表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: 神名代洸

どこにでもある一冊の本。

でもその本は僕にとってとても大切な物。

それは黒魔術に関する本だった。

なぜ大切かというと、【呪い】をかけたい相手がいたから。

【力】も欲しかった。

誰にも何も言われないほどの絶対的な力が。


もちろん家族にも知られてはいない。

知られたら何を言われるのかと思い想像すると間違いなく信じられない事をほざくだろう。だから嫌なのだ。



本にはたくさんの呪文が書かれていた。

その一つ一つに僕はうっとりとしていた。

どれを使おうかとワクワクしていた。


呪う相手の必要なのは髪の毛一本。

だがそれがなかなか思うようにいかない。


なので試しに飼っているペットの毛を使ってみることにした。

本気じゃない分呪いの効力が弱そうだ。

それでもやるだけマシと思いたい。


ブツブツブツと魔法陣に向かい呪文を唱える。

反応は……分からない。だから直ぐにペットの元へ急いだ。

ペットは変わらずシッポをフリフリしていた。

失敗か?

やっぱり本気の相手じゃないとダメか?


その日の夜、変化が見られた。

ペットがぐったりとしていたのだ。

思わずほくそ笑んだ。

成功じゃないのか?


なら…アイツらを。




アイツらとは仲の悪い同僚だ。

入社当時から仲が悪く、影では色々と悪口を言っている。どうしようもない奴らだ。

問題はどうやって奴らの髪の毛を手に入れるかって事。

抜くことはおろか近くに行く事だってできない。

アイツらは人間のクズだ。

ただこのまま放っておいてもいいことは一つもないだろう…。

だから僕が天誅を加えることにしたんだ。

さてどうやろう…。

髪の毛がダメだった場合のことをまだ考えてなかった。

本を見直してみないと。



その日の夜、ベッドに腰掛けて僕は例の本を隅から隅まで読み直していた。何かないか?何か…、…これなんかどうだ?それは髪の毛以外のものでもよかったんだ。

そう…例えばよく使うお気に入りのものとか。とにかく肌身離さず持っているものが良いと書かれていた。

それなら簡単に手に入りそうだ。


翌朝1番に会社に向かった。

何せお目当てのものがあるかどうか分からなかったから、探さないといけないのだ。それに時間がとられるとふんでいた。

そいつらの机に向かい、誰もいないのを確認すると引き出しを開けた。

割と整頓された机の中にお目当てのものを見つけた。

そう、くしだ。

髪が一本付いていた。それをゆっくりと抜き取り、持ってきていた袋に入れる。

まずは一人だ。


次は…。

そこに1人同僚が入ってきた。でも僕がここで何をしているかなんてことは気づいてはいない。助かったぁ〜。

場所を移動しながら袋に名前を書いた。

同僚はこちらを向いていない。今ならまだチャンスがありそうだ。だからあと2人。机に向かった。

音が出ないようにそぉっと引き出しを開ける。

そこには女がよく使っていたポールペンが置かれていた。それも拝借する。

あと1人は…奴の名札だ。

くしも何もなかったから仕方がない。

それだけ掴むと引き出しを締め、自分の場所に戻った。そして手にしているカバンの1番奥に入れ、見つからないようにする。


今日はこれで終わりだ。

あとは家に帰ってから…。

僕は思わず笑ってしまっていた。


「はよーっ。何かいいことあったのか?楽しそうだなぁ〜。」

「ちょっとね〜。夜が楽しみなんだ。」

「デートか何かか?」

「そんな相手いないって。いたら教えるよ。」

「何だ…いないのか。ちょっとだけ期待したんだがな〜。いい子紹介してもらえるかもって。」

「わりい。いないわ。何とかゲットしないとな。僕も歳だし…。」

「お前なぁ〜。23はまだ歳じゃないぞ!それなら俺の方が歳だって。30になるからな。あーイヤダイヤダ。お袋からの電話攻撃がうざい。あっと、仕事のメールだ。じゃあな。」

「ああ。」

ようやく話が終わってホッとしたところにうざいやつらもやってきた。悪口言う奴らだ。仕事も大してできもしないのに悪口だけは磨きがかかっている。

ほんとイライラさせられる。


でもこいつらの顔を見るのもこれが最後かもと考えただけでニヤニヤがとれなかった。

仕事は毎日忙しい。

今日も残業になるかとため息をつきかけたが、なんとか終業時間までに終わらせることが出来、僕はサッと帰宅することにした。誰かにつかまったりなんかしたら時間がとられると思ったからだ。

幸いにも誰にも声をかけられることはないまま帰宅の途についた。


自室に戻り紙に書かれている魔法陣の前に戦利品を並べる。

いっちばんやな奴の髪の毛を魔法陣の中心に置き、呪文を唱える。

呪いがかかったかがわかるのは明日になる。

だからまずは1人とほくそ笑んでいた。



次の日、ウキウキしながら出社したが、呪ったやつも出社してきていたのでガッカリだ。

呪いは失敗したのか?

その日の夜、立て続けに2人分まとめて呪った。どうなるのか気になる。


翌朝、出社後奴等の姿を見た。特に変わったところは…ない?何で?


その日は仕事に身が入らず、ミスをしてしまって上司に怒られた。腹立つ〜!

にしてもなんで効かなかったんだ?

手順は間違ってなかったはず。






その時、カタッと部屋の隅で音がした気がした。何の音なのかまでは分からなかったのだが、背筋がゾゾっとした感じだ。不気味でさえある。

嫌な予感がした。その予感は外れることは少なく、僕は部屋を見て回ることに。


カサカサカサッと音がした。

ゴキブリでも出たのかと思った。

あまり整頓されていないため、埃が目立つ。

それでも片付けられるところはちゃんとやったはず。だから別の何かに違いない…そう思った。

壁際に本が乱雑に積まれていた。その間に手を突っ込んでみる。

特に何もないなぁ〜。

っとその時何かに触れる感触があった。

それは柔らかい何かで、虫ではなさそうな感触だった。

じゃあ、何?



さぁ?

でも虫じゃなかったのはありがたい。虫が苦手だからだ。


でもなんだ?これ…。すべすべしてる感じだ。まるで…そう、人の手のようだ。

思わずひっくり返ってしまったが、なんとか持ちこたえると再度ゆっくりと手を入れる。

そしたら何かに手を掴まれた。


「ヒーッ!?」


声が裏返ってしまったのはなんともしょうがない。

振りほどこうとするも力を強くして握られ、怖さが倍増され逃げたくなった。


そもそもなんでこんなことに?

僕はただにくったらしい奴等にちょっとした事をしようとしただけなのに…。


部屋の明かりが点滅し始めますます混乱してしまった。


「な、なんでこんな事に…。頼むからやめてくれ!」


涙目になりながら開いた本の所に這って行った。そして本を手に取り本のページをめくる。


そして本の最後の方に呪いを解く方法が書かれていたので早速やってみる事に。すると電球の明かりは点滅をやめ、部屋は静かになった。

呪いは失敗していて自分にかかっていたようだ。

怖かったぁ〜。

この手のは2度と手にしないと決めて本は処分することにした。



それ以降怖い目には会うことはなくなったが、うっとおしい奴らの姿は相変わらずだ。それでもまた怖い目に合うのだけはやだったので、極力関わらないことにすることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ