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2話 再誕……?

 


「脳波、異常なし。中枢神経異常なし。α値平常、γ値平常、Ω値平常、影響なし。全チェックオールグリーン。あー、アダム君。聞こえるかい? 聞こえたらゆっくりとでいい。目を空けてくれ」


 我の頭に聞きなれた声が頭に響く。

 我は確か……、そうだ。ヒーロー達と戦っていたはずだ。

 もやがかかった意識がクリアになるにつれ、徐々に思い出していく。

 殆どの組織が壊滅し、残るは我の組織『ゲセルシャフト』のみになり、追い詰められた我らは、時空戦艦『ゲセルシャフト』で最後の決戦に挑んだ。

 持てるすべての力を使い、路頭に迷った怪人達を引き連れた激戦。多くのヒーロー達を倒す事が出来たが、それと同時に多くの怪人が犠牲になった。


 激戦の末に奴らの結束の力の前に敗れた。あれは致命傷だったはずだが、あれで生き延びたのか。我の事ながら、死に損ねたか……。華々しく散る事すら適わず、生き恥を晒してしまったか。


「あれ? アダムー。意識はあるはずだけど、起きないな……調整ミスった……?」


 彼女の困惑する声が聞こえる。起きているのに目を開けていないから心配をかけてしまったようだ。

 流石に申し訳ないので、ゆっくりと瞼を開ける。瞼一つすらこんなに重いのは初めてだな。

 そこに移るは結成から連れ添ってきた最も信頼する仲間の姿。

 タバコを加えながら、自分をまじまじと観察するように眺める金髪碧眼の白衣の女性。『ゲゼルシャフト』の医療、改造を一手に引き受けるドクター、『小早川(こばやかわ)レイ』。

 彼女は見た目小学生のような幼い体系をしているが、これでも立派な成人女性だ。

 彼女は世界最高の頭脳を持ち、人を怪人へと作り替える方法を生み出した天才科学者だ。

 人は狂気に狂った最悪の科学者とも言う。しかし、それは彼女の才能を妬んだ者達による評価だ。

 追手から逃げまわるレイを助け出した所から『ゲゼルシャフト』は始まったといっても過言ではない。

 色々と性格に難はあるが、我が最も信頼を置く一人だ。

 彼女のお蔭なら、死に損ねた、というのは失礼だな。まだ、やれるというべきだ。


「よーし。意識もはっきりだな。今、培養液を抜くから待ってるんだぞ」


 レイはそういうと、近くにある機械を操作する。

 ここは……、医務室か。……生き残ったのは我だけ、……か……ん?


 ちょっとまて。

 なんだこの手は。我の手はこんなに小さく華奢ではなかったはずだぞ……!?

 我は慌てて自分の身体を見る。培養液に漬けられていたという事もあり、布切れ一つ身に着けておらず全裸だ。

 だからこそ、自分の今の姿がよくわかった。


「ここ、これは……はぁっ!?」


 思わずらしからぬ大声を出してしまったが、驚くなというのが無理だろう!

 その間に培養液が全て抜き取られ、培養槽のゲージが開かれた。


「視覚、聴覚、感覚も問題なさそうだな。重畳(ちょうじょう)、重畳」


「良かったではない!! こ、ここここの身体は一体どういうことだ!?」

「ああ、その体か? 良い物だろう。ほら、これがアダム、君の新しい頭、じゃない身体だよ」


 レイはニヤニヤとしながら、鏡を向けるとそこには、きめ細やかな長い銀髪に、きめ細やかな柔らかい肌、すらっとした手足に胸は少女特有のわずかなふくらみを帯びている。

 顔は見目麗しく、幼さを残したアイドル顔負けの美貌。

 そう、その姿は我の姿、ゲゼルシャフト首領アダムではなく、銀髪蒼眼のまごうと無き美少女の姿だった。


「どうだい? くっくっくっく、ボクの最高傑作だよ」

「何故このような身体にしたぁぁぁ!! レイイイィィィ!!」


 本当に何故こんな体にしたのだ! もっといい身体とかスペアとかあったはずだろうううう!!!





「アダム、いい加減立ち直ってくれないかい?」

「……五月蠅いわ」



 地面に手と膝を付き、本気で落ち込んでいる我に対し、レイはため息を吐いてやれやれといった様子だ。

 大変楽しそうだな、この野郎。


「やれやれ……アダム。今、君は全裸なのだよ。まさか君にそんな趣味があったなんて」


「レイ、早く何か着るものをくれ。一刻も早く大至急に!!」


 我に露出趣味は無い。確かに男の姿だったころは風呂上りには上半身裸のまま、運動することは有ったが今の身体では非常に躊躇われる。

 とりあえず、タオルケットがあったので身体を隠そう……。自分の身体で何故恥ずかしがらねばならんのだ……!


「いいねいいね。まるで年頃の女の子みたいだ」

「誰のせいだと……!」


 レイは良い物を見たという顔をしながら備え付けのロッカーから着替えを取り出す。


「ひとまずこれでも着ると良い」

「……これをか? 別の服はないのか?」

「ないね!」

「何故このような服がロッカーに入っていた! と突っ込みたい所だが、くっ……背に腹は代えられぬ……!」


 我は渋々レイから服を受け取る。

 レイが渡したのは、白と黒を基調としたフリル付きのドレスで、いわゆるゴシックロリータと言われる服だ。しかもブラにパンツ、ガーターベルトまで用意されているという用意周到ぶり。

 どう考えてもレイがこの為だけに用意した服であることは確定的に明らかで、サイズもぴったりであった。しかし、全裸で動き回るにもいかず、半ば諦めの表情でこの服を着ることにした。


 ……これは、どうやって着たらいいのだ?

 女の服とはこんなに面倒な仕組みしてるのか……!?

 買った本人なら知ってるだろう。不本意だが、裸でいるわけにもいかない。聞くしかないか……。


「レイ、これは……どうやって着たらいいのだ?」

「おっと、失念していた。そうだね。ボクが手伝おう」

「……うむ」


 まるで着せ替え人形の様だな。我が何故こんな目にぃっ!

 レイ! そんなところ、さわっ! やめっくすぐたったい、というか、妙な感じがするっ……!

 変な声が出そうだっ―――!


「ぴゃっ!?」 

「感度も良好、うん。ボクながらいい出来だ」

「変な所を触るな! 阿呆!!」


 容赦なくレイに拳骨を落とす。流石に、胸や臀部まで触られたら殴っても仕方ないだろう。しかし、本当に我はこんな体になってしまったのだな……とほほ……。

 しかし、ここで疑問が浮かび上がる。スペアがあったはずだが、何故この体に我の意識が入っているのだ?


「レイ。何故、我の身体がこのような少女になったのだ? スペアは元の身体と同じものの筈だぞ」

「つぁぁ……。ああ、その事も含めて、アダム。君に重大な話が三つある、一つ目は君のスペアだけど……現場を見てもらった方が信じるだろう



 レイは痛む頭を押さえながら、隣室の扉を開く。

 この部屋は幹部専用の医務室で、治療の他にスペアの身体を保存しておくための施設だ。

 無数の幹部達の身体が保存されている筈だが、全ての培養槽は空となっている。

 全ての幹部達がクローン体を使い、その全員が打ち取られた。

 本当に……皆、死んだのだな……。

 我は悲しみを表に出さぬように必死に冷静に務めた。嘆くのは後で良い……。

 やがて行き止まりに着くと、懐からカードキーを取り出して、壁の接合部に空いている僅かな穴にカードキーを差し込む。

 壁だった場所はプシュウと音を立てて上にスライドする。隠し部屋だ。

 我はレイと共に部屋の中に入る。そして驚くべき物を見た。


 部屋の中には余分なものはなく、必要最低限の設備と着替えが置かれており、そこにあるべきモノだけが綺麗に無くなっていた。

 その周囲は楕円形上に床や壁ごと抉られ、切断面は鏡のように滑らかだ。

 その切れ味は空間ごと抉り取られたとしか言いようがなく、そこにあった何かを抜き取られていた。

 そこにあったものを我は知っている。


「一つ、アダム。君のスペアは何者かに盗まれた。この痕跡から見ると破壊されたのではなく、培養槽ごと盗まれている」


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