事故の真実
「コトウ君」
ネルサン団長は右手に花束、左手に酒瓶といった格好だった。
「団長さん。お久しぶりです。」
ネルサン団長は時折コトウの家で花束を買う客だった。
実家に住んでいた頃よく手伝いをしていたコトウとは顔馴染みだった。
「団長さんも、父に?」
「あぁ、まぁね。」
ネルサン団長は花束を供え、懐から出した二つの杯に酒を注ぐ。
「コトウ君」
唐突に名前を呼ばれ
「はい?」と答えるコトウ。
「お父さんの事件の事、知りたい?」
そう聞かれた。
龍の暴走の理由の事だ。
「なぜ、龍が暴走したかですか?」
「そう。知りたい?
これを知ったところで、お父さんは戻らない。
その上君は怒りを抱くかもしれない。
それでも聞きたい?」
コトウは悩んだ。
龍の暴走には幾つかの理由が必ずあると言う。
主なものは天災の前触れ。
歴史の中で多く語られてきたものだ。
その他は人為的なものが多いと言われている。
つまり暴走の引き金、父の死の引き金を作り引いた人がいるかもしれないという事だ。
祖母の言葉を思い出す。
「人が怒るのは常なる事、さしてそれをその相手にぶつけるのは間違いだ、他人に与えるのは怒りではなく赦しなのじゃよ。」
コトウはこの言葉を幼い頃からよく聞かされていた。
友人のと喧嘩した時、母と喧嘩した時。
祖母はこの言葉でコトウを諭した。
父の死の原因を赦せるだろうか。
不安だった。
それでも
知りたいと思った。
「教えてください。」ネルサン団長にそう告げた。
「そうかい。いつかは話さなけらば行けない気がしていたんだ。」
ネルサン団長はコートルの事故の真実を話し始めた。
「この国には龍族と呼ばれる民が住んできたことは知ってるね?」
「はい。」
「君も俺も龍族だ。元々この地にある血を受け継いでいる。
その龍族には四つの龍育家が存在した、龍の繁殖を手伝い育てるのを手伝う一族だ。
北のコルベルト、南のサウタラ、東のウルトマ、西のケルマーン。
各一族はお互いに協力し沢山の強く美しい龍を育てたきた。
ある時、海の向こうで大きな戦争があった。
大陸各国は沢山の人、沢山の武器、沢山の動物を次々に使い殺しあった。
その頃のクーカイロンの国王、クルマルド王は外交で親友となったとある国の王の為、軍隊を送った。
送られたのは、その頃最強と謳われていた黒い龍の軍団だった。西のケルマーンが主に育てた龍達だ。
龍の軍団は空を真っ黒に染め敵国を焼き尽くした。
黒空の炎と呼ばれ今でも大陸各地から恐れられているそれは、一夜にして一つの国を滅ぼした。
戦争はその日を境に収束へと向かった。
クーカイロン王国は戦争を終わらせたんだ。
だけど事件が起こった、戦争へ行ったケルマーンの龍が次々に謎の死を遂げたんだ。
更にケルマーンの龍は繁殖をしなくなり、餌を食べることもなくなり、全滅した。
西のケルマーンの衰退の話だ。
その後の龍育家達の話が、お父さんの事件に関わっている。」
コトウは真剣に話に聞き入っていた。
酒を再び注ぎ、口に運びまた話し始める。
「ケルマーンを失った、クーカイロン王国は弱くなったと思われ無いためにも残りの三家に黒い龍を何とかして育てられないかと尋ねた。
北のコルベルトは蒼龍の家柄で最も美しくスピードのある龍が育った。
南のサウタラは紅龍の家がらで力が強く気性の荒い龍が多く育った。
東のウルトマは薄いし茶色、希に白色の龍の家柄で大きく逞しい龍が育った。」
「じゃあ今軍隊で使われている龍はコルベルトの龍で、旅客や輸送に使われているのはウルトマの龍なんですね?」
「そうだ。残るサウタラの龍だが、
希に黒い龍が産まれたんだ、漆黒とはいかないが赤黒い龍が。
体格もよく似ていた、だから軍隊の龍として主に使われるようになった。
サウタラの一族は赤黒い龍をよく育てた、真紅の龍は減って行った紅く強い龍は数を減らし住む場所を変えた、東のウルトマだ。
ウルトマの一族は紅き龍もウルトマの龍と同じように手厚く育てた。
赤黒い龍は逞しくかつてのケルマーンの龍をも凌ぐ強さを持つようになっていった。
そんなある時また戦争が起きた。先程のクルマルド王の100年ほどあとの話だ。
その時の王はサウタラの産まれで先代の近衛兵をしていたサノマリ王、「黒空の炎をもう1度」それが口癖だった。
赤黒い龍の軍団を率いてサノマリ王は戦へ向かった。
しかし、そのクーカイロン軍は戻ってくることは無かった。
銃や大砲、世界は進んでいた。
龍は健闘の後敗れ多くが戦場で灰になったという。
すると暫くあと今度はサウタラの赤黒い龍達が全滅した。
残ったコルベルトとウルトマの二家は国の重臣達との会議の結果コルベルト出身のコードマス王をたて国をまとめた。
サノマリの一族は力を求め衰退した一族として国の恥と世間で言われるようになり衰退した。
これで今のクーカイロン王国の始まりと言ってもいいだろう。」
「さて、いよいよ事件の真相なのだが。」
もう1度酒を煽り話し出す。
「事件当時の新人3人はとても優秀な成績でブルードラゴンズに配属された。
当時はまだ近衛龍団と言い、サウタラに見捨てられウルトマで育てられてきた紅い龍も使われていたからだ。
新人には蒼龍2頭、紅龍1頭が充てられた。
蒼龍の2人は無事に飛行訓練を終え地上に戻り次は紅龍の番だった。
新人が鞍にまたがり、たずなを持ったその時、紅龍は勢いよく飛び立ち咆哮し火を吹き出した。暴走したんだ。
俺達もあとから知った話だが
その紅龍を充てられた新人が
サウタラの一族だったんだ。」




