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9.ジャ○アニズム? ワタシのものはワタシのもの。すべてワタシのもの


「では、円卓会議を始める!」

 

「おー!」パチパチパチパチ。

 一体何が始まるのだろうと言う期待に目を輝かせる彼。

 

 暗がりのなか頭上からスポットライトに当てられた小さな円卓を前にする人らしき影が二つ。

 

 

 

「これってこの前きいた【ちゃぶだい】ってやつじゃないの?」

 背の低い円卓を前に正座した彼。


「そうとも言うが細かい事は気にするな。丸いテーブルであることに変わりはない」

 正面から素直な疑問を口にした彼に答える。

 

「次に奴等がやって来たタイミングで計画を実行する」

 

「おー」

 

 ご都合主義全開でどうにかしようと思ったが、立てたフラグが悉く回収される体質のようだった。

 

 どうせLUC値がアクロバティックな低空飛行なのだろうと考えたところで現れた新たな数値。

 

 ‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 REA:10

 SIG:80

 WIS:25

 CON:28

 POT:90

 CHA:2

 LUC:10

 ‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

 

 違うマークで囲まれた数値は隠しステータスなのかも知れない。目当てのパラメータが微妙過ぎて考察のしようがなかった。彼のLUCが3であることを考えてもだ。

 

 彼と全く同じ状況に置かれた俺の数値は果たして一般的に考えて高いのか低いのか。

 

 

 飛び抜けて高いスコアのSIGとPOTに頼りたいのだが、このパラメータついては意味不明。そんなパラメータ見たこと無い。知ってる奴も居るのかも知れないが。

 

 

 *

 

 

 作戦については彼に語る必要は無いのだが、口に出して自分の耳で再確認することで、更なる整理がつく。

 

 血を欲する奴等への対処、婆と男達への対処。後詰めと追跡への備え。勢い余って命を奪う事になるかも知れないが、それはそれで諦める。

 

 

「ウフフ……何をブツブツやっているのかしらねぇ」

 

 突然背後から聴こえた女の声にぎくりとする。

 

 一瞬心臓がキュウと鷲掴みされたと思うとドドドドと早鐘を打つ。

 

 集中し過ぎた為に全く気が付く事ができなかった。

 

「何かしら? 濃密な香りの中に別の香りが混じっているように感じるわ」

 

 この空間が糞尿と腐った何かの臭いに満たされているのにも関わらず、匂いに言及する女。



 あのエロ女だ。




『とりあえず何時もどおりだ』

 

『うん』

 彼は先に気付いていたようで平静を保っていた。

 

 *

 

 匂いフェチというのが居るのは知っていたが、ここまでの物なのかと驚く他無かった。

 

 ただ、この半裸に近い女は体臭にフェチズムを感じているのではなく、魔力の匂いを感じているのは分かっていた。

 

 黒い紋様に覆われた皮膚の下に流れる魔力。 

 放出出来ない筈の魔力さえも嗅ぎ分けるのは匂いフェチのなせる技なのだろうか。

 

「……あ・ぁ……やっぱり足りないわ……」

 身悶えする女が自らの胸元に右手を入れ何かを取り出す。

 

 

 危ない! と思うと同時に左手で女の手首を掴んでしまった。

 

 恍惚の表情の女の目が驚きに変わった。

 

 

 一瞬の間が永遠にも感じる。

 

 

「あらあら、いけないお手々ね……」

 

 平静を取り直したかと思うと、その表情は直ぐ様侮蔑の笑みと変わった。

 

「虫けらが触れるなんて私が許すと思うのかしら」

 

 パシンッ!

 

 女が平手を打つと、頬にじわりと直線的な痛みが走る。

 

 そして優しくなぞるように左の上腕に触れるとそこにも鋭利な痛みが走る。

 

「このゴミが!」

 

 俺の胸元をまさぐった女の手が外へと払われると、ピシャッと血飛沫が飛ぶ。

 

 女の指に填められた指環は内側に刃が仕込まれた暗器のようだった。

 

 深くは無いと言え、無数に開いた傷口から赤い筋となって流れ出る血。「アハハハ」と嗤いながら顔中に血を塗りたくり、その匂いに溺れ赤く濡れ染まった倒錯の世界を堪能している女。

 

「この魔力のは私のもの……私だけのもの」

 暗い目付きの女の為すがまま。そうする他無かった? いや、そうするのが当然だった。

 

 

 **

 

 

 常人が見れば黒一面にしか見えない天井の凹凸をぼんやりと眺めたまま、時間が過ぎる。

 

 錯乱した女によって与えられた無数の傷口の火照りが心地好い。喜色を浮かべたまま血を流し続けた。

 

「ねぇ大丈夫? いつもと感じがちがうよ」

 

 不安そうな彼の弁に我に帰るが、何時もどおりの俺だ。何が違うのというのか。

 

 

「すてーたす」そう彼が呟くと見馴れない表示がある――状態:魅了

 

 魅了ね。当然だろ。何がおかしい。

 

「ええと、どうすればいいかな……」

 

 どうするも何も、このままあの女を待つ以外の選択肢は無いだろうが。俺の魔力はあの女のものだ。

 

 魔力ゼロの俺の血。いや、女神の恩恵はあの女のものだ。

 

 

「しょうがないなぁ……えい!」


 小さな掛け声と共に俺の傷口に小石混じりの土を塗り込む彼。

 

「……クッ……ソ……痛え(いてえ)じゃねーかボケ!!」

 

 

「なんかいつもとちがう感じだよね?」

 

「ったり前だろう、何してくれるんだ! あのエロ女にやられた傷が無茶苦茶な事に成ってるだろうが! 消毒やら塞いだりするのは俺しか出来ないんだぞ!」

 

「うん。だから早くしてほしいなと思って。見たことのない字もあったよ」


 飛散し土に染み込んだ血液さえもが徐々に集まり、傷口から体内へと戻る。そして、その傷口と状態異常さえも修復する。

 

 見た目で言えばラスボスが復活するような光景かもしれないなと、魔力が大量に含まれる彼の血を使って魔法のような超常現象をイメージだけで引き起こす。


 *

 

「面倒かけてすまんな」

 つるりとした手触りの頭部を、ペタペタと叩き謝る。

 

 

 そう、隠したかったがこれ以上隠し通すのは無理そうなので明かすが、ムモウだ。

 


 下じゃない。

 

 上、頭髪だ。下もだけど。

 

 

 鎧兜で隠すしかないかなーと考えていたが、この貧弱な身体では無理そう。

 

 魔力で身体機能を補うか、魔力付与みたいな真似して鎧の重量制御……軽くて丈夫、天使の○ブランド確立かと企んだがこれまた無理そうだった。

 

 

 

 魔力操作が可能な範囲は自分の魔力が届く範囲。

 

 

 女神が言ったとおりの制限で絶対的なルールだ。

 

 

 黒い紋様で魔力放出できない為に指先で触れたとしても制御が不可能なのだ。

 

 そもそも魔力ゼロの俺が魔力を持たないのに操作は出来る。

 

 何故か。

 

 

 血。

 

 

 大量の魔力を含んだ彼の血液は俺の血液でもあったから。

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