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所有物

冬夜(とうや)、貴方まただらしない格好してるのね」


また始まったと、そう思った。朝登校するときはいつもこうだ。

鏡で何度もチェックしたし、なんなら妹の葉月(はづき)にも確認してもらったというのに、目の前の少女は毎朝俺に一言言わないとどうも気がすまないらしい。


「そんなことないと思うんだけど」


「そんなことあるのよ。貴方がシャンとしていないと、私が恥をかくじゃないの」


そう言って俺に近寄り、制服のネクタイを手に取ると位置を正そうと手をかけた。

俺の嫌そうな顔などまるで無視して、半ば強引に襟元をいじってくる。

こそばゆい感覚に思わず身動きしそうになるが、そんな自分をなんとか押さえ込んで我慢した。

強引に振り切ることもできないわけではなかったが、それをするとどうなるかは分かっていたからだ。


「本当にだらしないんだから」


一見すると俺の世話を焼いているようにも見えるその少女の目には優しさなどまるで含まれておらず、ただ不機嫌そうに釣り上がっている。

その声も呆れているというよりは、怒りを感じる冷たさが含まれていた。


目の前にいる少女は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


襟を正す手からもそうハッキリ伝わってくる、乱暴な手つきだった。


「まぁこんなところね。本当に冬夜はだらしないのだから。これでは先が思いやられるわ。貴方、ちゃんと自覚あるの?」


「……なんの自覚だよ」


分かっているが、敢えて言う。

それは俺にとって、認めたくないことであるからだ。

そんな俺に向かって、目の前の少女――鷺宮紫苑(さぎみやしおん)は大きなため息をついていた。


心の底から、俺を小馬鹿にしたような、あからさまな態度。

だけど、きっと本人はそれが許されると思っているのだろう。


実際、紫苑には許されるだけのものを持っていた。

透き通るような銀の髪。輝くような青い瞳。

女子としては高めの身長に、モデルのようなスラリと肢体を持ち、顔はまるで西洋人形のように整っている。

道を歩けば皆が振り向く完璧な美少女といっても、決して過言ではないだろう。


もっとも―――


「やっぱり貴方は頭が悪いのね。なら言ってあげる。躾は大事なことですもの」


この口の悪ささえなければ、だが。


とはいえ、こんなふうに罵声を浴びせてくるのはあくまで俺限定だ。他のやつには普段はどこぞのお嬢様のごとく物腰柔らかく対応している。そうでなければとっくに頭のおかしい女として学校でも周知され、今のカーストトップの地位はとっくに剥奪されていたことだろう。


不幸にも紫苑の幼馴染として生まれてしまったボーナス特典として、俺は彼女の毒舌を受け入れる栄誉を授かったというわけだ。

はっきり言って、まるで嬉しくもない栄誉だったが。

いくら美少女だろうが、口が悪ければ全ておじゃんだ。

生憎俺はドMでもなければ器のでかい男でもない。スルースキルを養おうにも、無視をすれば容赦なく引っぱたかれるのだ。これではどうにもならない。

ただただ疲れるばかりの毎日を、俺は送り続けていた。


それでもなんとか距離をとって一緒にいなければいいと、普通のやつならそう思うことだろう。


俺だってそう思う。だけどこの少女、鷺宮紫苑にとっては違うのだ。

こいつにとって、俺は近くにいて当たり前の存在として認識しているらしい。


なぜなら―――


「あなたは私の所有物なの。自分の身の程をわきまえなさい。私の言うことに素直に従っていればそれでいいのよ」


俺、久遠冬夜(くおんとうや)は鷺宮紫苑にとっては人ですらなく。


保有者として自分のモノであるということを、疑ってすらいないのだから

新作はクーデレ幼馴染ものです


例によって三角関係、修羅場ありです

頑張ります

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