もう一回だけ
……………………ん?
あれ?私死んだんじゃ無いの?何か意識あるんだけど。でも身体の感覚は無いし……目の前も真っ暗だし……ポケットなバトルで負けた訳でも無いし……昏睡状態?って奴?
当たり前だけど車に轢かれて意識が無くなるなんて事無かったからこれが死んだのか昏睡状態なのか良く分からない。
まぁ今まで玩具会社で働いてた社畜がわかる訳無いだろって話なんだけどね。
「やぁ。どうやら意識が戻ったみたいだね。」
「ひゅわっ!?」
いきなり話しかけられて変な声が出た。いや本当に怖かったんですけど。因みに目の前は真っ暗のままで相手の姿とか見えない。……なんか嫌だなぁ。相手が見えないって。
「だ、誰ですか?」
取り敢えず対話をする事にした。黙ってても始まらないしね。
「俺?俺はね……君達で言うと神様って奴だよ。」
………え?ごめん、意味がわからない。急展開過ぎる。突然の神降臨で頭がパニックするよ。ってか神様随分フランクだな。もうちょっとかたっくるしい喋り方すると思ってた。
「まぁ信じなくても良いよ。僕が神って事は今はそこまで重要でも無いし。」
良いんだ……。神重要じゃないんだ……。
「で、僕がなんで君に話しかけて来たかって言うと……その前に君、今の自分の状態分かってる?」
「自分の状態……昏睡状態とか?」
「そうだね、それならまだ良かったね。」
「……って事は。」
「……小野寺萌奈香、22歳女性。玩具会社のに就職し普通の社会人として生きていたが先輩との約束に遅れそうになって急いでいた為横からの車に気付かず衝突。騒ぎを聞き付けた先輩がすぐに救急車を呼んだが頭の損傷が激しく病院にて死亡が確認された。なお生涯独身。」
「最後の入れる意味あった?」
「あるよ。詳しくは言わないけど。」
絶対特に理由とか無いよね。
「ってかはぁ……。本当に死んじゃったのか……。あーあ……ははっ。」
「……やっぱり悔しいものなのかい?自分の死って。嫌味に聞こえるかも知れないけど僕死んだ事無いからそうゆう気持ちが分からないんだよ。」
「……まぁそうね。悔しいかな。私の場合は他の人とは少し違うかも知れないけど。」
「どんな感じ?」
「さっき神様が私の死について言ったじゃん。玩具会社に就職したって。なんで玩具会社に就職したかってね。夢だったんだ。自分の考えたおもちゃを作るのが。リカちゃん人形みたいなのを。それで必死に勉強して、親も説得して、就職出来て、やっと夢への第一歩が踏み出せた!後は歩くだけだ!ってなってた所で死んじゃってね。なんかこう……やりきれないの。今まで頑張った事、全部無駄になったのかって。」
ああ、多分今の私、凄い悔しそうな顔してるんだろうな。多分こんな特殊な状況じゃなきゃずっと泣いてたと思う。死んだから泣けないけど。
「………成程。とても悲しいんだね。」
「まぁそうだね。正直こんな状況じゃ無かったら泣いてたかも。」
「……ねぇ萌奈香。」
「何?自称神様。」
「じ、じしょ……まぁいいや。ねぇ萌奈香。今まで生きてた世界とは違う世界でもう一度生きれるって聞いたら生きてみたいって思う?」
「いきなり凄い質問ふっかけてくるね。うーん……皆には会えないんでしょ?………うん、生きてみたい……かな?」
その曖昧な返事を聞いた瞬間自称神様はその言葉を待ってましたと言わんばかりに、
「じゃあ行こう!今すぐ行こう!別世界に!」
「え?ちょなんてわっ!?眩しっ!?………って嘘……でしょ……!?」
私の返事を待つ前に身体が無いのに引っ張られる感覚がしたかと思うと真っ暗だった世界がまるで部屋のスイッチを押したかのように明るくなり目が痛くなったが明るくなった周りを見て私は絶句した。
それは世界を上空から見渡した様な光景。しかし今まで私が見たような光景では無かった。言うなればまさにファンタジーというべき世界。空にはドラゴンが飛び、森では冒険者とゴブリン達が戦闘していて、冒険者達は剣や弓、更には魔法で応戦している。その先には大きな城壁に囲まれた国があり、国の真ん中には大きな城があった。
「………凄い。」
ついそんな言葉が出た。
「ふふ、凄いだろ?」
その私の横で褒められた子供の様に……って言うか姿が子供が居た。
だけどその声に聞き覚えのあった私は、
「……自称神様?」
「うん、自称神様っていうか本物の神様。そして……
ようこそ、僕の世界へ。」