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あなたの生きる海

作者: 木谷日向子

人物


神谷麻紀あさき(21)大学生

立川光路こうじ(21)大学生


〇海岸(夕)

   並んで立つ神谷麻紀(21)と立川光路(21)。

夕焼けの逆光を浴びながら、海を見つめる二人。

立川「綺麗な海だなぁ」

   立川の声を聴きながら、無言で潮の音を聞く麻紀。

立川「オレさ、今年までだって」

   ふいをつかれたように立川を見る麻紀。

立川「医者に言われた」

   悲し気に微笑みながら麻紀の方を見る。

立川「だからさ。今年オレが死んだら、オレの灰はお前にあげたい」

麻紀「えっ?」

立川「オレの灰は、お前が来年の今日と同じ日にこの海に投げてくれよ」

麻紀「そんな、そんなこと言わないで!」

立川「頼む!お前しか頼める人がいないんだよ」

   顔をゆがませ少し声が大きくなる。

立川「オレが一番好きな場所は、墓場なんかじゃない。この海岸から見る海なんだ。オレ

 は死んだ後はこの海と一緒に生きていきたい。お前に毎夏見守られながら生きていきた

 いんだよ」

   立川、涙ぐみながら叫ぶように語尾が大きくなる。

麻紀「光路」

   麻紀、立川を見つめながら瞳に涙をためる。

   頷く麻紀。

麻紀「わかった。あたしがあんたの灰をその海にばらまいてあげる。あんたは死ぬんじゃ

 ないわ。この海に生まれ変わるの。この海になって、あたしに見つめられ続けるのよ」

立川「麻紀……」

   声が詰まったようになり、嗚咽する立川。

立川「ありがとう……」

   じっと立川を見つめているが、堪え切れず急に大きく顔をゆがませて大粒の涙をこ

      ぼす麻紀。

      お互いに泣きないている。

      立川から手を伸ばし、麻紀を抱きしめる。

      麻紀も立川を抱きしめる。

      夕焼けの逆光を受けながら海を背景に立つ二人の影。

   

  〇海岸(朝)

      一人だけ海岸沿いに立ち、海を見つめる麻紀。

      手には黒い箱を持っている。

      黒い箱の蓋を開き、その中に入っている白い灰を思いきり良く掴むと、海に

      向けてばら撒く。

   麻紀「さよなら光路、さよなら!」

      麻紀、泣きながら海に向かって右手をぶんぶん振る。


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