表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

07.再会

冷たい空気が顔を撫でた。

呼ばれた気がして、メドューはふと目を覚ました。


「・・・んん?」

自分の周り、ヘビーの身体が巻き付いていた。

この光景は、メドューの生涯、何度か覚えがある。冬眠の構えだ。

つまり、意図せず冬眠してしまったのだ。


ヘビーの身体をヨイショと押しやって、違和感に気づく。

メドューは自分の手のひらをじっと見た。

「ん? あぁ、幼返りしてしまったか…」

明らかに、自分の手が幼くなっている。


人間のままであれば10歳頃の年齢のはずだが、魔物なので食べて力をつけて20代半ばぐらいの身体で過ごしている。それが、小さく巻き戻っていた。自分の身体を見やる。うーん、10代前半か?

火傷や頭髪は完全に回復していたものの、あきらかに個体として弱体化している。

どうやら損傷が酷すぎて回復に魔力が足りず、身体を小さくして余った魔力で身体を治したようだ。

それもこれも空腹のせいだ。


困ったな、とメドューは思った。

これでは人間界の片隅で暮らした方が良いレベルだ。魔界の中央は基本的に強者ばかりなので、このままだと日常の小競り合いでうっかり死ぬかもしれない。


考えながら、よいしょ、とヘビーの身体の中をよじ登るようにして、顔を出す。

「ん?」

やはり風が吹き込んでいた。

「んんん? ・・・ニィ、か?」

なぜだか目の奥が痛い。冬眠明けのせいだろうか。けれど、風の中に、ニィの匂いが混じっていた。


「・・・コハツ!!!」

扉の外に誰かいる。顔が良く見えない。大きな人影が自分たちに駆け寄ってきた。

「ニィ・・・?」

呼んでみたけれど、違和感も感じる。


「コハツ! コハツ! 俺の妹! 無事だった、無事だった!!」

メドューは、ヘビーのなかから、ひょいと抱き上げられた。

初めて見る顔だった。ニィに似ている。

「あれ? ニィか? ニィだよなぁ?」

「そうだ、コハツ、お前は何、小っこくなってるんだよ」

大男が、メドューをギュっと抱きしめて、それから顔を見つめてきた。


あれ、人間も急に大きくなったり小さくなったりするのだろうか。知らなかったが。

ニィに会えた嬉しさよりも、よく分からなさの方が先に立った。

「ニィ、ニィ。なぜそんなに成長している? ニィだよな?」

大男のニィはおいおい泣き出した。

ダメだ、話にならない。


「コハツさん…! 分かりますか、私です、リィナです」

「へ?」

すぐ傍に、人が現れた。なぜかまた、目の奥がジンジン痛んだ。

「・・・リィナ」

告げられた名前を復唱する。


「そうです、8年前、雨の日、やけどを負って、私の山小屋に来られました、コハツさん!」

「・・・8年・・・」

「お会いできてよかった! リオンがずっとあなたの事を心配してた…!」

やっと、その人が見えるようになった。

リオンって誰だっけ。あぁ、ニィの名前が確かリオンといったか。

そう思って、違和感を感じた。

なぜ、ニィを、そんな名で呼ぶのだろう。

それに…。

「・・・リィナ?」

メドューは訝しげに呼んだ。眉を潜める。

「リィナは、もっと、若かった」

「だって、8年、経ちました!」

リィナと名乗る女は、そっとメドューに手を伸ばした。


「あっつぅ!!」

ジュッと音を立てて、触られたメドューの頬が焼けた。

「リィナ! 待て、触れないでくれ」

メドューを抱えるニィが、慌ててリィナからメドューを遠ざけた。

「ご、ごめんなさい」

リィナは息を飲み、慌てて手を引っ込めた。


「大丈夫か? コハツ。あぁ…」

ニィが銀色の厚手の手袋をつけた手で、メドューの頬にそっと触れた。赤く焼けた肌を見て悲しそうに眉を下げる。その目はまだ涙で濡れている。

それから、思い出したように気が付いてメドューを抱え直した。

「すぐ薬をつけよう…倉庫は無事か?」


メドューは焼かれた頬を押さえて、茫然とした。冬眠開け直後のためか、うまく頭が働かない。

「倉庫・・・ニィ、そうだ、食べ物が欲しい、腹が減った、力が出ない」

ニィは目に涙を浮かべたまま、愛しげにメドューの頭を撫でて笑う。

「分かった。好きなものを取りに行こう」


動きに気づいたか、とぐろを巻いて冬眠中だったヘビーも起きた。

ヘビーは、見知らぬ人間に向かって、シャーっと酷く威嚇した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ