哀しみの紅い涙
紅き龍はサウタラの血を嫌っていた。
自分達を裏切り棄てた。
サウタラの人々への恨みは紅き龍を狂わせた。
衰退の後、クーカイロンを去ったと噂された一族サウタラだったが、
クーカイロン王国南の外れの小島で息を潜めていたのだった。
サウタラの一族はあの惨劇依頼国の恥とされ、龍政院務めの者は職を失い。
龍を育てていたものも職を失った。
残された一族は生きるのに必死だった。
まず場所が必要だった。
サウタラの族長は年に1度の祭事を執り行う島へと移り住む事にした。
そこは小さな火山を中心にした小さな島だった。
火山の噴火口には、真紅の巨大な龍がいた。
何千年も前からその火山を護り、全ての紅き龍の祖先と言われる龍だった。
サウタラの祭事は、その龍にサウタラ一族の繁栄とその年の紅き龍達の誕生への感謝を示す為のものだった。
しかしながら戦争の年、祭事は執り行われなかった。
残った赤黒い龍に乗り、数百人のサウタラの一族がその島へと向かった。
全てのサウタラの一族を、引き連れ火山を登り噴火口を訪れた人々はその光景に驚いた。
真紅の巨大な龍は、その紅き眼より紅き涙を流して遠くクーカイロンの方角を見つめていた。
今までは溶岩が荒々しく飛び交っていた、その龍の周りは黒く固まっていた。
火山は死んだのだ。
程なくして真紅の巨大な龍は姿を消した。
サウタラの一族への失望からか
紅き龍の哀しみを受けてのことか
寿命を迎えたのか
はっきりしたことはわからない。
だが、サウタラの衰退と大きく関係していたのは事実だろう。
その後、サウタラの一族はその島で細々と暮らした。
少しづつ時が経つにつれ、若き者は海を渡りクーカイロンで仕事をする者も現れていった。
人々の心は時が変えてくれていたようだ、もちろんサウタラの一族であることは隠していたのだが。
しかし、紅き龍の本能は時が解決してくれるものでわなかった。
事件の引き金となった新人はこう話した。
事件後
国王並びに重臣各位とサウタラ族長とで話し合いが設けられた。
話し合いの結論は以下だ。
・クーカイロン島への立ち入りの禁止
・如何なる場合においても龍への接触の禁止
・サウタラの島は軍の監視下に置かれる
この事件を期にサウタラの一族は本当に国を追われたのだった。
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「父さんはサウタラに殺された。」
コトウはそう呟いた。
「いや、そういう訳じゃないとは思うが。」
慌ててネルサンはいう。
「もちろん、そういう考え方もできるってだけです。
サウタラの人々を、恨んだ所で何も変わりません。
父さんは戻ってきません。」
海の果てに落ちてゆく太陽を、見つめながら
コトウは父の死を改めて受け入れるのであった。
その夕陽は、真っ赤に燃えているようだった。




