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2.真実は何時だって目を背けたくなるもの。自分にとって不都合であれば尚更に。


 「……ぅっ……ん・・……」

 

 腹部の痛みで気が付くと再び闇の中だった。

 

 あまりにも酷い光景のせいで俺は顔も知らぬ母のぬくもりへ戻ってしまったのだろうか。

 

 番組終了後のテレビのザーザー音とかゴオウンゴオウンと脈動する様な音だと聞いた事があったが、全くの無音、静寂そのものだ。

 

 この静けさの中にあるせいか、ジクジクと刺すような痛みが際立ってしまう。

 

 ああ、腹減った……。

 

 そう呟いたつもりだったが、殆どの音はかすれてしまい言葉らしい言葉にならなかった。

 

 腕を動かそうと試してみるが、金属で覆われたかの様に微塵も動かない。

 

 明日の国産OS(トロン)的な状態ならそれはそれで嬉しい。無敵だもんね。

 

 せめて先っちょだけでも良いからと、よく分からないお願いをしてみる……が、指先さえも動かない。

 

 これは困ったぞ。臍の緒らしきママンとの繋がりを感じないことを考えるに、臍帯切除後に戻ってしまったらしい。

 

 加えて一方通行な重力加速度を考慮に入れるならば、母体が微塵も動いていないことが気がかりだ。

 

 “チチキトク、スグカエレ”ならぬ“スグカエル、ハハキトク”なのかも知れない。

 

 自由の効かない手足は後回し。

 

 空腹による腹痛は今は忘れ、不屈の闘志で重い目蓋に力を込める。未だ見ぬママンの為に!

 

 

 

 

 たぶん目は開いていると思う。

 

 糸目野郎とか呼ばれる様な細目だったとしても。

 

 

 確信が持てないのは開けても閉じても見える景色が同じだったから。

 

 衝撃映像によって気を失ったことを考えれば、身体的な問題は無いはずだ。

 

 じっくりと目を凝らす。

 

 暗闇の先を見る。暗闇の先を見たい。暗闇の先を見なければならない。

 

 そう強く意識すると視界の色合いが徐々に変わり始める。

 

 色合いが緑になったあたりで気付く。目の前の棒切れの様なものを。

 

 赤外線カメラの映像っぽいなと思うと急速に視界がクリアになり始める。

 

 目の前には黒く細かな樹皮に覆われた枯れ枝。

 

 枯れ枝は節の先で五つに枝分かれしている。

 

 その根本は見切れてしまい、身体を動かせない自分には確認できない。


 ……いや違う、これはもっと見慣れた物、毎日嫌でも視界に入るようなものだ。

 

 ……腕。

 

 五本の枝ではなく、指。

 

 細く皺枯れた老人のような腕と指だ。

 

 見慣れない色合いの中で樹皮とも思えるような紋様に覆われたモノを人の腕だと思いたくなかったのだ。

 

 

 誰かが目と鼻の先で倒れているのならば、子を身に宿したまま行き倒れとなった不幸な女性は居なかったんだな。良かったー。

 

 良くなーい。

 

 目と鼻の先に居るのは誰だ?必死に思考を巡らせる。

 


 視界には腕だけだということを考えると、両手を投げ出す様な状態でばたりと倒れたのだろう。

 

 地面に白く縁取られた人の形。万歳状態の張縄が頭に浮かぶ。

 

 目の前に映る手指の向きからその線を辿ると……


  

 答えは単純明快、真実はいつも一つ。ただ、信じたく無かっただけ。


   

 ……ガイシャは俺だ。

 

 

 どうやら不遇スタートのようです。

 


 

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