表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/12

5.詭謀の消長。

 ムハハ。夢って素晴らしい。

 

 何か知らんけど俺の上に跨がった女が俺にクンカクンカしながらハァハァしてますよ。

 

 夢の中なら俺でも勝ち組です。

 

 昔から空飛ぶ夢やら冒険の夢やらと望む夢を見ることができた。夢の続きを別の日に見るってことさえも。

 ばるすった夜には空に浮かぶ島で大冒険。そんな少年時代も有ったような無かったような。

 


 はだけた俺の黒い胸元に鼻を擦り付けるようにして匂いを嗅ぎ、恍惚の表情を浮かべる女。

 乱れた髪が邪魔して顔の輪郭まではわからないが、切れ長の目がより際立つように引かれたアイライン。

 小ぶりだが、スッと通った鼻筋。

 血のように紅く濡れ光る唇。

 ケバケバしい成分が多目だが、かなり良い感じだ。

 

 客観的に見れば普通の域を出ない顔立ちであるのだが、何が良い感じかと表現するならエロティシズム溢れる表情。分かりやすく言えば、エロい。

 

 ドキドキ。

 

 ブラックライトを当てると整形したと判ってしまうという一昔前の噂を思い出してしまうほど、ぼんやりと鼻筋の辺りが光っているように見えたがそれも気にならない。

 

 

 それと、夢の中ではレベルも上がったのか、 

 

 DEX: 1

 MIN:19

 

 ステータス上がってますわ。

 

 現在1しかない器用さもその数字通りの雄姿を見せてくれています。

 

 「……ハァハァ……やっぱりイイ……」

 

 ブツブツと女が倒錯の表情のまま呟く。

 

 「この魔力は格別だわ……普通の子供らなんてまるでダメ……」

 

 引かれた紅が移ったのか女の頬も真っ赤に染まる。

 

 血を啜る魔性の女。エロティシズムが無ければ淫夢でなく悪夢だわ。

 

 ドキドキ。

 

 はだけた胸元の熱さに高揚したのか心臓が更に早鐘をならす。

 

 器用さだけでなく、HPまで1だわ。

 

 「ヌシは何をし()いるのじゃ(しゃ)!」

 

 渇いた恫喝が聴こえたところで邪魔が入った事に気付く。コレ夢じゃなかったらかなりヤバイよなあと考えたところで意識は黒く塗り潰された。

 


  

 ***

 

 

 

 良い夢だったと思う。

 

 いや、違う。夢だったら良いと思う。

 

 あれは現実だった。黒い細かな紋様に埋め尽くされた胸元に長く走る傷が原因と思われる熱にうなされ、途切れ途切れの意識の中で自分以外の誰かが居るのは分かった。

 

 ただ、その扱いは雑なもので、誰だかが口にした「死ななければそれで良い」と言うものでしかなかった。

 

 夢の中だからという思い込みで、あの女が短刀を手にしていたのを不思議にも思わなかったが、身を捩る度に痛む胸元が現実の出来事、その証だった。

 

 手当てらしい手当てと言えば傷口に当て布された程度でそれもそのまま放置された。

 

 凝血した傷口に貼り付いた布さえも奴等に無理やり剥がされた。

 

 その痛みで何度目かわからない昏睡から気が付くと傷を拡げられ、また意識を失うこと数度。

 

 絶望的な状況であったが、希望もあった。

 

 ††††††††††††††††††††

 HP: 2


 STR: 7

 VIT: 3

 DEF: 2

 DEX: 3

 AGI: 3

 INT: 32

 MIN: 17

 MAG: 0


 スキル: 魔力操作

 ††††††††††††††††††††

 

 精神だか意識だかが身体に同調し始めたのかステータスに増減が見られたのだ。

 

 精神的に安定していれば「馴染む、馴染むぞーー」と吠えたかもしれないが、今はここを抜け出すために虎視眈々と機会を伺っている状況だ。

 

 衰弱に近いバッドステータスもあるのだが何とか動かせる鉛のように重たく愚鈍な身体で様々な試みを行っていた。

 

 そのどれもが実を結ぶことは無かったのだが、何かしらの手立ては在るように今は思える。

 

 欺く対象が多いとなると危険は大きいが、一つの意思で動く訳ではない集団には必ず綻びが在る筈だ。

 

 あのエロ女が特に良い例なのだろう。何度か訪れては叱責と共に去る。隠れてこの場に現れているようだった。

 

 先ずはあの女に取り入るか。

 

 それとも、集団でやってくる餓鬼どもに取り入るか。集団の統率者と思われる婆が侮れないが隙は幾らでもある。奴等は此方がろくに歩けもしない芋虫か何かだと思っている節がある。

 

 見つめた先に在るのは乾ききった薄い皮膚と病的とも思える今にも折れそうな白い足。

 

 それでも全身隈無く黒い紋様に覆われた自分の身体で唯一人の肌として認識できる部位だった。

 

 力を込めるよりも、『こう動かそう』と考えるだけで操り人形のように動く足。

 

 足以外は操るような真似ができずに初めのうちはバランスを取ることが出来なかったが、今では立ち上がることさえ出来ればどうにか出来るようになった。

 

 後はどのようにして一歩を踏み出すか。その考えは未だ纏まらない。


思慮を重ねれば必ず上策が出来上がると言うわけではない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ