1-16 解決
「――――終わったな」
脳みそを撒き散らしながらマンモンが倒れたのを見て、俺は静かに言った。
この場に立っている人間は、俺とルナだけだ。
「『回収』はどうする?」
「マンモンと……この大男でいいでしょう。他のは回収人に任せます」
「了解」
俺は背負っていた棺桶を地面に下ろし、大男をその中に入れる。
蓋を閉じた頃には、ルナもマンモンを棺桶の中に入れたところだった。
俺たちは武器を棺桶の中から吐き出し切ると、空になった部分にターゲットの死体を入れて帰る。
これは国の方へ殺害完了の証拠として提出するためだ。
「いつもならこのまま教会へ戻るところでしたが……まだ支部を回っている途中ですし、これも回収人に任せましょう。今日のところは近くの支部に泊まります」
「あいよ」
今回の仕事は終わった。
手についた埃を払いながら、俺たちはマンモン邸を後にする。
残った仕事は国がやってくれるさ。
◆◆◆
翌日、西地区を揺るがすほどの事件が明るみに出た。
あの巨大商会であるマンモン商会解体。
マンモン会長が裏でクスリや人身売買を行っていたことが、国の手によって明らかになった。
会長自身は罪の意識から自殺。
商品として保管されていた人間たちは、衛兵によって助けだされ、各自自分のいるべき場所へ帰っている。
クスリはすべて燃やされ、中毒者たちは教会の魔法治療を受けることになった。
――――と、表向きは公開されている。
ほとんど合っているが、肝心のところはぼかしてあるのだ。
俺たちの存在は公には出来ないしな。
マンモン本人が死んだことで、衛兵たちも自由に動けるようになり、商品になった人間たちは助けだされた。
今は全員念のため教会へ送られている。
何もなければ、数日後に戻ってくるはずだ。
「いい天気ですね」
「まったくだ」
街の雰囲気は変わっていない。
大きな商会がなくなったことで、並んでいる店の人間たちは忙しそうだ。
それでも、他の連中の日常は今まで通りに過ぎていく。
「それでいいんですよ」
ルナはそう言って笑った。
「私たちの存在なんて、知られなくていいんです。私たちがやったことなんて、知る必要なんてないんですよ。平和に、呑気に、いつも通り生きていればいいんです」
「……報われないな、お前」
「報われてますよ。街は平和になります。そして、私もストレスが発散できます。一石二鳥です」
「……はぁ」
やはり、こいつは異常だ。
マンモンなんかよりもよっぽどネジが外れている。
いつかやらかす、そんな予感がする。
「……俺が守らないとな」
「? なにか言いました?」
「いや、何も」
俺はルナを小突き、少し笑う。
護衛対象の聖女が強すぎるけど、やはり俺は必要だ。
これにて一章完結ということなのですが、都合により本編完結とさせていただきます。
いつ二章を投稿できるかわからないので、エタらせて放置するくらいなら、完結として置いてしまおうという次第です。
個人的に書いていてすごく楽しい作品でしたので、いつか唐突に再開することもあるやもしれません。
随時作品はアップしていくので、また別の作品でお会いしましょう。
それでは、どこかで。