねぇねぇあの話またしてよ」「あの話してる時、劇みたいで楽しい」そう言っていた。

男性は笑いながら「わかったよ。少し待って。」そう言って大きく息を吸う。

「私は、君にとってのなんなのだ。」

「この私が君に寄せているこの思いは、いつになったら届くのだ」

「私は君が愛おしい…」

「あの日、君に触れた時から私の心は君に奪われ続けている…」

………

りいは驚いた。自分が今やっている演劇の話と同じセリフを盲目の男性は演じている。男性は見るものを虜にするほどの演技力だった。たった数行のセリフなのに主人公の気持ちを理解し、本当にその場にいる想い人に伝えるように淡く切なく届かない想いを話している。

20分ほど男性が演じ、「今日はここまで…」と言って終わる。子供達や、いつの間にか聞き入っていた人達から拍手が沸いた。りいも感動し拍手をした。そして子供達が居なくなると彼のそばに行き声をかけた。

「あの、少しよろしいですか?」

りいの急な声がけに盲目の彼は一瞬固まり、「劇団の方ですよね。今私が演じた主人公の役をやられている女性の方。名前は存じませんが、あなたの役の真似をしてすみません。」そう言って声のする方に頭を下げる。私の名前はりいと言います。あなたが演じていた役はまだ発表もされてないものですが、あなたはどこで知ったのですか?りいがそう聞くと恥ずかしい話ですが、あなたが劇場で練習をしている時に私は劇場下の川で仕事をしていました。窓を開けたまま練習されていたのか、あなたの声が聞こえまして、その声に聞き惚れてしまい何度も何度も劇場下に行きあなたの声を聞いていました。そのうちにセリフを覚えてしまって…。子供たちに聞かせてみたら思いのほか気に入られてしまいまして。

彼は恥ずかしい気持ちと申し訳ない気持ちから、何度も頭を下げ話していた。

そんな彼に、でも私はこの主人公の気持ちがわからないんです。誰かを好きになって恋焦がれる感じが私にはわかりません。あなたは主人公の気持ちをどのように感じていたのですか??凄く切なく感じてしまい、あなたの演じる世界に引き込まれてしまう…そんな感覚になりました。

彼は頭を上げ、深く息を吸うと話し始めた。「私がその主人公に似た気持ちを持っていたからかな…。川であなたの声を聞き、好意を持ってしまった。そして実際に話してみたい。そんな風に思いました。でも、あなたを見ることができない今の私は、どこに行けば会えるのかもわからない。そんな思いが切なく感じさせたのだと思います」。彼はそう言って少し顔を赤くした。今日はあなたと話せて良かったです。私はもうすぐこの目の手術で海外に行くんですよ。今の日本ではなかなか症例のないものなので知人や担当医に勧められて受けてみようと思いまして。海外に行く前にあなたと…いや、りいさんと話せて良かった。彼は深々と頭を下げて杖を持つ。2歩ほど歩き振り返り、りいの方を向く。

「りいさんの演劇が好きです。りいさんの声が好きです。きっと私以外にもりいさんを好きになり、魅了される人がたくさん出てきます。だから、りいさんの演劇は成功しますよ。いつか…自分の目で演劇を見に行きますね。」彼は再び前を向き静かに歩き始める。

今出会ったばかりの彼にりいの心が動揺した。今までに言われた「好き」という言葉の中で一度も反応しなかった心が、何故か彼の「好き」という言葉に反応し胸を締め付けてくる。自分の演劇を見てもらいたい。もっと彼の声を聴いていたい。いろんな思いが混ざり合っていた。

「いつ出発されるのですか…?」

「よかったらまたお話したいのですが…。」

りいはいつの間にか彼を追いかけ聞いた。聞かずにはいられなかった。彼は立ち止まり、「こんな私とまた話をしてくれるのですか?」

「嬉しいです。出発は今日から5日後です。」

「今日は手続きとか、一緒に行ってくれる人と打ち合わせがあるため、もう戻ります。明日なら時間が空いてるのでまたここに来ます。」

それでは、また…彼は静かに歩き始めた。りいは盲目の彼にすでに恋をしていた。少しずつ小さくなる彼の姿を見つめ胸の痛みが激しくなるのを感じていた。彼の姿が見えなくなると、りいは小走りに劇場に戻った。そして再度練習を始めた。今までは感じたことのない、もうすぐ会えなくなる人への気持ち。自分のやっている演劇を見て欲しいと思う気持ち。色々と渦巻く自分の気持ちを乗せた。練習の途中から監督が見に来ていた。監督が客席に座っていても気付かないほどりいは集中し演じていた。監督はりいの演じ方が変わったことに驚き、主人公役変更と書かれた用紙をその場で握りつぶし、ずっと聞いていた。練習が終わり一息つくとパチパチと監督から拍手が鳴る。そこで初めてりいは監督がいたことに気づいた。監督は「凄く良くなった。今までは気持ちが伝わってこなかったが、今日の君は素敵だった。」と驚いていた。りいは監督に深々と頭を下げ、今まで悩んでいましたがやっと彼の気持ちを理解することができました。監督…改めてお願いします。どうか私に彼の、主人公の役をさせてください。りいの言葉に監督は頷きながら、君を選んでよかった。そう言って劇場を後にした。りいは「ありがとうございます。精一杯頑張らせてもらいます」そう言ってまた頭を下げた。そしてまた練習を続ける。その日は深夜まで劇場で練習した。今までわからずに込められなかった彼の思いを溢れるほどに込めながらただひたすらに没頭した。愛する人への気持ち、愛おしいと思える気持ち、全てを出し切るように…。

翌日になり、りいは彼と約束したあの場所に行く。すると遠くの方から彼が杖をつきながら向かってくるのが見えた。彼の少し後ろには付き人なのか影だけが見えた。だんだん近づく彼に嬉しさがこみ上げ、彼のもとに向かおうと一歩踏み出すと、彼の付き人らしい人が彼に寄り添っていた。りいはその時に付き人が女性であることに気づいた。時が止まったようにりいはその場で立ち尽くしていたが彼の「りいさん?」という呼び声に気付き咄嗟に笑顔を見せる。彼は「今日も会ってくれてありがとうございます。私の海外に行く際の付き人を紹介しますね。」そう言って綺麗な長い髪の女性がりいの前に出て頭を下げる。「あなたがりいさんですか?いつも彼が楽しそうに話してくれています。演劇の主人公をされている方だとか…彼の手術が成功したら見に伺いますね。」そう言った彼女に彼は治るかはわからない手術だよ…小さい声で言った。「パン!」と甲高い音がし、彼の頬が赤く染まる。なんでそんなに弱気なの…絶対成功するって…何度も何度も言ってるじゃない…彼女が泣きながら彼に体を預ける。彼は「あぁ…ごめん…いつもお前に助けられてるな。本当にごめん…」彼のその言葉を聞いてりいは涙が出た。自分の片思いは終わったのだと。初めて会った彼の演技力に惚れて一人で舞い上がっていた自分が恥ずかしくもなり、何故かその場を立ち去ってしまった。劇場についてから自分が彼に対してしてしまった行為を恥じる。せっかく彼が会いに来てくれたのに…今日しかもう会えないかもしれないのに…りいはまた彼と待ち合わせた場所に走り始める。もういないかもしれない、嫌われてしまったかもしれない、いろいろ考えながら走った。すると彼だけが近くのベンチに座っていた。りいは少し戸惑いながらも彼に近づき声をかける。「あ…あの…」彼がりいの方向を向き、「りいさん…待ってました…先程はすみません。」先に彼に謝られてしまった。りいもすぐに私の方こそごめんなさい…急にいなくなったりして…本当にごめんなさい。わざわざ来てもらったのに…会ってくれたのに…涙が流れ落ちて止まらないりいに、彼は「彼女は僕の義妹なんですよ。小さい頃に事故で親を亡くした彼女を僕の家で引き取りずっと兄妹のように接してきました。大学は海外の方に行っていたのですが、卒業後は帰国し近くに住んでいました。僕の両親も数年前になくなりもう彼女と僕しか家族がいないんですよ。だから僕が目が見えなくなってからずっと僕のお世話をしてくれてます。もともと外国に住んでいたこともあり言語など問題ないため今回の手術する病院の手配もその他もろもろ全てを頼ってます。情けない兄ですが…」りいは涙をぬぐいながら、彼に向かって言った。そんなことないですよ。あなたの演じていた演劇は私に感動を与えてくれました。それに私が今まで抱くことのなかった感情を教えてくれました。あなたに私の演劇をずっとずっとこの先も見てもらいたい…そう思っています。だから絶対に手術は成功します。そう祈っています。いつか必ず見に来てください。あなたの目が治ったら私の演劇を見てください。彼はりいに向かって頭を下げ、「約束します。必ず、必ずこの手術を成功させてあなたの演劇をあなたの演じる役を見に行きます。そしてあなたの声をあなたの容姿を必ず見ます。それまで時間がかかるかもしれませんが僕のことを待っていてくれますか?」「りいさんがまた悩んだとしてもきっとりいさんなら素晴らしい演劇をしてくれると僕は信じています。これからもずっと応援します。頑張ってください。りいさん」二人はお互いを励まし合うように言い、そして小さく笑がこぼれる。その後は昔の笑い話などをしゆったりと時間が流れた。夕暮れになり始めると彼は杖を持ち「では、僕はこれで失礼しますね。明日からは遠い異国に行きますがいつもあなたが言ってくれたことを思い出しながら頑張りたいと思います。本当にありがとう。それではまたいつか…」

「私はあなたが好きです。今も、これからも…。だから、あの劇場であなたが見に来てくれるのを待っています。」「あなたにもらった励ましを胸に抱きながら、ずっとずっとあなたを待っています。」

二人は静かに互の通ってきた道を帰っていく。お互いがお互いを応援している。その気持ちだけで十分なほど二人は幸せな気分となっていた。

彼が飛び立ってからは、きっと…きっと…彼に私の演劇を見せる…最高の演劇を…りいはそう思い練習に没頭した。

それから二ヶ月後りいが主演する演劇は大成功をおさめ、いろんな新聞や雑誌、テレビなどに取り上げられた。女性初にして男性主人公の演劇女優が最高峰たる賞を受賞し、海外にまでその名前を轟かせた。記者から「演技する中で一番大変だったところはどこですか?」という質問にりいは静かに答えた。私はこの役を任命された時に彼の、主人公の気持ちが分かりませんでした。それは私自身が異性に好意をもって付き合ったことがなかったからです。ですがあるときに私の声を劇場下の川で聞いていた方が私の演劇を真似し、子供たちに聞かせていたんです。その彼は目が見えない盲目の人でした。私の声を聞いてすごく感動し聞き惚れてしまいました。と言ってくれました。また、私は彼の演劇を見たときにすごく感情が伝わってきて、彼に一瞬で引き寄せられました。彼とはその後一度だけお会いしましたが、今は外国で目の手術を受けております。別れの際に私の演劇を楽しみにしています。いつか目が治ったら必ず見に行きますと言ってくれました。そんな彼と出会ってから私は異性に恋をした主人公の気持ちが解り始め、今回のような演劇ができました。彼の応援があったからこそ今日まで演劇を頑張ってやってこれました。以上です。

記者は更に深くその彼とのことを聞こうと質問してくるがりいは頭を下げ記者の前を後にする。そして控え室に入ると壁にもたれながら溜め息を一つはいた。ふぅー…彼は今何をしているのだろう…目の手術はどうなったのだろう…まだ海外にいるのだろうか…私の演劇の評価は彼の耳にも届いているのだろうか…彼に会いたい…声を聞きたい…

「トントン」と控え室を叩く音がする。りいさんいますか?団員の声がし扉を開けると団員がこれを渡してくださいと髪の長い女性から頼まれまして…と手紙と花束を受け取る。りいは誰だろうと思ったが、髪の長い女性と聞き彼の義妹ではないかと思い急いで手紙を開けた。

そこには一文だけ、「あの日あった場所にいます」と書かれていた。りいは急いでその場所に向かう。演劇の衣装のまま着替えることも忘れ、ただ走り始めた。記者の数人が気付き近づこうとするも団員が気をきかせ記者を行かせないようにしてくれた。りいが着くとベンチに一人の髪の長い女性が座っていた。「あの…」りいが声をかけると女性は笑顔を見せ「りいさん。お久しぶりです。演劇素晴らしかったです。見させていただきました。兄が好きになるのも納得できました。なのに兄は…」そう言って下を向く義妹の姿にりいは不安がこみ上げた。彼は、彼がどうかしたんですか?手術はどうなったのですか?義妹は「手術は成功しました。そのあとも元気に過ごしてました。ですが兄は今日の演劇を見ていません…どうしても見れなかったのです…すみません。」下を向きずっと話し続ける義妹に彼の身に何かあったと感じたりいは義妹にもっと話を聞こうと近づく。

「私は、君にとってのなんなのだ。」

「この私が君に寄せているこの思いは、いつになったら届くのだ」

「私は君が愛おしい…。」

「あの日、君に触れた時から私の心は君に奪われ続けている…」

つい数ヶ月前に聞いた彼の声が今どこからか聞こえた。りいはあたりを見渡すも誰もいない。どこにいるの?そう思うとベンチの後ろの木からタキシードを来た彼が、りいの前に現れ手には花束を持っていた。「演劇見れなくてすみません。色々と自分の目で見ていたらいつの間にか迷子になりまして、劇場についたら始まっているため入室をお断りされてしまいました。本当にすみません。演劇大成功おめでとうりいさん。」そう言って彼は花束をりいに渡す。りいは花束を受け取り泣きながらあなたに何かあったのかと思いました。約束は守ってもらえませんでしたが、もう一度会ってくれたので許します。それと…私はあなたが好きです。ずっとずっとあなたのことを思っていました。あなたが応援してくれたから、あなたと会えたから、あなたを好きになったからこの演劇は成功しました。私はあなたが好きです…りいが言うと彼はそっとりいの肩を抱き俺もいつもりいさんのことを思っていました。俺もりいさんが好きです。いきなりな形で驚くかもしれませんが、これを受け取ってください。彼はポケットから四角い箱を出し中を開いてみせた。そこには真珠とダイアモンドで飾られたリングがあった。りいさんに受け取ってもらいたい。僕とずっと一緒にいてくれませんか?

りいは「嬉しいです。こんな私でよければずっとあなたのそばに居させてください。」そう言って彼に抱きついた。

春先なのに二人を祝福するように白く儚い雪が舞い落ちてくる。

「雪…」りいは両手を広げその儚い雪を手に取り呟く…。

「いつか叶う夢ならば…今すぐ叶えて欲しいから…」

少し長くなったけど夢を叶えてもらったから雪月歌はもういらないね…今日までありがとうね…

りいの手のひらに舞い降りた雪は少しだけ温かみを帯びながら静かに静かに消えていく…



今回のヒロインは「りい」さんという方です。素敵な笑顔と優しい声をした方でした。ヒロインになってくれてありがとうございました。

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